第45話 新しい道具
山の洞窟を100メートルほど進むと、そこは広大な空間となっていた。
炎の精霊の作用か、天井が明るく光っている。
どうやらここがドワーフ王国らしい。
山というより、地面丸ごと繰り抜いて作ったような感じだ。
俺達は目の前の階段を下ると、周辺はドワーフ達の住居となっているようで、ドーム型の岩でできたような住宅が密集している。
そして、ひと際でかいドーム球場みたいな建物が、ガルフの王宮だろう。
俺達がそこに向かうと、武器を持ったドワーフ達が道に整列して俺達を待っていた。
そして、王宮からガルフが出てくる。
ガルフは俺の元に来ると、グローブみたいな右手を差し出してきた。
俺も右手を出して握り合う。
するとこいつ、力いっぱい握ってきやがった。
いってええええええええええええ。
ていうか、こいつ握力強すぎて握手した指がボキって言ったぞ。
だが、せっかく舎弟が俺を出迎えてくれたんだ。
笑いながら、我慢しろマサヨシ。
「よう、兄者! 待っていたぞ。ワシらの国によく来たな」
「おう、兄弟! 出迎えてくれて悪いな。早速だが、ちっと頼まれてくれねえか?」
俺は水晶玉を使い、レオーネに鎧のサイズと、コルレオーニに何か入用なものはねえか、確認する。
早速だが、ドワーフ達には新しい武器と防具を作ってもらう。
俺のブレードソードも木っ端みじんになっちまったし。
そして、注文をまとめてガルフに告げた。
「急ぎで用立ててくれねえか? 俺もおめーさんちのエルフとの喧嘩に参加するから」
「すまねえな、兄者。しかし、ほんとあんたは、喧嘩大好きだな。人間じゃなくて、ドワーフに生まれてくればよかったのによ!」
馬鹿野郎、ドワーフに生まれちまったらいい女、コマせねえだろうが。
この顔だからいいんだよ。
「なんだ、兄者。この人間のガキとホビットの娘も喧嘩させるのか?」
ガルフは怪訝な顔して聞いてきた。
「ああ、この娘は同行してもらうが喧嘩はさせねえ。このガキはニコって言うんだが、俺の息子で喧嘩の才能があるから、俺のそばでみっちり仕込んでやることに決めてる」
俺が言うと、ニコもガルフに頷く。
まあ、無理はさせる気はねえがな。
「ほう、ガキのくせに大したもんだ。じゃあ兄者には、俺の息子たちに会ってもらいたい。マシュ、オルテ、ガイの3つ子でな、ワシほどじゃないが、今年50のガキのくせにそこそこやれる」
あ? 今なんつったこいつ。
50でガキって言ったら、ガルフの野郎年齢いくつよ。
そういや、ドワーフは人間よりも長寿だった。
「ワンワン!」
兄貴が挨拶で吠えるが、ガルフは小首をかしげた後シカトぶっこいたので、俺はガルフの頬ゲタに拳で一発くらわす。
「おいガルフ、この方は俺の兄貴だ。挨拶してんだからシカトすんじゃねえ」
俺が言うと、ガルフは目をむいて驚いた。
まさか、この犬が俺の兄貴分とは思ってなかったようだ。
まあ、無理もねえかもしれねえが、それじゃあ兄貴の面子が立たねえ。
「兄者、それと兄者の兄者、すまなかった」
ガルフは俺と兄貴に頭を下げる。
兄貴はしっぽ振って俺達を見やった。
「おう、今はこんなナリしてっけど、グレートドラゴン瞬殺できるくれえ強いからな」
俺が言うと、ガルフは仰天して目を見開く。
まあ、ヘマして今は単なる黒毛の柴犬だけど。
「すごいな。ワシでも倒せるか怪しいのに、瞬殺か。どうやったんじゃそれ」
「おう、口から光のなんかを吐き出して、山ごと消滅よ」
「私の得意技、地獄の豪炎だぞ。最強技は地獄の炎陽だ」
え? あの水爆みたいな技の、上があるのかよやべえな。
だが、これで兄貴の面子が立つってもんよ。
俺やヤミー以外だと、ただ犬が吠えてるようにしか聞こえねえようだし。
「しかし兄者という存在は、久しぶりじゃな。ワシの兄者達は5人もおったが、ワシより弱くて、父者もろとも、みんなエルフとの喧嘩で死んじまったからな」
マジか、こいつ笑いながら言ってやがるが、結構ハードな人生を送ってやがるぜ。
「色々と聞きたいが、その前に酒じゃな。おうおめーら、宴会場で待機しとけ。酒持って来い!」
俺達はドワーフ達のもてなしを受けることとなった。
ドワーフ達は、洞窟でキノコ栽培しているらしく、風味があってうまい。
あと、漬物にした野菜みたいなのも出てくる。
だがよお……。
「なんじゃこらああああああ、ワシの酒飲めんのかあああ」
「んじゃあ、こらあああ、男なら一気に飲めこらああああ」
酒瓶が転がり、ドワーフの男達があちこちで殴り合ってる。
なんだこれ?
俺の祝いの席だろうが、こいつら。
ヤクザだった俺でも引くよ、こいつらの酒癖の悪さよお。
宴会場で、酔って喧嘩しすぎだろボンクラ共。
ていうか、何だこの酒?
なめただけで、舌がしびれるんだがアルコール度数何度よ?
これなんて酒の名前だっけ?
思い出せねえけど昔見栄で飲んだ気がする。
多分、度数が90パーセント越だよな?
割らねえと飲めねえよ、こんなもん。
ていうか、そんなもんガキに出してくるんじゃねえよ。
ニコとメリアちゃん、一口なめただけで顔真っ赤でぶっ倒れてるし。
急性なんとか中毒になるだろうが馬鹿野郎。
俺はさりげなく二人の元に駆け寄り、神霊魔法の解毒を唱える。
ていうか、兄貴ぺろぺろ舐めておかわり貰ってるよ。
どういう胃袋してんだよ、さすが兄貴だけど。
「ほうほう、ヘルフレアーにヘルコロナという技があるんですか。すげえお方だ」
ガルフは、酔っ払っていつの間にか兄貴の言葉わかるようになってるし。
その時、背が低い若いドワーフ3人が、俺の席の前に立った。
「マシュだ」
「オルテだ」
「ガイだ」
こいつらが例のガルフの息子の三兄弟か。
ドワーフ連中の個性的なヒゲはまだ生えてねえし、顔が黒すぎて、誰が誰か見分けがつけられねえけど。
すると、俺にあのやべー酒が入った杯を進めてくる。
「飲め」
「酒じゃ」
「うまいぞ」
おいコラ、ちょっと待て。
俺に飲めってか?
あの酒のようなやべー代物を。
噂のジェットアタック来たよコレ。
まあいいや、ガルフの子ならこいつら俺の子分よ。
俺は一口なめて、こいつらに杯を突き返す。
なんて言ったっけ?
確かなんとか盃ってこんな感じだったような、思い出せねえけど。
「もっと飲め」
「俺達の酒が」
「飲めないのか?」
糞生意気なことを言ってきたから、俺は3人に拳骨をくらわした。
「おめーら、親分の俺が口付けたんだから、あとはお前らが飲み干すんだよ、ボケ!」
3人は、俺の盃を一気に飲み干した。
こうして、俺にドワーフの子分が3人できた。
そして、次々とドワーフ達が酒を勧めてくるので、俺は一口なめた後、解毒魔法を唱えながら、こいつらに盃返した。
だが、さすがの俺も宴会が終わるころに限界が来て、宴会場から離れた便所に行って、胃の中身を全てブチまけた後、その場でぶっ倒れ、回復したニコとメリアちゃんに連れられて、寝室まで行くという無様を晒した。
ちくしょう、かっこ悪いなあ。
翌朝、俺は3人と一匹でドワーフ達の工房を見学させてもらう。
男たちは戦場に行くので、鍛冶仕事は女のドワーフ達がやっているようだった。
俺が注文したのは以下の通りだ。
ヒヒイロカネとアダマンタイトの合金小太刀
ヒヒイロカネ製の女性用胴当と額当て
ヒヒイロカネとミスリルの合金ブレードソード
オリハルコンとアダマンタイトの合金ナイフ
オリハルコン製の鎧パーツ
アダマンタイト製大型金棒
アダマンタイト製の使い捨てナイフ
アダマンタイト製の具足に皮の貼り換え
アダマンタイト製の隠し籠手
アダマンタイト製の肘当て膝当て
ミスリル製子盾に太陽のヒヒイロカネ紋章付き
アンオブタニウム製ボディアーマー
兵団の非番の男衆も加わり、制作まで三日かかるところを、無理を言って二日で仕上げてもらい、兄貴の助言で製法を思い出した、日本刀も作ってもらいたかったが、仕上げに大幅に時間がかかるとの事だったので、鍔無しの小太刀で我慢することとした。
なお、ドワーフ達から聞いた特殊金属の特色としては、以下の通りだそうだ。
ミスリル
白銀で、魔法耐性が非常に高いが、物理防御は鉄以下でそれほどでもない。
少ない労力で、別の金属を被せる合金可能。
軽量のため魔法防御重視の防具に向いている。
オリハルコン
軽量で、バランスがとれている金色の金属。
感情に反応して硬化する。
柔らかい性質だが、加工が難しく生成に時間がかかり少量しかない。
アダマンタイト
金属で最も硬質だが、魔法防御に一切向いておらず、非常に重い黒い金属。
加工が容易。
武器に向いており、ドワーフ兵団標準装備。
ヒヒイロカネ
重いが、物理と魔法全てにおいてバランスがとれている、柔軟かつ硬質な赤色の金属。
魔力量に反応して硬化する。
加工はしやすいが、生成に時間がかかるため少量しかない。
アンオブタニウム
超軽量でアダマンタイトの次に固く、魔法防御もミスリルに次いで高い、透明な超希少金属。
精神力に応じて硬化する。
加工困難で簡単な構造の物でしか使えない。
武器の使用も棍棒以外は不可。
生成に長い年月と魔力を有する。
他にも、合成で色々な合金が作れるようで、転生前の記憶があれば、気の利いたものが出来そうだが、今考えられる最良の組み合わせと装備をオーダーした。
転生前の記憶がねえとこんなに不便だとはな。
あとは、空いた時間を使ってニコに格闘稽古をつけてやり、ナイフ格闘に役に立つ、小太刀やドスとかの使い方に、シャドーボクシングの反復練習を行う。
武術については、記憶ではなく体で覚えていたので、なんとか指導は出来た。
ニコは格闘センスの良さもそうだが、とにかくいい目と勘と思い切りの良さをしている。
特に格闘技の勘と目の良さってのは、習ってどうこう出来るものではなく、魔法と同様、やはりセンスの問題がある。
人によって向き不向きがあるし、気質的な問題で、いざ人様を殴ろうとかすると、普通は無意識で罪悪感ってのが多少働くもんだが、盗賊稼業の村で育ったのか、こいつにはあまりない。
こういうガキは、早いうちに精神面を鍛えておかないと、俺みたいなロクデナシに育っちまうから、武術や神霊魔法の修行を通じて、感情のコントロールをさせねえと。
そして魔法のイメージの仕方や、使い方については、ニコとメリアちゃんに指導をするが、メリアちゃん想像力豊かで頭いいというか、すげえ天才で、俺が逆に教えを乞いたい。
一方、ニコも頭はキレるし、要領はいい方だが、イマイチ想像力に欠けてるところがあるので、指導方法を考えなきゃならんが、メリアちゃんに任せてもいいかもしれねえなあ。
男の子ってのは、可愛い子に教えてもらった方が、色々と伸びるような気がするし、転生前の俺は、そうやって色々と物を覚えた気がするが、肝心な事が思い出せねえし、どうせロクでもねえ事だろう。
ドワーフ連中のガキらも、戦闘意欲が旺盛なのか、こっちに来て色々と学びにくるんで、ガルフの野郎も呼んで、経験談と技術指導を行った。
こうして、新しい武具の作成が終わり、新たな装備を身につけた。
俺の防具は、着物着ても見苦しくねえように、隠し籠手と肘当て膝当てを付けて、新品のブーツに、透明なアンオブタニウムのボディアーマーを着用する。
そして黒い鞘つき小太刀を、装備した。
木刀とこいつの二本差しで行こう。
ニコには、服の上に急所をガードするオリハルコン製の鎧パーツを装備させ、大型の合金ナイフを装備させた。
残りの防具は、ホビット国へ子分のドワーフを使い、レオーネ達のもとに運ばせる。
いつかの町で、レオーネからは、俺の着物の材料や、アクセサリー買ってもらったから、俺からのプレゼントよ。
あいつには赤が似合うからな。
気に入ってくれると嬉しいぜ。
そして、俺の注文な品が届いたようで、レオーネは喜んでおり、コルレオーニには、王国側に売付けた場合の算段の計算をさせて、商売の話を中心に行った。
ホビット国には、今のところ異常がなく、ホビット達は俺の言いつけを守って、護身術の稽古を皆で行っていて、ロイヤルガードの連中も暇らしく、一緒に稽古に参加しているようだ。
そして、ドワーフ王国滞在5日目、ドワーフの子分らと、エルフ王国への出発準備ができた。
本当は、ニコにもう少し訓練させたかったが、アレクシア王女との約束の期限が、三分の一を経過したため、もう時間的な余裕は少ない。
その時、唐突にコルレオーニから連絡が来た。
ホビット国へ、山脈を迂回する形でエルフの騎士団が侵攻。
王国ロイヤルガード隊と交戦し、ガード隊の死傷者多数。
そして、レオーネが奴らにさらわれたとの情報だった。
ちくしょうが、エルフなめてた。
あいつら、俺の想像以上に無茶苦茶強い。
しかも、俺の女さらいやがってクソが。
なめやがって、絶対に許さねえ。
コルレオーニと、ロイヤルガード隊長からの情報によると、エルフ騎士団はほぼ女のみで構成されて、超遠距離から風魔法と毒矢の攻撃で、音も無く、確実にこちらの戦力を削ってくるようだ。
さらに、レオーネを救出するために、ガード隊の精鋭、一個小隊をエルフの森の中に潜入させたところ、半日で連絡がつかなくなったらしい。
ちくしょうが、女のみの殺し屋部隊で、確実にこっち殺しに来やがるとか、手段を選ばねえような無茶苦茶やりやがって、奴ら半端じゃねえ。
それに森は、奴らのホームグランドみたいで、王国最強の人間の部隊に勝ち目がねえとか、どっかでこんな目にあった事があるような、嫌な感じがしやがる。
すると、今度はアレクシア王女から水晶玉に連絡が入る。
「姫さんか? こっちはやべえ状況になった! エルフの奴ら半端じゃなく強い! ロイヤルガード隊に犠牲者多数で、おまけにレオーネもさらわれた!」
「落ち着いてください、マサヨシ様。ロイヤルガード隊とレオーネの犠牲は痛手ですが、ようやくこちら側の反撃が整いましたわ。うふふ」
ようやく反撃だと?
ああ、王女が考えていたって言う秘策か。
遅えよ馬鹿野郎。
ていうか、レオーネの犠牲って……。
すでに死んだみたいな言い方してやがるが。
やべえ、嫌な予感がするぞ?
とんでもなく嫌な予感がする。
「マサヨシ様、今まで大森林南側が人間の侵入を拒んでいたのは、森の凶悪なモンスターが多数いたからです。ですので、私は攻撃の報告があった時点で、エルフ王国と戦争状態にあると判断し、王国騎士団を動員し、大森林南側へ火をつけました」
「へ? 今なんて?」
今なんて言ったんだこいつ。
大森林に火をつけたって言ったけど。
やべえ、変な汗出てきたし鳥肌立つんだが。
「ええ、広範囲を焼き尽くすように、工業用油を飛空挺で散布し、炎魔法で火をつけました。早く消火しないと、エルフは困ったことになりますわ」
うん、理屈はわかるよ。
森が厄介なら、燃やしちまおうってのは。
あっちから、仕掛けてきた事だし、大義名分はあるけど、森が燃えちまったら、エルフどころか聖霊王が激怒案件じゃね?
「それに大森林南側にいた、凶悪なモンスター達は、南へ南へ南下して、エルフ王国へ向かうでしょう。ふふふ、うふふふふ、あははははははは。いい気味ですわあ、勇者様と私に歯向かうからこういう事になるのです! これでエルフ共は、目の前の脅威に対処せねばならなくなりましたわ」
おいいいいいいいい。
ふざけんな、やめろ馬鹿野郎。
エルフもやべえが、こいつもやべえ。
一番やべえのはレオーネの安否だよおお。
仁義もへったくれもねえええええ。
「ああ、ご心配なくマサヨシ様。私、王国の飛行船を使い大森林の高空より、今回の火災は、トワの泉を独占する、エルフへのイフリートの怒りだとビラ撒きますので。あ、今撒きました、美しいですわあ。まるで白い鳥の様に、私の風魔法で泉方向に飛んでいきました」
うわあああああああ、もうやだこいつ。
マジでイカレてやがるよ!
こういう奴、なんて言ったっけ?
転生前の言葉で忘れちまったけどさあ。
帰りてえ、今すぐ元の世界に帰りてえよ……。
「それではマサヨシ様、急ぎエルフ王国へ潜入し、怒れる精霊王フューリーの説得をなさるとよいでしょう。それではごきげんよう」
アレクシアの通信が切れた。
くそ、もうこうなったらエルフ王国とやらに突入するしかねえ。
「よおし、ガルフ! ドワーフ兵団に召集かけろ! エルフ王国と喧嘩すっぞ!」
「待ってたぜ、兄者! よおし、野郎共、喧嘩だ!」
俺はドワーフ達が作った地下通路で、大森林内のエルフ王国に近い、ドワーフ前線基地へ移動した。
待ってろよ、レオーネ。
絶対に助けてやるからな。
次回、一章で戦った再生怪人登場




