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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

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1章改稿・試作読み①

「ホウショウ、コイツが今回の仕事の分け前だ」


夕暮れの酒場にてパーティーメンバーかつ数年来の相棒と、今回の仕事の分け前を分配する。


「少し……いや、かなり多くないか?」


報奨金を分け終わった後のずっしりとした袋を持ち上げながらアインに聞く。


「あぁ、今回予定されてた護衛の旅程が十日だっただろ? ホウショウのお陰で二日も旅程が短くなったからって依頼主が弾んでくれたんだ。それに途中の襲撃も問題なくこなしてただろ? そこも気に入られたんだ」


「そういうことか。それならば、有難く受け取ろうか」


アインから受け取った袋を周囲になるべく見えないように空間収納《アイテムボックス》にしまう。俺が異世界に落ちた際に得たこのスキルは容量こそ大きくはないが荷物の持ち運びをしなくて済むほどの便利なものだ。


(とはいっても、この世界じゃそこまで珍しくないもので。一部の大商人なんかが持ってるから特別感は薄いけどね……)


「しかし、いつも思うがそのスキル羨ましいなぁ。未《いま》だに商人やってないのが不思議でならないよ」


「お前なぁ……数年一緒にやってきてるのにまだ言うか……。俺の空間収納《アイテムボックス》の容量は大きくないし、生きてる物は入らないからそこまで良いものでもないぞ?」


「それでもだよ、宝石や貴重品をリスクなく運べるのはかなりの利点だろ」


届いたエールを飲みながらアインが言ってくる。宝石と聞いて周りの冒険者が聞き耳を立て始める。


「あー……それは正直お勧めしない。駆け出しの頃、それで難癖つけられて奴隷落ちしかけたからな」


「そうか、確かにお前のスキルなら、ちょろまかすのは簡単だもんな」


「やめてくれ、一度そういった噂が立つと、話題にしたがる馬鹿が居て本当に面倒なんだよ」


王都のギルドはそこそこに入れ替わりが激しい。出稼ぎやら、護衛依頼についてきた奴だったりと。常連の店だが、今飲んでいる席の半分も知らない顔ばかりだ。俺は周囲の連中を窺《うかが》いながら、アインに対して窘《たしな》めるように大きく息を吐く。


「すまん、お前はそんな奴じゃないと長い事一緒にやって来た俺は知ってるが。ここで失礼にも聞き耳立ててる、知らん奴には勘違いされるもんな」


周囲に対して聞こえるような声量と鋭い視線を向けるアイン。バレてないと思ったのか、聞き耳を立てていた見知らぬ冒険者たちが慌てて目を逸らす。


「そーだよ、だから悪いと思うなら一杯奢《おご》れよ」


冗談だとわかっている故に軽口で手を打つ。


「わかったわかった、リュリュちゃんコイツに上物を」


看板娘の猫獣人に声をかけるアイン。彼が頼んだ〝上物〟というのは俺たちが飲んでる安物のエールとは違い、じっくりと熟成したエールのことだ。無論値段も通常のエールなら銅貨四~五枚ほどのお手軽価格だが熟成だとその二~三倍はする。


「珍しい、お前がそんな奮発をしてくれるなんて」


「なんだ、忘れたのか?」


呆《あき》れたような顔でこちらを見てくる。


「ん、何をだ? ってそうか、やっと身請け金が貯まったんだな?」


「そうそう、スズランに、告白しようと思ってる。次の任務で、金が貯まるだろうしな」


アインが上機嫌に、そしてしみじみと言う。スズランというのはアラビアンナイトという最高級娼館で働いている、アインがぞっこんの 娼姫である。


「そうかそうか、そいつは良かった良かった」


「ありがとう、ありがとう! って、違う! はぁ……俺とお前、組んで今日で五年だぞ?」


そうだっけか? なんかもう長いこと一緒に仕事してるからわかんないや。


「あー……そういえばそうだったな、じゃあ俺もお前に奢るわ……リュリュさんコイツにも上物一つ」


「あいよーってかお二人さん、珍しいにぇ~」


俺の分を置いたリュリュさんが小さく愛らしい鼻をひくひくさせる。熟成されたエールだけあって蠱惑的で芳醇な香りを感じ取ったのか小さく喉を鳴らす。


「あぁ、コイツと組んで今日で五年だからな! 記念だよ!」


上機嫌に肩を組んでくるアイン、仕事上がりなので男くさい。そんなアインを押し返しつつリュリュちゃんに苦笑いを向ける。


「そうなんだにゃぇ~、じゃあ乾杯するだろうし急いで持ってくるにゃぇ~」


ニコリと営業スマイルを浮かべた後、尻尾で器用にバランスを取りながらスルスルと客の間を抜けていく。カウンターに居るおやっさんの元に向かいオーダーを伝えると、手早く用意された上物を軽い足取りで持ってくる。


「ほいさ~じゃあお二人さん、追加注文《おかわり》も歓迎してるからにぇ~」

「あぁ、流石《さすが》にそんなには頼めないだろうけどな。それじゃアイン」


アインにジョッキを手渡す。


「おう、いただくぜ!」


二人でカツンとジョッキを打ち合いエールを口に運び、祝いの席を始めるのだった。


◆◇

飲み始めてしばらく経った頃、思い出したようにアインが顔を上げた。


「そういや、さっきギルドへ報告に行った際に小耳に挟んだんだが。どうやら聖王国《ウチの国》が勇者召喚をしたらしいぞ」


「は、勇者召喚?」


「そうそう。少し前にもやったのにな」


「二年前だよ」


正直、それよりも前から知っているし。それによって異世界に落とされた俺には、嫌な思い出が蘇る。


「どうした、飲んでるのに青い顔して?」


アインが不思議そうに聞いてくる。


「あぁ、すまん。二年で使い潰されたことに気分が悪くなってな。それで勇者召喚がどうしたって?」


「相変わらずホウショウは優しいなあ。いや、特に俺たちに関係ある訳じゃないからスルーした。チラッと小耳に挟んだだけさ」


その言葉にずり落ちかけた。確かに、聖王国《この国》の上層部と冒険者はあまり関わりがないしな。


「そ・れ・よ・り・も・だ! そろそろお前も所帯を持つべきじゃないのか?」


がぶがぶと上物を飲んでいたアインがダル絡みをしてくる。かなり酔いが回り肌は赤い塗料でも塗ったかのようだ。


「いきなりなんだよ、というか相当酔ってるなお前……」


「いやな、つくづく実感するんだよ。家に帰ると奥さんが居て、その胸に飛び込んで癒される事がどれだけ大事かってのを!」


「力説するのはいいけど、お前だって、スズランさんはまだ奥さんじゃないだろ?」


「うぐっ、痛いところを……。ま、まぁ! 俺は大旦那に話を通してあるからほぼ確約だけどな!」


上機嫌なアインがドヤ顔で胸を張る。大旦那というのは最高級娼館《アラビアンナイト》の娼館主で俺も彼とは長く、所謂《いわゆる》昔馴染みというやつだ。


「そうかいそうかい、つーかもう飲むな!」


「リュリュちゅわ~んもう一杯!!」


真っ赤になったアインに呼ばれたリュリュちゃんが少し呆れたように来る。


「にぇ、おかわり期待してるって言ったけど。流石に飲みすぎじゃにゃい?」


「そうだぞ、それにリュリュちゃんに鼻の下伸ばしてることスズランに言いつけるぞ」


「いいのいいの! そうだホウショウ! リュリュちゃんなんてどうだ!? 可愛いし人気だし、気立ても良いし」


リュリュちゃんを指差してとんでもないことを言うアイン、すると肉斬り包丁が曲線を描きながら飛んできて机に刺さる。


「おう、アイン。何か言ったか?」


カウンターから出てきてこちらに音もなく近づいてくる筋骨隆々の猫獣人。この店のマスターでありリュリュちゃんの親父さんだ。


「あー……いやー……そのぉー……。ホウショウがリュリュちゃんを嫁にしたいなぁーとか言ってたんで……」


「はぁ!?」


コイツ言うに事欠いて俺を売りやがった!?


「ほう? ホウショウ、貴様はまともな冒険者だと思ってたが、ウチの娘をそんな目で見てたのか?」


殺気が俺の方に向く、それだけで酔いが醒めそうになる。


「み、見てないですよ?」


「ウチの可愛い娘が可愛くないっ……ぎゅぶりん!?」


顔を真っ赤にしたリュリュちゃんの一撃で、親父さんが放物線を描いて吹っ飛びカウンターの中に落ちる。


「ヤメテよね恥ずかしい!!」


「うぎゅぅ……」


「ほ、ホウショウさんも、冗談でもお嫁さんにするとか、そういうこと言っちゃ駄目だからね!」


何故か顔を真っ赤にして焦っているリュリュちゃんに机越しに詰め寄られる、というか俺そんなこと言ってないんだけど……。


「もう! 二人共飲みすぎ! 今日はおしまい!!」


「あぁ! 俺のエールが……」


俺たちのジョッキが奪われる、というかアインのは空じゃねーか。


「そうだな……リュリュちゃんこれで。お釣りはいらないよ」


懐から今日の飲食代に迷惑料で銀貨を数枚取り出してリュリュちゃんに渡す、これだけあれば足りるだろう。


「多すぎますよ!?」


「構わないよ。店長伸びてるし、アインが失礼なことしたからね。ほら、行くぞ」


「俺のエールぅ……」


酔っぱらったアインを担ぎ、店を出るのだった

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なんだか余分な改行がいくつかあって読みづらい
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