【第18話-25】─ 番外編:芸能界編二期
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【Scene29:こんな形の幸せ】
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私、小泉香織は――。
目の前で執り行われている晴道と千晴さんの結婚式を、胸がいっぱいになるほどの感慨に浸りながら見守っていた。
――私と晴道は、戸籍の上で結婚することはできない。
だからこそ、私は千晴さんに晴道の未来を託したのだ。
けれど、当の二人はなかなか最後の決心を固めずにいた。
まあ、この春までは晴道もまだ大学生だったのだから、それも仕方のないことだったのかもしれないけれど。
そんな晴道の大学卒業を目前に控えたある日のこと、
あのシェアハウスのドラマを撮った監督から
『千晴、千紗、晴道の三人で、もう一度新しいドラマを撮りたい』
という打診があった。
その時、監督が想定していた簡単なプロットを聞いた瞬間、私は直感した。
(――これは、晴道と千晴さんの背中を力強く後押しする、最大のチャンスだ)と。
私はすぐさま水面下であらゆる準備を進め、監督との二度目の打ち合わせの席で、いくつか大胆な提案をこちらから持ちかけた。
一つ目は、花音さんを出演させること。
これはその直前、葉月さんの出産に伴って花音さんが大学を休職し、実家に帰ると耳にしていたので思いついた案だった。
二つ目は、実名を用いて、なるべく晴道の実際の人間関係や現実の要素をドラマ内にそのまま取り込むこと。
そして三つ目は、本物の結婚式を、そのままドラマの最終回の撮影として提供するという案だった。
監督はあまりのスケールの大きさに目を見開いて驚いていたけれど、私がすでに「小泉・高橋の両家の賛同」を取り付けていることを告げると、最後は笑いながら快く了承してくれた。
ただしその際、監督は『現場の熱量や役者たちの動きによっては、ドラマ上の晴道が結婚する相手が、千晴さん以外に変わる可能性も十分にあります』と釘を刺すことも忘れなかった。
もちろん、それはそれで構わなかった。
そうしてドラマの撮影がクランクインし、かなり早い段階で、千紗・千秋・千鶴の三人との結婚式シーンの撮影が行われた。
先行して写真集の告知画像に使われていた三人の美しいウェディングドレス姿は、実はその撮影のために準備したものを先出しした形だったのだ。
そんな中、撮影が進むにつれて監督から『花音が予想以上に魅力的すぎる。このままだと、晴道が花音と結婚するルートに変わるかもしれない』と告げられた。
なによそれ、プロットもへったくれもあったものじゃないじゃない。
けれど、私はその可能性すら笑顔で了承した。
千紗・千秋・千鶴の三人には、監督の当初のプロット――すなわち、最終的に晴道と千晴さんが結婚するという結末は一切伝えていない。
そこへさらに花音も本気で参戦し、四人が晴道を巡って剥き出しの恋の火花を散らし続ければ、このドラマは間違いなく大成功を収める、と確信していたからだ。
そうして、のちに花音との結婚式シーンも無事に撮影され、彼女のソロ写真集の発売も追加で決定した。
ちなみに、千晴さん以外の四人との結婚式は、ストーリーの構成上「駆け落ち同然」という扱いにされ、すべて二人きりでの挙式という体裁で撮影された。
これらの美しいカットも発売される写真集に収録されるため、現物が世に出た時には、購入したファンたちの度肝を抜くことになるだろう。
けれど、監督は最終的に、最初のプロット通り晴道の結婚相手として千晴さんを選んでくれた。
こうして、ドラマの枠を飛び越え、現実世界において晴道と千晴さんは本物の夫婦になった。
入籍を機に、流石に二人はあのシェアハウスを後にすることになった。
すると、「み組」の南ちゃんが『結婚したんだから、二人のための広い社宅が必要でしょ』と言って、新築の立派な一軒家を準備してくれたのだ。
もっとも、社宅とは名ばかりで、家賃は税制上の下限ギリギリの金額しか徴収せず、入居期限も定められていない。
実質的には、「み組」から二人への、特大の新婚祝いのプレゼント同然だった。
しかし――だからといって、シェアハウスでの「週替わりの夜の当番」が解除されたわけではなかった。
もちろん、千晴さんの帰りが遅い時や留守の時、あるいは月の物で彼女が晴道の相手をできない時に限る、という最低限の遠慮や配慮は挟むようになったけれど。
結局のところ、晴道は今でも結構な頻度でシェアハウスへとやってくる。
(そして当然、私も変わらず彼にたっぷりと愛してもらっている。)
それどころか、千晴さんも一緒になって、二人でシェアハウスへくることすらあるくらいだ。
(当然その時は千晴さんも同時に晴道に愛される)
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もしも、私たちのこの歪で特別な関係性が世間に知れてしまったら、凄まじい批判が集中するかもしれない。
そうならないための予防線や防衛線は幾重にも張り巡らせてあるけれど、これが世間一般には決して認められない関係であることは、紛れもない事実だろう。
けれど――。
実際に、私たちは今、こういう形で最高に幸せに存在している。
それなら、もう仕方ががないじゃない。
これからも私たちは、晴道にありったけの愛を捧げて、晴道からの惜しみない愛を、全力で受け取る。
そこに、誰が最初だとか、誰が一番だとかいう順番なんて必要ない。
競い合う理由も、誰か一人を選び合う必要だって、どこにもないのだ。
ただ、そこに、私たちの純粋な愛があるだけ。
ずっと――。
この先も、永遠に。
あとがき
本作『番外編:芸能界編二期』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
これにて、晴道と千晴、そして彼らを取り巻く大切な人たちの物語は、すべてここに完結となります。
これまで紡いできた彼らの選択、そして彼らならではの「幸せの形」を、読者の皆様に最後まで温かく見守っていただけたこと、作者としてこれ以上の喜びはありません。
虚構と現実が溶け合うような激動のドラマを経て、ようやくたどり着いた一つの終着点。
彼らの歩む未来が、これからも愛と祝福に満ちたものでありますように。
これまでの長きにわたるご愛読と、たくさんの応援に、心からの感謝を込めて。
――完――




