第37話:師匠②
「グオァァァァ!?」
目の前でハウリングベアの巨体が崩れ落ちる、ダンジョンに潜って早五日、今は30階層の階層主を倒したところだ。
「お疲れ様、特に問題無く動けてたね」
脇で見ていた俺が3人に声を掛ける、3人で挑戦したいとの事だったので俺は見学だ。
「そうだな、私が囮役を引き受けたがスムーズに倒せたのは幸いだな」
「ありがとうございますエルスリリアさん、助かりました」
「そうだね~連携が上手くハマった感じだったね」
「「「いえーい」」」
三人が楽しそうにハイタッチをする、俺抜きでここまで出来ればもう上出来だ。
「しかし、この目で魔力探知をするというのは凄いな、敵を認知できるのもだが魔法を使う相手の魔力の発動までわかってしまうぞ」
「そうですわね、私の場合は魔力の流れがわかりますので身体強化をしている相手の筋肉の動きまでわかるのが助かりますわ」
「二人共凄いなぁ……。私はそこまで精細にわからないよ」
「いや、三人共凄いんだけどさ……俺なんてどこにいるかくらいしかわからないよ?」
セーフエリアに侵入するとそこには村と見間違うほどの大規模な野営の跡が残っていた。
「凄いな、セーフエリアにこれだけの拠点を作ってるのか……」
「あぁ、ここに来るのには相当な人数が必要だからな。自ずと大規模な人数で泊まる施設が出来上がってるんだ」
近くの家の扉を開く、家の内部には埃が積もっているが掃除すれば大丈夫だろう。
「この感じなら見張りは大丈夫そうだし。今日はゆっくり寝れるな……」
色々な意味でよく眠れなかったし今日はゆっくりできそうだ。
◇◆◇◆
明日は踏破を目的としていたので早々に食事を終えた後、早々に眠ったからかふと目が覚めて外に出る、周囲を見回すと微かに違和感がする。
(敵は出ない筈……『??魔力探知』)
大きな反応がしてそちらの方向を向くと違和感の正体がそこに居た
「師匠?」
記憶の中にいる師匠と全く同じ姿の師匠がそこに居た。
「よお、久しぶりだな。元気だったか?」
ニコニコと笑顔を見せる師匠、その後ろにはフードを深くかぶった人が複数控えている。
「どうして、ここに?」
「今日はお前さんへの忠告に来た」
「忠告? このダンジョンに何かあったのか?」
「いいや違う。前のとこに、第三王子居るだろ?」
「居るけど……それが?」
「いや、釘を刺しておこうと思ってな。アイツは王国側の人間だから信用するんじゃないと……、あの国の貴族と王族がどれだけ下卑た相手なのかわかってるのか?」
まるで、親の仇でもと言い出しそうな唾棄すべき相手を見る表情をする。
「いやでも……第一王子様とかイブキ公爵とかは信用できるし……」
「そいつらだって、腹の中じゃ何考えてるかわからんだろ? ゴミなんだし」
師匠の発言に神経が逆撫でされる……。怒りが沸き上がり腸が煮えくり上がる。
「なんでそんなことを! アラテシアはあの国じゃまともだぞ! 確かに師匠は王族や貴族が嫌いかもしれないけど! あの子はそんな奴じゃない!!」
アラテシアの事を知らない師匠に、王族と一括りにされて否定される筋合いはない。
「はぁ……すっかり絆されやがって、そんなんだからお前は大事な物を簡単に失うんだよ、あの時みたいにな……」
家の方から破壊音がして影が飛び出してくる、そこには先程まで師匠の背後に控えていた仲間が奏の首を持って引きずって来る。
「奏!!」
「おい、今は俺がお前と話してるんだ……」
「っつ!?」
脳が揺れる、振り抜いた足が見えたという事は蹴られた?
「剣を構えろ、お前の甘さを修正してやる。おい!」
師匠の配下が俺の治療をする、視界の揺れが収まり吐き気が落ち着いて来る。
「やってやるよ……」
空間収納から剣を取り出し構える、最初から全力だ。
(まずは、奏の救出だ!)
限界超越で配下に肉薄する……事は出来なかった。
「がふっ!?」
「甘いんだよ……一番強い奴からは目を離すんじゃねーよ!」
地面を転がる、受け身を取りながら再度、限界超越師匠へ肉薄する。
「いい攻撃だ、だがお前……そんなに魔力を使って大丈夫か?」
師匠の身体がブレる、振り抜かれた拳を見えた瞬間視界が暗転する。
「何寝てるんだ?」
「……!!」
腹部を蹴り上げられる、昔のように相変わらず足癖が悪い。
「おい、回復してやれ」
「はい」
再度身体が回復させられる、意地でも気を失わせないようにするらしい。
「ほら、早くしないとお前の大事な物が零れ落ちるぞ?」
「あぁぁ!! あぁぁぁぁぁぁ!?」
締め上げられた奏が悲鳴を上げる。
「ふざけるなぁ!!」
限界を超えた限界超越を発動する、脳の血管が破れ視界が赤く染まる。
「だから、それをポンポンつかんじゃねーよ!」
拳が見えた瞬間、地面に突き刺さっていた……早すぎて見えない……。
「お前な、そんなものに頼らずに己の技を磨けと言ったな。最後の切り札を何故多用する」
「そ、それは……」
「格上の狩り方を忘れたか? 俺はこんな安直に使えと教えたか?」
「……っつ!!」
地面にたたき伏せられ、髪を掴まれる。
「初手で使うのは悪くない、だが初撃が通じない相手……騎士団長に通じなかったよな? あの戦いも多用しなければ最後まで立ってられた筈だ」
師匠の言うとおりである、発動は初手だけで済ませればもっと落ち着いて闘えた筈だ。固執して使い大技で早々に蹴りをつけようとしたのだ。
「今だってそうだ、馬鹿みたいに使って、制限をかけてた自分の脳を壊してまで捨て身の技を使ったな。その結果がこれだ、もう立てないだろ?」
ギリギリと地面に押し付けられる、赤く染まった視界と動かない頭がズキズキと痛み始める。
「おい、連れてこい」
両手足が折られたのか、抵抗する素振りの無い奏と恵が連れて来られる。
「ほら、立ち上がってみせろよ」
「ぐぅぅぅぅ……」
立ち上がれない……まるで両手足が拘束されたように動かない……。
「はぁ……やれ……」
師匠の冷たい声に背筋がぞわりとする。必死に声を上げるが、師匠は視線を外さない。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
「やめろ、やめろやめろやめろぉ!」
奏の首から骨の砕ける音と筋肉のが響き、捩じ切られ首が投げ飛ばされる。絶命時の苦悶の表情が俺を見る。
「次はこっちだな……やれ……」
「止めでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」
恵の頭が潰され中身が飛び散る、目の前に打ち捨てられた姿に胃の中身が吐き出される。
「げほっ……どうじで……どうじで!!」
「お前が甘いからだ、敵を舐めてるからだ。あの国の奴は敵だ、敵は容赦なく殺せ。そうしないとお前の本当に大事なものを失う事になるぞ」
「な、何を……がふっ!?」
最後に見えたのは悲しそうな師匠の顔だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇翔鶴(師匠)side◇
「ふぅ……ありがとう もう魔法を解除して良いよ」
「わかったわ、それにしても酷い事するわねぇ……」
「まぁ、まだこの時のコイツは割り切れて無いからな……」
「そうなんだ……まぁ旦那様が言うのなら本当なんだろうけど……」
「ご主人様、本当に大丈夫なの? その心とか……」
気まずそうな顔をして、 が顔を覗き込んでくる。
「大丈夫大丈夫、こうでもしないと全部救おうとして失敗する馬鹿野郎だからな。悪いが皆、入り口まで運ぶから手分けして手伝ってくれ」
「「「「「はーい」」」」」
「ったく、バカ弟子が……ちゃんと向き合えよ……」
しょうもない顔をした弟子を担ぎ上げ、他の子達が眠らされている事を確認してから〝魔眼〟を使い転移をするのだった。
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