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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第三章 代理戦争
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第66話 選挙ゴロ

 フリーダムシティはずれの、旧平民派が所有する豪華な高級住宅街。

 その中でもひと際目立つ邸宅に、王党派の重鎮は居を構えていた。


 彼の名はピエール・コレイニ、60歳。

 先祖は元々王国の商人身分から、財を成した名家。

 そしてポートランド共和国首長で、この国の実質的な支配者である。

 

 70年前、彼の父の時代になるが、突如として侯爵家のフィリップと、平民出身の英雄ルメールが武装蜂起し、革命軍を名乗り、王国に対して武力革命を引き起こす。


 彼の一族は、王国に多額な税金を支払うよりも、新国家樹立で大きな利益が生まれるのではないかと、革命軍を支援し、新国家樹立の立役者となり、議会政治なるものをルメールと共同で発案し、首長制度も導入させ、皇国との自由貿易で巨額の財を成した。


 これがポートランド共和国の成り立ちである。


 共和国と王国との関係は、独立戦争以後は王家に逆らう賊軍として、教会本部があるフリーダムシティ、元々は救世主聖地である、聖都市リューズを取り返そうと、王国と70年もの間、戦争状態になっていた。


 王国が認めていない、共和国の自主独立性を認めさせる戦争。

 これを70年も行ったおかげで、共和国の市民は疲弊していた。

 さっさと無益な戦争を終結させ、王国を共和制にして巨大な財を得る。

 これがピエール・コレイニの当初の計画だった。


 そう、あのアレクシア・アリイエさえいなければ、そうなった。


 彼女が世に出てくるまでは、共和国軍の勝利は目前であったが、当時13歳でありながら、彼女はすでに政治的能力が化物だった。


 ピエールの妻と息子、孫たちを、王国に拉致した人質をとり、休戦条約を打ち出したのだ。

 

 平民派中心の共和国は、幾度も軍の特殊部隊を送り込み、奪還作戦を行う。

 また、商人に偽装した諜報員も送り込み、スパイ網を構築。

 これで王国の最大の脅威である、アレクシアを暗殺しようとしたが、失敗した。


 そして見せしめに、ピエールの妻の耳と息子たちの指が贈られてきた。

 彼以外の、平民派議員の家族の体の一部も。

 もはや、あの化物に逆らえないと判断したピエールは、王国と繋がることにする。

 家族の為、彼は国を売る事に決めたのだ。


 新たにピエールは王党派を結成した。

 王国に寝返ったピエールに、アレクシアは様々な優遇を裏で打ち出した。

 通商の自由化、そして財産の保証。

 こうして、王国の武力と魔法技術は発展し、共和国は莫大な資金を得る。


 王国からの豊富な資金で、王党派は共和国の議会を掌握できたのだ。

 皇国は魔界の侵略で、国土を荒らされて壊滅状態。

 同盟を組む旨味もなくなっていたから、ちょうどよいとピエールは判断し、議会に働きかけ、皇国からの支援要請を黙殺した。


 王党派は、王国との和平に反対し、皇国支援を打ち出していた、共和派と貴族派も屈服させる。


 共和派議員の重鎮も暗殺し、選挙で徹底的に共和派議員を排除したのだ。

 そして、借金苦に陥った元共和議員達は、自ら命を絶った。


 あとは、いかにして高くこの国を、王国に売りつけて財を成そうか。

 ピエールが思案していたら、厄介な存在が世に出てきたのだ。


 勇者マサヨシ。

 神に遣わされた、人類救済の救世主の存在。

 

 ピエールは、当初マサヨシが王国側と繋がり、用済みになった共和国を、武力で王国が潰すために、活動しているのではないかと疑ったが、その疑いは最悪の形で晴れることになる。


 王国のアレクシアと、敵対しているという話は本当だった。

 勇者の言うように、アレクシアが魔王軍と通じているという話も真実なのだろう。


 そして勇者マサヨシは、王国と通じる王党派を潰そうと画策している。

 子飼いのマフィア達を次々傘下に置き、教会にいた王党派の内通者を排除。

 噂にたがわぬ勇猛さで、繁華街や教会本部に出現した、魔界の悪魔達を撃退。


 そしてマサヨシには、王党派が見捨てた、皇国の英雄。

 あのロン・ブラフン・チャイ・チャイーノも協力していると話があった。


 最悪の状況になったと、ピエールは頭を抱える。

 これでは、ピエールが王国に共和国を売り渡す計画が破たんする。

 

「こんな事なら、早く王国にやつの身柄を引き渡せばよかったのだ」


 ピエールは、ぽつりと自室で独り言ちた。

 次にどんな手を取ってくる?

 あの勇者は王国のアレクシアとやり合えるほど、弁と頭が回る。

 だが、今は議会選挙も控えているから、獲れる手段も限定的に。


「大変です、ピエール様!」


 子飼いの議員が、ピエールの自室にノックもせずに入ってきた。

 普段なら叱責するところだが、よほど緊急事態らしい。


「なんだ? どうしたのだ。また例の勇者めが何かをしおったか?」


「この共和国に新たな党派、共和任侠党なるものが出現し、我々と平民派の選挙区すべてに、対立候補者を打ち出しました。党首は、ピエール様の息子を名乗る、コルレド・コレイニ。あの勇者の仲間の一人だそうです」


「な……んだと?」

 

 ピエールが一切認知せず、他の息子の邪魔になる存在と思案し、軍の士官学校に手を回して諜報員に仕立て上げ、支援を打ち切り存在そのものを黙殺した、元娼婦の妾が生んだ息子。


 勇者は王党派、いやこの国を乗っ取るつもりだ。

 ピエールは、すぐに子飼いの議員たちに水晶玉で連絡を取る。

 対立候補である、共和任侠党候補者のネガティブキャンペーンと、買収工作をさせようとした。



 一方、マサヨシは選挙戦で勝利のプランを打ち出す。

 まずマサヨシは、対立する王党派と平民派の選挙区に、拠点となる事務所を次々と立てる。


 転生前の清水正義達、極悪組が行ってきた手法。


 抗争の際、日本全国へ縄張りを拡大するために行った手法であり、対抗組織には、徹底的に嫌がらせを実施し、精神的に追い込むいやらしい手法である。


 マサヨシは水晶玉で、邪悪な笑みを浮かべて通信する。


「おう、王党派議員の商社や店の従業員に金渡して、労働争議させとけや」


 マサヨシの指令で、手下達が商社前で嫌がらせを行う。


「この商社は、社員の扱いがひどすぎるー」

「給料をちゃんと払えー」

「選挙に出るなら、レオ・サントスは社員の待遇を改善しろー」


 この他、水晶玉への嫌がらせの電話から、ポスター剥がし、演説妨害、脅迫行為など。

 そして嫌がらせさせるのは、屈服させた半グレ組織や、マフィアの下っ端。

 かつて政治ゴロのマサとして、名をはせたマサヨシに勝てる者など、この世界にはいなかった。

 

「あー、だめだめ。これ選挙違反だから」

「我々、異端審問官の手を煩わせないでよ」


 繁華街で、選挙区外のポスター張りをしようとした議員が、異端審問官達に取り囲まれる。


「ちょ! 共和任侠党だって酷いことを」

「は? 何の事? とりあえず言い訳は教会で聞くから、こっち来い」


 議員たちと癒着して、選挙違反の取り締まりなどしなかった、異端審問官。

 すでにマサヨシの完全なシンパと化しており、王党派を選挙違反で取り締まる。


 そして、マサヨシは各選挙区に、馬車の他に気球を配置する。

 空からの選挙活動と陸の選挙活動の二面構成。

 転生前の日本であるならば、公職選挙法違反だが異世界ならではの手法だった。


「選挙では、我々共和国の理念を取り戻す、共和任侠党に一票を」


 手を振るのは候補者と、エルフの麗しい乙女たち。

 身体強化の魔法を候補者に教え込み、大声で演説させた。



 そして水晶玉を使い、共和国内市民に手当たり次第に通信をする。

 通信をさせるのは、マフィア傘下の娼婦たちで、共和任侠党への支持を呼び掛けた。

 ペテン師ギルドから奪い取った、老人詐欺のリストを活用している。


「ノルマは一日500件だ。これが終わったら、優秀な奴にはカタギの商社持たせてやる」


 マサヨシはそう言って、娼婦たちにハッパをかけていた。


 中心街のレストランや、郊外のパブでは、マフィア達に客を装わせて宣伝行為をさせる。


「そうなんだよ、あの候補者のガンビーノさんはいい男でさ」

「そうそう、あの人が議員になったら、おいしい思いが出来るってものよ」

「なんせ、あの党は勇者様のお仲間が党首だからなあ」


 共和任侠党は、熱狂的な支持を、共和国市民から受け始めていた。

 

 一方、王党派の議員たちは大混乱に陥る。

 演説しても、大衆受けがしない。

 王党派の議員の評判も芳しくなくなっていた。


 そして、ピエールは決断した。


「王国の、アレクシア女王に連絡をつけよう」



 その頃、デヴレヴィ・アリイエ王国女王の、アレクシア・アリイエは、不可思議な現象に悩まされていた。


 自分が、日に日に知らない男に、肉体と精神を奪われていくような感覚。

 たまに自分が、本当に王国の女王なのかと自問自答する日々。

 自分の精神に、恐ろしい男が徐々に侵食しているとアレクシアは感じた。


――なに? これは。前世の記憶と共に知らない男が私を。


 アレクシアは冷静で明晰な頭脳で思考しようにも、頭にモヤのようなものがかかる。

 共和国侵攻まで、あと一か月。

 王国の侵攻は、着々と準備が進んでおり、最後の計画を実行しようとしていた。

 マサヨシの出現で、邪魔になった共和国王党派の処分だった。


「あんたのやり方は、ぬるいんだよ。お嬢さん」


「!?」


 ついに、頭の中に混乱の大本である男の声がしてきた。

 年老いた男の声?

 私の心を奪う事は、マサヨシ様以外は許さない!

 アレクシアは心の中で叫ぶが、男はアレクシアの頭の中であざ笑う。


「お嬢さん、あんたにマサヨシの兄貴は渡さねえよ」


 アレクシアの魂を、極悪組7代目滝沢康が主導権を奪おうとしていた。

 すると、水晶玉に着信が入る。

 王党派の首魁、ピエール・コレイニからの連絡だった。


「アレクシア様、共和国議会選挙で、我々は劣勢です。至急買収資金を」


 アレクシアの意識を乗っ取った男は、思案する。

 ボンクラ共が、散々支援してきたくせに金の無心などしてきやがってと。

 そして、もうこいつらは用済みだとも。


「なぜですか? あなた方には十分な資金を渡しているでしょう?」


「勇者です。勇者が政党を作って、我々はこのままだと落選の憂き目に」


 滝沢康は、アレクシアの心の中で大笑いをした。

 兄貴も、こんなボンクラ共相手だと張り合いがないだろうなと。

 滝沢康の魂は、地獄の業火でも浄化できないほど、邪悪に染まり切っていた。


「ならば、投票日に投票所を焼き尽くせばよいではないですか? 何か問題でも?」


 アレクシアの回答にピエール・コレイニは絶句した。

 そんな事をしたら……。


「そんなことしたら、我々は市民から支持が今後得られずに……」


「おや? あなた方はそんな心配しなくてもよいのです。1か月後に私は共和国に侵攻するのだから」


 さっさと共和国を自分の版図にして、マサヨシを手中にする。

 アレクシアが描いていた当初のプラン通りに。

 そして、マサヨシを手に入れて魔王軍も手中に収める。

 滝沢康が考えている絵図通りに。


「あなたたちのようなクズが、マサヨシ様に勝てるわけなかったのです。それではごきげんよう」


 通信が切れ、ピエールは絶望した。

 王国は最初から自分たちを見捨てる気だったのだ。

 あの勇者が出現した時点で。


 

 一方マサヨシは、にやつきながら自分が印刷所に依頼して、大量に発行したビラを配るよう、手下のマフィア達に指示していた。

 

 武神隊に調べさせた、王党派議員のスキャンダルの数々。

 これを各選挙区でばらまいて来いと、邪悪な笑顔で言い放った。

 そして、共和任侠党の宣伝もついでに行うように指示する。


「さあて、紙爆弾はあいつらに色々任せといて、俺はデートに行こうかな」


 マサヨシは、鏡を見て髪をセットし、着物の着崩れが無いかどうかを確認する。

 そして手に持つのは花束。

 彼女は目が見えないが、花の香りは気に入ってもらえるはずだと、マサヨシは思った。


 そんなマサヨシを遠目で見やる乙女の影が二つ。


「のう、レオーネ? 最近あやつの様子、やはりおかしいじゃろ?」


「ええ、ヤミー様。まるで私がマサヨシ様にこっそり会いに行くかのような感じが」


 レオーネが言い終わる前に、ヤミーがレオーネを睨みつける。

 すると、レオーネはわざとらしい咳払いをした。

 この二人は、最近のマサヨシの様子がおかしいことに違和感を覚えていた。

 そして、こっそりマサヨシの後を付いていこうとする。


 すると、マサヨシは二人の存在に気が付いているかのように路地を入って行く。

 そして風魔法で、一気に上昇して教会本部へ向かった。


「へっへっへ、バレバレだよバカヤロー。あいつらに俺の憩いのひと時が、邪魔されてたまるか」


 そしてマサヨシは、教王室の窓を開けて教王ソフィアとの密会を試みる。

 マサヨシは完全に彼女に惚れていた。

 サプライズで彼女を驚かせて、さりげなく花束を渡す作戦。

 そしてマサヨシは、教王室に入る。


「どこから入ってきているんだ? 兄弟」


 共王室にはすでに、兄弟分のロンがいた。

 マサヨシが作った、竜の刺繍が入りの赤い着物を着用しており、髪の毛もヒゲも整えて、共王室でソフィアと先に面会を果たしていた。


「あら、マサヨシ司祭もいらしてるのですね?」 


 教王ソフィアが、窓から入ってきたマサヨシに微笑みかける。

 ちくしょう、先を越されたか。

 マサヨシはロンを見やった。


 まさか、女の趣味が兄弟分と被るとは思わなかった。

 元皇帝だけあって、顔以外は品がいいし、そしてソフィアは目が見えない。

 ロンの外見上の問題、醜男(ぶおとこ)ぶりは、彼女には伝わらない。

 そしてロンの内面は、マサヨシが自分から五分の兄弟を申し出るほど、申し分のない男気を持っている。


 教王と親子ほど年が離れてるのに、兄弟もなかなかやりやがると、マサヨシは一瞬歯ぎしりをする。


「教王様、本日はお日柄もよく、ちょうどお花を持ってきたので、お部屋に飾ってみてはいかがでしょうか?」


 マサヨシのプレゼントに、その手があったかと、ロンは悔しがった。


 たとえ兄弟分であっても、惚れた女を譲るつもりはない。

 お互いの男の意地の火花が散る。


「そういやよ、俺これから教王様と大事な話なんだ。ロンの兄弟は先帰ってなよ」


「いやいや、重要な話ならば俺も聞こう。だてに皇国で皇位にはついてなかった」


「3人でお話ししましょう。この世界の孤児問題、何とか解決しませんと」


 ああ、いい女だな。

 二人の男が感心した面持ちで、教王ソフィアを見る。

 この少女の純粋さに、大の男二人は完全に惚れていた。


「その前に、お二人の口に合うかと思いましてお茶を淹れてきましたの」


 ソフィアがカップに入れたお茶を二人に手渡す。

 しかしお茶の色は、赤黒く生臭い臭気を放っていた。

 そして、どこからか飛んできた小バエが臭気だけでポロリと落ちる。

 思わずマサヨシとロンの二人は目を見合わせる。


「ようロンの兄弟、美味しそうなお茶だな」

「ああ、兄弟。こんなうまそうなお茶は皇国でも見たことが無い」


 そして二人はカップの中身を一気に飲み干した。

 まさしく男の中の男でしかできない、見事な振る舞いであったが、二人共悶絶する。

 うぐおおおおおおおお、やばい! 死んでしまう!

 二人は思いながら、吐き気と頭痛をこらえ、冷や汗が流れ出る。


「やっぱうめえお茶だったぜ、なあ兄弟?」

「ああ、素晴らしいお手前だった」


 すると、マサヨシは教王ソフィアのある仕草に気が付く。

 嬉しい時に、右耳の髪をかき上げる仕草。

 そして、家事全般がまるでダメなところ。


 ああそうか、そういう事かとマサヨシは理解した。

 マサヨシは彼女に惹かれ、安心感を得た理由をすべて理解した。

 そして同時に怒りの念がこみあげてくる。


「ところで教王さんよお、あんた孤児問題を解決するって言ってるが、本当にできるのかい? それは上辺だけ奇麗な、思い付きとやらじゃあねえのか?」


「いいえ、私は世界の孤児たちを本気で救おうと思ってます。そのためにマサヨシ司祭の義務教育案も実現しようと」


「へえ? あんたの気まぐれじゃなかったんだ。俺が案を出しても、本気でこの世界の問題に、あんたが対応できるかどうかわからねえや。あんた孤児から教王になんて祭り上げられて、まわりから、ちやほやされてこの世界の悲惨さなんか理解できてねえだろうし」


 マサヨシの言葉に、教王ソフィアのふさがれたまぶたから、涙が流れる。

 ロンはマサヨシを見やり、憤怒の表情を浮かべた。


「教王殿、マサヨシは何か混乱なさっている様子。失礼ながら少し二人で用を足してきます」


 ロンはマサヨシの後ろ襟を掴み、教王室を出ると、1階ロビーのトイレまでマサヨシを引きずり、便所の壁にマサヨシを押し付け、思いっきりマサヨシのみぞおちに怒りの一撃を加える。


 マサヨシは先程飲んだお茶の吐き気をこらえきれず、胃の中身全てを床にぶちまけた。

 そして咽びながら、その場にうずくまる。 


「おい、貴様! いい加減にしておけよ、なんてことを言うんだ!」


 マサヨシはうなだれて、何も答えなかった。

 言ったところで、この世界の人間には理解できないだろうと。


「兄弟よ、あの人を幸せにしてやってくれよ。俺にはその資格がねえ」


 マサヨシが呟くように言うと、ロンは着物の襟を掴んで壁に押し付ける。


「貴様ぁ、ふざけるんじゃねえぞ。あの人はお前に惚れてる。俺も惚れてるが、お前から譲られるほど、このロンの男は、落ちぶれちゃあいねえんだ」


 マサヨシは立ち上がると、うなだれながらロンに何も言い返さず、その場からフラフラと歩き、立ち去ろうとした。


「やはりお前は、器量無しの小さい男だ。お前と五分の兄弟の契りを交わしたのは間違いだった」


 マサヨシは何も言い返さず、教会本部を後にする。

 そして、誰もいない街の路地裏まで行くと、一人号泣した。

 そこに、いつの間にか現れた拒魔犬がマサヨシに声を掛ける。


「色々つらい思いをしているようだな。だが、悲しんでいる暇はない、大王様がお前をお呼びだ」


 拒魔犬がマサヨシに声を掛けると、そのままマサヨシはその場に崩れ落ち、深い眠りに包まれた。

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