Cheese100〜離れたくない〜
初めて見る淳くんの部屋には、何本もギターが置かれていた。
東京に来た理由。
それはきっと、バンドを組んでデビューしたいという、大きな夢を叶えるためなんだと痛感した。
華「淳くんなら叶えられるよ!だって、ベースには堤之原くんがいるし!あとドラムがいればバンドが組めるよね!」
淳「ドラム候補はいるんだ。まだ一回しか会ったことないけど、そいつの音がすっげー聞きたい」
華「いつのまにドラム候補を?」
淳「出会い系サイトで知り合った男らしい」
華「え!?淳くん、出会い系サイトをやってるの!!??」
淳「俺じゃなくて、圭ね。俺はそんなのやらないし、興味ありませんから」
華「そっか…、そうだよね!よかったぁ…」
淳「もうすぐ10時だから、そろそろ帰った方がいいよ。家族が心配してるだろうし」
華「え……まだ帰りたく…」
淳「……!」
華(何を言ってるんだろう、わたし…。まだここに居たいなんて……)
淳「このままここに居たら、何もしないで帰らせる保証ない」
華「―――」
淳「好きだから…わかるよね」
華「………」
淳「俺は男だから、わかるよね?」
華「それでも一緒に居たい。」
淳「―――…」
…………ガタッ
(座っていた場所から離れ、華に近づく淳)
淳「俺も一緒に居たい」
華「………」ドキッ
…………ガバッ
(華を持ち上げる淳)
華「淳くん…?」
淳「………」
(無言で華を自分のベットに降ろす淳)
華
淳「……」
(華に頬に触れる)
華(どうしよう………やっぱりまだ……怖い……!!)
淳「泣かないで」
華「え……」
(涙を流していることに気づく華)
華「ごめんなさい…。わたし……」
淳「華ちゃんが嫌なら、俺は何もしない。約束する」
華「淳くん…」
淳「けど、今日は俺の傍に居て欲しい。このままでいいから…」
(華の手を握る淳)
華「うん。わたし、淳くんの傍にいるよ。」
淳「ありがとう」
――――――――――
そのまま記憶が途切れてしまった……。
気がつくと、窓からは太陽の光が差し込んでいた。
わたしは淳くんのベットの中で眠ってしまったようだ。
隣には淳くんもいて、すやすやと寝息を起てて眠っていた。
華(かわいいなぁ…。淳くんの寝顔…)
淳「……」すぅー
華(………ん?朝…………???)
華(――――)
(青ざめる華)
華「家に連絡するの、忘れてたぁあぁああ!!??」
淳「おはよ……」
華「おっ、おはよう!ごめんね…。起こしちゃった?」
淳「今何時…?さすがに朝帰りはまずいから、早く帰った方がいい……」
(寝起きでポケポケの淳)
華「今、朝だよーーーーっっ!!!」
淳「えぇえ!?」
………ガンッ
(天井に頭をぶつける淳)
華「だだっ大丈夫!?」
淳「大丈夫!つーか朝って…俺、完璧悪い男じゃん…」
華「どうして?」
淳「だって華ちゃんの家に連絡しなきゃいけないのに、そのまま忘れて寝るし…。本当最低だ。俺…」
華「そうだ!!なにか適当な理由を言えば……!!」
淳「理由って…?」
――――――――――
その後、直ぐさま家を出た華と淳は……
山田「……で?こんな朝っぱらから二人揃って何の用?今、準備中なんだけど」
なぜかカフェに来ていた……。
華「え〜っと…それはですねぇ…」
山田「つーか!立川さん、なんて格好してんの?浴衣っすか?」
淳「これにはいろいろと事情がありまして…」
山田「昨日、花火大会だったもんなぁ…。………まさかお前らっ!!??」
……………ポキッ
(山田の後方から拳を強く握る人影が現れる)
華「の……野高先輩…居たんですか……?」
淳「華ちゃんが足を怪我して、家に上げたらそのまま寝てしまって……とにかく!山さんが考えてるようなことは何もありませんから!!」
野高「そうだよねぇ…?もし何かあったりでもしたら俺、記憶が飛ぶぐらい暴れてたかも……」
淳「……」ぞぞぞっ
(寒気立つ淳)
山田「野高く〜ん?ここ、一応お店なんで、暴れないでね〜…?」
華「山さん…」
山田「何?」
華「お願いがあるのです」
山田「…な〜んか、嫌な予感……」
――――――――――
―――華の自宅にて。
ピンポ〜ン…
(呼び鈴を押す華)
母『はい、どちら様ですか…?』
華「お母さん、わたし…」
母『!!!』ガタゴトバタンッ
…………ガチャッ
(すぐに玄関が開き、母が出てくる)
母「あんたっ!!連絡もしないでこんな朝に帰ってきたりして!!どれだけ心配したかわかってるの!?」
梓「あの、お母さま、その説は大変申し訳ありませんでした」
母「…あなた誰?」
梓「華さんの通う学校近くにあるカフェでマスターをしている、高橋 梓といいます。昨日、華さんは家に泊まりました」
母「そうなの?華」
華「はい…。連絡をしなくてごめんなさい」
母「もう、あんたが無事なだけでいいわ…。警察に連絡しようかと思ってたのよ?」
華(嘘ついてごめんなさい…。お母さん…)
わたしは妙に胸がチクチクと痛んだ……。
〜離れたくない〜完。