46話 被爆地、再び
今日は45、46話の2話を公開しています!
今日17時ごろに45話を公開しました。このストーリー(46話)は45話のネタバレとなっていますので、先に45話を読むことをお勧めします!
「キュラゴクス……!」
聞き慣れたその声に、俺は安堵する。完全にヒーローの登場の仕方だ。実際、ヒーローだ。
「バーザール、代われ。ここは俺に任せて、お前は後ろで見ていろ」
キュラゴクスは俺に視線を向けながらも、その剣先は寸分狂いなく悪魔を捉えていた。同時に、戦場に二つの風が吹き荒れる。
「遅れてすみません、バーザール様。こちらは、私たちが引き受けます」
笑みを浮かべながら鎌を構えるラナリリスと、無言で弓を引き絞る巡雩が、もう一方の悪魔へと向かっていく。
「ラナリリス、巡雩! 助かる!」
「うん。礼は後だ。まずはこのゴミを片付けるぞ」
キュラゴクスの合図とともに、戦いは二つの局面に分かれた。俺とキュラゴクスは、地上で剣を構える悪魔と対峙する。
キュラゴクスの剣技は、俺のそれとは次元が違った。悪魔が放つ超高速の斬りを軽々と受け流し、即座に重い一撃を叩き込む。俺はその隙を縫うように火弾を放ち、徐々に悪魔を追い詰める。
「……チッ、これほどまでの練度とはな」
無機質だった悪魔の顔に、初めて焦りの色が浮かぶ。キュラゴクスの技術は圧倒的だった。次にどこにくるかを知っているように、剣が振られる。その波状攻撃の前に、Elf Schreckenがじりじりと後退を始めていく。
「これで……おしまいだ!」
俺たちで同時に、トドメの一撃を放とうとしたその瞬間。
「……計算外だ。全員まとめて、地獄へ連れて行く」
悪魔が地面に剣を突き立てた。不快な空間の歪みが急速に膨れ上がる。
「しまっ………」
俺たちの視界は真っ白な閃光に飲み込まれた。大規模な転移魔法。次に目を開けたとき、視界に入ってきたのは4日前のあの街の光景だった。
そこは全てが燃えた地。核投下地点、アルトリア。
「カハッ……なんだ、これは…………」
キュラゴクスが膝をつき、肺を押さえて苦しみ始める。巡雩とラナリリスも、目に見えない放射線に侵され、肌が赤く変色し始めていた。
「勝てない…?この俺が?そんなわけがないだろう!さあ、2ラウンド目だ!かかってこい!存分に切り刻んでやる!!」
核汚染があるところで戦闘だと?こちら側が不利にも程がある。これでは勝てない………そう、今までは。
だが、今は違った。核は、熱さえなければなんとかなる!あとは、これを使えば…!
「全知王、聖なる領域を発動しろ!そして、解析した魔気エネルギーへの変換も全展開!」
〈了解しました。核エネルギーの魔気変換を開始。広域再生結界「アルカディア」を展開します〉
たちまち周囲に眩いばかりの緑色の光が溢れ出す。大気中に充満する放射線が、俺の身体を通じて純粋な魔気へと変換され、使用していく魔気の代わりに体を満たしていく。
その膨大なエネルギーを源泉として、俺は結界内の仲間を強制的に再生させていく。俺の、不眠不休という傷もたちまち癒えていった。
「……傷が、消えていく……?」
驚愕するキュラゴクスたちの前で、俺はドラゴンの翼を広げ、天を仰いだ。絶望の象徴であった核エネルギーが、今や俺の最強の燃料となっていた。
「これで、最後だ!」
魔気変換によって極限まで増幅された槍を、俺は悪魔の核めがけて投げつけた。空間を切り裂いて届く一撃。超広範囲の攻撃だ。
直撃した!
しかし、着弾の寸前。
「……っ!?」
悪魔は自らの左半身を強制的に爆破し、その衝撃で軌道を僅かに逸らした。槍は核の数ミリ横を貫き、背後の廃墟を跡形もなく消し去る。
「……この借りは、必ず返す……」
ボロボロになったその悪魔は、再び空間の歪みの中へと消えていった。キュラゴクスが剣を投げつけるが、それも間に合わずに悪魔は消えてゆく。
「クソッ!あと少しで……!」
後ろを見ると、ラナリリスたちの方の悪魔も消えていった。どうやら、逃げられたみたいだ…
〈転移魔法初級を入手完了しました。〉
目の前で使っているのを見たからか。結局あいつら、何がしたかったんだ…?
〈バーザール様が手に入れた核関連のデータが漏れないように、抹殺しにきたものと思われます。〉
そうか…キュラゴクスたちが来なかったら、まずかった。遅れてでも来てくれたのは、不幸中の幸いか。
「ところで、バーザール。その姿は…」
あ…。そうだ。今の俺は、ドラゴンの羽を生やしている。慌ててしまうが、見られたことには変わり無いみたいだ。
「そうだ!そんなことよりみんな、すぐ帰るぞ!スフィウスがまずいんだ!」
キュラゴクスたちは、ここがどんなところか、スフィウスがどうなってしまったかを知らない。俺たちは急いで手に入れた転移魔法を使って、街へ戻っていった。




