第38話:治療の目途
「見知らぬ天井だ……」
目が覚めると見た事のない部屋の天井が目に飛び込んでくる。
「ぐっ!! がぁぁぁぁ!?」
起き上がろうとすると全身に痛みが走る。まるで全身が筋肉痛のように痛い。
(この感覚、師匠に鍛えてもらった最初期と全く同じだ)
「それよりも……皆は……」
ベッドからずり落ちて芋虫のようにずりずりと移動する、立ち上がろうとするも膝が笑ってしまい全く動かない……。
「全く、起きて早々に私のスカートの中を覗きたいとか、寝ていても性欲は余りあるようですね」
ルルカ声がした方に視線を移すと薄紫色のレースがそこにあった。慌てて顔を逸らせると反対側に回り込んで来る。
「駄目じゃないですか、しっかり見てもらわないと……」
「ルルカさん、今はそんな事してる場合じゃ……ぎゅふっ!?」
顔の上に乗られる、さらさらとした肌触りが鼻をに当たる。
「!? もごもが!!」
「暴れないで下さい、5日も眠ってたんですし今は体内の魔力が乱れて……んんっ!」
艶めかしい声を上げたので、身体が固まる。
「何してるんですか、ルルカ」
「んっ、ルルネ……お客様が……」
「とりあえずどきなさい、お客様なんだしそう言う事はベッドでしなさい」
「いきなり蹴らないで下さい」
視界が開けると体が起こされる、ルルカによく似た顔の少女が俺をベットに運ぶ。
「はじめまして、私はルルネです。医療術師をやらせてもらってます、発情魔の姉たちとは違い私は性欲が薄いので相手はしませんよ」
しれっと言うルルネさん、医療術師って聞いた事無いけど……とりあえず助かった。
「ありがとうございます、ルルネさん。それで、聞きたい事があるんですが……」
「何ですか? 生理周期は教えませんよ?」
「知りたくないです! いててっ……」
痛みに耐えながら言うと、信じられないといった顔をするルルネさん。
「先程まで、発情した姉と同様に盛っていたのに?」
「俺は盛って無いです! うぁいたぁ!?」
一番の鈍痛が走る、悶絶していると回復魔法がかけられる。
「少しは楽になるはずです、フィディス様程ではありませんが回復魔法は得意ですので」
発せられる魔力の光に体の痛みが薄れていく。
「とりあえず、大丈夫ですね。魔力神経がずたずたになってましたので当分は痛いと思いますが」
「うぐぅ……」
「それで、私の排卵日を知りたいわけじゃ無いのでしたら何を知りたいのですか?」
「俺達の仲間……奏と恵、それとエルスリリアについてなんだけど……」
「それでしたら私が説明いたしましょう」
にゅっとベッド脇から生えて来たルルカに一瞬びっくりする。
「ホウショウ様とネモフィラ様、ミモザ様、エルスリリア様は、ホウショウ様とエルスリリア様のご師匠とそのお仲間が運ばれてきました、そしてホウショウ様は数日間昏睡状態になる事も伝えられてます。今皆様は『オルドリリウム』の調薬をしております」
「あ、そうなのか……って『オルドリリウム』が手に入ったの!?」
「はい、ホウショウ様がお戻りになられて三日後、咲いた状態の『オルドリリウム』の群生地が見つかりまして……」
「そっかぁ……」
皆も無事だったように気が抜けてしまう。じゃあ、あの光景は何だったんだろう……。
「それと、こちらのお手紙をお師匠様より預かっております」
そう言ってルルカさんが胸元から手紙を出す。渡された手紙は、ほんのり暖かく湿っているが無視して開封する、すると癖のある字で今回の件についての仔細が書かれていた。
『今、これを読んでいるという事は目が覚めたらしいな。俺が言ったように今のお前は騙されやすく甘い。お前が目指している事を果たすには力も、知識も、仲間も足りない。時には冷酷になる必要もある、だがそれをお前が決めたのならば……信じると決めたのならば意地でも藻掻け、足搔け、苦しくても、辛くても、悲しくても折れるな、前に進め。俺は警告をした、今後お前がどうするかはお前次第だ』
(何言ってるんだろうあの人は……散々痛めつけて、あんなものを見せて……それでいてこんな応援する様な事を言って……)
「わかんない人だ……。いや、わからない人なのは俺もそうか……」
手の中にある手紙を見つめ溜め息を吐いた。
◇◆◇◆
それから一時間程すると奏と恵がやって来てくれた、のは良いのだが二人を見て涙が止まらくなってしまったのだった。
「旦那様、お体は大丈夫ですか?」
「流石に心配したよ……5日も寝てるなんて初めてだし……」
「ふたりとも……ごめん、俺が弱かったばっかりに……」
「大丈夫、私達も何も出来ずだったし」
「そうですわ、旦那様が気に病む必要はありませんわ」
二人曰く、部屋に誰かが入って来たと思い武器を取った瞬間眠りに落ちて起きたら街に戻って来たそうだ、身体の方も特に異常が無いどころか、むしろ調子がいいそうだ。
「それでですね旦那様、ここに来たのはお顔を見に来たのもあるのですが、ティティアちゃんの治療に目途が立ちそうなのでお伝えしに参りました」
「じゃあ治療薬が出来たの?」
「はい、ですが治療自体は少し特殊で3日程かかるそうなのです」
「それで、その間にカトレアさんの治療先に旦那様も一緒に行くことになったんだ」
「治療先? そういえばカトレアはちょこちょこ治療院に行ってたよな?」
「えぇ、そちらで星辰宮と呼ばれる場所で、魔法による治療を受けておりますわ」
奏の話によると、星辰宮は勇者一行が建てた場所で、そこでオドの樹とマナの泉にと呼ばれる魔道具よって疑似的にフィディスの力と同じ治療が行えるそうだ。身体的欠損だとかなり時間がかかるとの事だったけど俺達がダンジョン攻略に行っている間、毎日通っていたのでだいぶ治療が進んだらしい。
「それは良かった、奏の方も何か参考になったりした?」
「そうですね、私の魔法に通じる所はありましたので参考にはさせていただきました、ですが正直あまり微妙でして……」
どうやら魔道具を使っている関係で魔法の強さはそうでもないらしい、この間読んでいた本の方が参考になるとの事。
「ただ、魔道具として発動のしやすい形に落とし込んでる部分は素晴らしいと思いましたわ。普通では魔力の消費が少ないと中途半端にしか回復しないのですが。魔力消費の少ない魔法として構築し直して、そこに人の自己回復を絡めておりますので時間はかかりますが再生治療等も出来るのに納得いたしましたわ」
「へぇ……だいぶ詳しくなったね……」
「そうですわね、フィディスさんの本が中々に面白いものでしたので」
なんだかうれしそうな奏、前より魔法に興味が出て来たみたいだし学術都市も楽しんでくれそうだ。
「んで、話を戻すと。その治療場まで旦那様を運ぶ役目が私になったよ」
「えっ? 馬車で行けないの?」
「うん」「えぇ」
平然と頷く二人、どうやらその場所は森の奥まったとこにあるらしく足の怪我とかだと神輿かおんぶで行くそうだ。
「マジかぁ……足治ってからからじゃ……駄目ですよね?」
「うん、貸出期間も決まってるらしいし、出来ればね」
「それとも、旦那様はあのメイドさん達の方がよろしいのでしょうか?」
「い、いや! そんな事無いよ!? 運んでもらうなら男の方が良いと思ったんだ!」
「あーそれは駄目かなぁ……」
「駄目って……男性禁止とかじゃないでしょ? 俺が使える訳だし……」
「えっと……男性禁止といいますか、旦那様以外禁止といいますか……」
「へっ?」
「裸になって浸かるからね~」
「えっ……」
「泉に入るんですよ? それなのに服着て入れませんわ」
「確かに、そりゃそうだ……」
「早く治さないと、ティティアちゃんと一緒に浸からされるよ?」
その言葉に、一瞬クラっとする。流石に幼女と一緒のお風呂はアウトである。
「わ、わかった……恵たのんだ……」
「了解、任せてね」
そうして、俺は早急な治療の為に星辰宮に連れて行かれる事になった。
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