第36話:試練の大樹③
翌日、俺だけ少し寝不足だがダンジョン進行には問題ないので進んで行く。
「さて、今日の前半は〝食料〟確保の練習をしながら進んで行こうか」
「食料の確保といいますと、野草採りとか狩猟でしょうか? 昨晩旦那様がお持ちになったような」
「そうそう、基本的には狩猟かな。木の実や野草は食あたりがあるからね」
肉はともかく焼けば良いし。野草と違って可食の魔物は少ないからね。
「でも、私達狩りなんてした事ないよ?」
「私もです、それに弓はそこまで得意ではありませんので……」
まぁ、奏は胸が大……当たるからな。
「じーっ……」
恵さん、睨まないで……。
「だ、大丈夫……奏は小動物ならレイピアでの一突きで良いし。恵はこれを使ってよ」
「お、おもぃ……」
苦無を取り出して手渡す、この苦無は見た目よりも非常に重く、芯に白金を使っていて周囲を鉄で作っている。芯を鉄よりも比重の重い金属で作ってあるので、身体強化をした状態ならば投げるだけで細い木をへし折る事が出来るし、魔物でも当たれば大ダメージになる。
素材の事を話すと二人の眼の色が変わる。
「プラチナ……この世界だと安いの?」
「うん、重いから装飾品も合わないし。加工も凄く大変だからね……」
「ねえ、ネモフィラ……」
「そうですわね、ミモザ……」
「「旦那様!」」
「えっ? どうしたの!?」
「是非、日本に帰る際はプラチナを沢山持って帰りましょう!!」
「異世界貿易出来ちゃうね!!」
二人して俺に詰め寄って来る、目がお金になりつつある……。
「なぁ、日本って何の事?」
エルスリリアが疑問を浮かべる、二人共エルスリリアの事を忘れていた様だ。
「あーえっとぉ……」
「そ、そのですね……」
二人共驚きや恥ずかしさで頭が回らない様だ、仕方ない……。
「俺達の出身国は日本って島国でね、朝も夕方も日が沈むのが海なんだよ。それで「ひ」の「もと」に生きる人達って意味で日本って言うんだ」
師匠から教えられ、昔から誤魔化す為の言い訳を伝えるとエルスリリアは「成程……」と呟いていた。
(師匠、助かったよ……)
二人を見ると安心したように息を吐いていた。
「それに、俺達の国って純度の良い鉄は手に入るんだけど。それ以外の金とかが少なくてね」
「そうか、だから欲しいんだな。確かに必要があればかなりの儲けが期待できるし良い事だと思うぞ!」
そう言って笑うエルスリリアに二人が申し訳無さそうな顔をする。違うんです、日本は金属加工の質が高いし地球だと需要が多すぎて供給が追い付いて無いからただ単にお金になるんです……。
「とりあえず、奏は剣を、恵はこの苦無を試してみてよ」
「わかりましたわ」「わかった」
そうして狩りの練習を開始する……とは言っても、二人は初めてなので獲物の見つけ方からだ。
「エルスリリア、エルフの狩人はどうやって獲物を見つけてる?」
「そうだな……エルフの狩人は〝森〟に聞いているな……」
「森?」「ですか?」
やっぱり、想定内の返答が帰って来た、エルフの言う森に聞くとは草木の持っている魔力の変化を〝耳〟で感じ取れる……らしい。
(要は折れたり踏まれたりした草木は、自ずと魔力の形が変化するからそれを感じ取るそうだ)
それを二人に説明するとなんとなくわかってくれたようだ。
「でも、それだと私達にはわからないよねぇ……」
「そうですわね、魔法に関しても旦那様やエルフの皆様みたいに鋭い感知能力がある訳ではありませんし」
「うん、だから魔力感知を覚えてもらおうと思ってね」
昨日俺からたっぷりと絞った魔力があるし、今の二人であれば出来るだろう。
「まずは目を閉じて、自分の周囲に魔力を出してみて」
「むむむ……難しい……」
「うっすらとですが、お二人の位置に何か引っ掛かりがあるのがわかりますわ」
普段から回復魔法で、魔力を外に出す事に慣れている奏はすぐに習得したようだ。一方、戦闘でしか魔法を使わない恵は少し苦手っぽい。
「恵、手を握るよ」
「へっ? ひゃい!?」
少しひんやりとする手を握る、そこから魔力を流していく。
「あ、凄い……旦那様の姿がはっきりとわかる……」
目を瞑った状態の恵が驚いた顔をする、少し魔力を流しただけでわかるとは……。
「凄いな、俺でも輪郭を捉えるのは難しいのに」
「そうなの?」
「俺はなんとなく魔力の大小と、居場所がわかるって感じだよ」
「そうですわね、私もうっすらと居場所がわかるくらいですわ。魔力の大小は全然わかりませんわね」
「多分、恵の固有魔法が関係してるんじゃないかな? 魔力の流れを断ち切れるから、流れがわかるんだと思う」
なんにしても皆は第一段階は成功だ。
「じゃあ、第二段階に行こうか。奏はそのまま魔力の範囲を広げてみて、動いてる魔力があればそれが獲物や魔物だから。恵は目で見れるようにしてみようか。いきなり開けると大変な事になるからゆっくり目を開けてね」
「はい!」「わかった!」
「あぐうううううう!?」
「「「!?」」」
突如エルスリリアが目を押さえて叫ぶ、これはもしかしたら……。
「エルスリリア、いきなり目を開けたでしょ?」
「ぐぉぉぉ!? 何故分かった!?」
「はぁ……奏、悪いけどエルスリリアに回復を……」
「わかりましたわ、でもどうしてこの様な事を?」
呻いているエルスリリアに回復魔法をかけながら奏が不思議そうな顔をする。
「えっとね、エルスリリア達エルフって、魔力の探知を耳で行ってるんだ。空気中に流れる魔力を耳で感じ取ってるんだ。でも、今みたいにいきなり目を開けると入って来る情報量が多すぎて目が識別出来なくて耐えれないんだ」
魔力の可視化って要は原色の絵具をぶちまけた世界を見る事になるから、最初はゆっくりと開けて行かないといけないのである、現に俺が練習でやったら同じように悶絶したのだ。
「さ、先に言ってくれぇ……」
「いや、教えてない事をやろうとして自爆したんだから、自業自得でしょ」
「ぐぅ……辛辣すぎないか!?」
「まぁ、俺もエルスリリアにやらないよう言っとけば良かったんだけどな。ほら、目を見せてみて」
「「「!?!?!?」」」
エルスリリアの顔を掴んで、目を開かせ様子を見る。特に出血や濁りは無さそうだし問題無いな。
「あ、あの……ホウショウ……」
「ん? 何さ、今酷い怪我になってないか見てるんだから、大人しくして」
「ひゃ、ひゃい……」
両目のチェックを終えて開放すると、そそくさと離れていき自分の匂いを嗅いでいる。何をしてるんだろう?
「ぎゃっふぅぅぅ!?」
「えぇ!? 何してるのさ!?」
今度は恵が悶絶する、隣に居た奏がすぐさま治療をする。
「いや、私も飛翔にちょっと強引に迫られたくて……」
「…………」
「いたっ!? なんでぶつの!?」
「いや、流石に擁護できない程のやらかしをしてるから……」
「旦那様、私も良いでしょうか? それと、叩くならお尻の方が……」
「奏までやらなくて良いからね!? それに叩くつもり無いからね……」
なんで二人がいきなりボケるのさ……。
「ともかく、目は大事なんだから変な事はしない! わかった!?」
「「はーい……」」
その後、俺が一度怒った事もあってか皆が真面目に取り組み、すぐに視覚での魔力感知(識別)が出来るようになった。
(その結果、大量のお肉が生まれる事になったけどね)
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作者です!
新作投稿記念に数日かけて2章を最後まで投稿していきます!
もし良ければ読んでいただけますと幸いです!
新作の方は【本日17時】に投稿したいと思います!
タイトルは「クラス転移でハブられた俺、勇者の力だけ与えられた現代で無双する。」です!
簡単なあらすじ、主人公がクラス転移の定員オーバーで置いてかれたが、地球でケモ耳ヒロインと出会い勇者として覚醒していくお話です!
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