表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/58

19話 新生活後編

 俺はガルヴァの元へ行くと、ことの経緯を説明した。


「人間を信用できないのもわかる…俺だってまだそうだ。だが、これからはその四人と会っても敵対しないでくれ」


「その程度のこと、わざわざ言わなくても大丈夫です!誓って手を出したりしません」


「まあ、一応だ。会っておきたかったしな。それじゃ、俺は言ってくるぞ」


 そう言い、振り返ると建物の影から4つの頭がのぞいているのが見えた。やばい、今の聞かれていたか?


「バーザール、ずるいぞ!こんな貴重な経験を、独り占めしているとは!」


「そうだそうだ!」


「あら、意外と可愛らしいのですね」


「……本当に」


 聞いていないようでよかった。そう思い振り返ると、ガルヴァはドヤ顔になっていた。褒められ、ご満悦の様子だ。


「いや、別にそう言うことでは…4人のことを勘違いしないように言いにきただけで、…」


「それなら触っていいか?触るぞ!」


「わたしも!」


「私も…」


「私も触るわね」


 ガルヴァは少しかがみ、顔を下げる。あれ、俺の時よりも嬉しそうだ。なんだか対抗心が湧き立つ。


(ガルヴァ、嬉しそうだな…)


(いえ!そう言うわけでは…)


(いやいいんだ。ただ、傷つけはしないでくれってだけで警戒はしておいてくれよ?何かあったら笑い事じゃ済まない)


(それは…心に決めておきます)


「どうしたんだ?二人とも同時にとまって…もしかして、念力で会話でもしてるのか?」


「そのようなわけがないでしょう。」


 ラナリリスが、ガルヴァに顔を埋めながら言った。無口そうな雰囲気を醸し出しているのに、意外とガルヴァのことは好きなんだな。ギャップがすごい。


「これは…珍しいですね。この毛並み…普通の魔狼ではないです。この子、恩恵個体ですか?」


「え、恩恵ってなに?」


「なんだか聞いたことがあるぞ。幼い頃に学んだ気がするが…?」


「魔族の全てが出来ることですよ。簡単に言うと、名前をつけてもらうと強くなれる、ということじゃなかったかしら」


「そのとおりです。この子は、普通の魔狼とは首元の毛並みが違うので…もしかしたら、と」


 恩恵。あの、森での惨状が瞬時に脳裏に蘇った。途端に俺は膝をつき、倒れ込む。


「大丈夫かバーザール?!」


「大丈夫ですか?!」


(バーザール様!)


 頭が痛い。


「大丈夫…だ。少し休めば、治る」


 そう言い、立ち上がる。が、次の瞬間、地面に倒れた。







 目が覚めると、ベッドで寝ていた。上半身だけ起き上がり、周りを見わたしてみる。窓辺に、ラナリリスがいた。こちらに気がつき、声をかけてくれる。


「お体、大丈夫ですか?倒れたのは、多分私のせいですよね。すみません…」


「いや、君のせいじゃないよ。ありがとう、ずっとここに居ていてくれたのか」


「……はい」


 少し気まずい雰囲気になり、俺は目をそらした。横の机には、飲み物が置いてある。

 外を見ると、日が上りそうだった。建物の隙間から、空が明るくなり始めているのが見える。


 静けさが俺たちを襲った。




 俺はベッドから立ち上がり、窓のラナリリスが座っている椅子の向かいに座る。心地よい風が、目の前を通り過ぎていった。



「僕はね」


 気がつくと、喋りはじめていた。


「昔、ある森に住んでいたんだ。そこでは、楽しい出会いと、いい仲間に恵まれた。今までに経験したことがないほどに楽しかった」


「そこに、悪者が来た。初めは少しだけ。無事追い払えたからか、俺は強いと思ってしまった。それで、そのみんなと約束をした」


 声が、聞こえてきた。



『…… 俺に仕えてくれているんだから、守ってやるのは当然のことだ!今後も安心してくれていいよ!……』



「俺が気を緩めたから…そのすぐ後に、みんな…一瞬で、…」


 視界が歪む。頬を、水が流れ落ちた。


「そう、ですか…」


 久しぶりに泣いた。数年ぶりに。


彼女は何かを察したようなそぶりを見せ、俺についてそれ以上何も触れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ