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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第二章 王国死闘編
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第34話 化物 中編

 こいつは、サイコパスで化物だが、俺よりも頭はキレる。

 ここは利用する手はねえ。

 

 そしてアレクシアは、世界情勢について話を始めた。

 まずこの大陸の、人間国家について。


 アフルランド大陸の北半分、西のデブレヴィ・アリイエ王国、中央のポートランド共和国連合、東のチャイ皇国が人間の大国になる。


 しかし表向き停戦を結んでるが、内情はあまり芳しくない状態らしい。

 この停戦状態、かなり恨みを買うような事して、結んだからだという。

 何やったんだよこの姫、聞くの怖いんだけど……。


 元々、王国と共和国連合は一つの超大国だったが、70年前に、このクソみたいな王国が嫌になった、貴族や騎士、平民達が革命起こして、3カ国の共和国連合になった。


 共和国連合は3人の首長からなる合議制かつ、俺好みの資本主義で、ギルドなんかもガンガンあって、一応議会制度なんかもあるが、内実は3人の首長の独裁国家で貧富の差も激しく、内部不満もかなりある様子。


 共和国連合の首都中央には、100年前の救世主。

 俺の先輩が起こした、神の奇跡の聖地であり、俺の所属する、大司祭の教王がトップの教会本部が設置され、教会の情報力が高いのは、大陸の中央で王国からも共和国からも、情報と金が入ってくるからに他ならない。


 ちなみに教王さんは、暗殺を恐れてお姿を見せないようだ。

 情報では、女性であるとしかわかってない。

 しかし、人間性が素晴らしい方だと聞く。

 一応姫様も司祭だし、機密事項なので教えてくれなかったがな。


 まあ俺は会ったこともねえし、教会の内情はそんなにいいもんじゃねえと、内心では薄々感じているから、胡散臭えと話半分で思ってる。


 ちなみに教会には、姫様はいい顔をしてて、品行方正と話が伝わっている……。


 中身サイコパスなのに。


 以来王国と共和国連合は、聖地を巡って、70年近く戦争状態になっている。


 ぶっちゃけ、王国と共和国の戦争は、つい最近まで王国側がかなり不利だったらしく、共和国の魔法技術が王国よりも数段上なのと、東方のチャイ皇国の物資支援もあって敗北しそうになっていたようだ。


 これを厄介に感じた、この姫さんが、和平協定結ぶように工作したという。


 まず情報工作。

 王国側が共和国の情報を得るには、王国側の聖騎士や枢機卿からの情報に、当初は頼るしかなかったようだが、教会本部の機密情報にも抵触するため、ヘタすれば、この世界の権威の象徴、教会側を怒らせる事ともなり、なかなかうまくいかない。


 だが、3年前に姫さんが商人ギルド使って、買収工作しまくった王国側のスパイが、共和国議会にかなり入り込んでて、今は情報を得やすくしたという。


 ニコと同い年の、当時13歳のガキがやる事じゃねえ。


 そして、今度は騎士団連中の腕利きを共和国市民に偽装させて、共和国の首長の家族連中を王国に拉致する、人質作戦に出る。


 まあでも、国の命運とかかかってるし、普通は拒否るよ。

 実際、共和国連中は最初黙殺したらしいし。

 俺だって組持ってれば、ふざけんなって因縁(アヤ)つけて、逆に怒りに燃えて相手の家族さらって報復するだろう。

 

 だがこんなクソみたいな王国に、工作員で戻りたいなんて言う、共和国側の人間もおらず、仮に王国にスパイを送り込んでも、商人ギルド連中が密告するようで、これもうまくいかない。


 そしたら、姫様その報復で、拉致した家族連中の指輪とかピアスとかつけた、体の一部を、共和国に送り付けたんだと。


 で、相手さんしぶしぶ和平案の条件吞んだらしい。

 本当に10代の小娘かよ?

 ヤクザって言うか、マフィアのやり口だよなそれ。


 そして東の超大国のチャイ皇国。


 王国と大陸の覇権を争う、大昔からの敵対国で、共和国を分離独立させたのも、この皇国の工作も多分にあるという。


 皇国と共和国は相互の安全保障という事で、食糧支援や武力支援もしあう仲だった。

 姫様には、それが非常に厄介だった。

 そして皇国の皇帝は、人類側の英雄にして名君。

 ここの皇帝のロン・ブラフン・チャイ・チャイーノとか言うのが、歴代最高の名君と呼ばれてる。


 王国と違い、厳しい身分差別制度を廃止した、専制君主国家だが、歴代の皇帝の帝王教育がいいせいか、暴君は出ても、王国のような暗君は滅多に現れないらしい。


 ぶっちゃけ、俺は皇国に人類側統一させた方が、いいんじゃねって思うし、姫さんもそう最初は思ったそうだ。


 しかし同盟結ぼうにも、歴代の皇帝は皆、すげえ不細工揃いで、交換条件で婚姻とか結ばされそうだから、姫様はやめたらしい。


 そんで、いつか現れるだろう、憧れの勇者の俺を待ってたんだとさ。


 一国の姫が乙女かよっての。

 て言うか、コイツの場合サイコパスだ。

 レオーネには、政略結婚勧めてたのに。


 それに皇帝の話を、教会情報とも照らし合わせながら、人物像を考察すると、顔は不細工だけど性格はこの世界には珍しい、いい奴だと思うよ?


 多分ヤクザな俺よりも、人間出来てる筈。


 そしてこの国が、この世界で一番人類の人口が多く、その人口を補うのが、食料の生産性の高さ。


 土地が肥沃に富んで、大河や海があり、この世界では珍しい麦や米とかの大穀倉地帯なんかもあると言う。


 しかし、救世主の再来にして、勇者の俺の登場まで、人類側の守護者を自称し、魔王軍の精鋭部隊、おそらく不死隊の連中とガチガチに喧嘩してたおかげで、国土がボロボロにされた。


 そしたら姫さん、共和国のスパイ連中にさらに食糧状況が悪化するよう、共和国議会に工作かけて、皇国への相互援助打ち切らせたらしい。


 そうなりゃ、人口が多い皇国でどうなるかは、考えるまでもねえ。

 たった1年で、飢餓と内乱で酷い有様になったらしい。


 あとは、頃合い見計らって王国は皇国に食糧援助するって名目で、和平結んだんだと。

 皇国の皇帝、和平の調停式で民のためだって、涙流してたらしいよ。

 しかも、それだけの高スペックなら王国が工作してたのも、多分知ってて和平結んだんだろうな。


 そりゃあさ、恨まれるよ。

 マジでこの姫はサイコパスだ。



 そして、一応人類側の範囲にも入るし、精霊界さん管轄の亜人種国家。


 人類よりも長命だが、少子化に悩まされた挙句に、亜人種同士がすげー険悪ときてるらしい。


 大陸南側のトワの大森林にはエルフの王国と、大森林西側には、エルフ王国との緩衝地帯の山脈挟んで、山くりぬいてできたドワーフ王国、そして平原のホビット国がある。


 亜人同士でも今現在、絶賛戦争中とのこと。


 この仁義もねえ世界さ、魔王軍と立ち向かうとかそんな気がねえだろ?


 せっかく俺様が、降臨したのにアホらし。

 そりゃあ神も、救う気が失せちまうって。


 そしてアルフランド大陸の東は、大海原挟んで超大陸がある。


 だが魔界の侵攻が進んで、モンスターが血で血を洗う魔境、通称東の魔大陸と呼ばれ、人類種の生存が絶望視されている。


 完全に魔境と化して、魔王軍もモンスターの制御不能に陥って、放置状態らしい。


 ポンコツのアスモデウスらしいな。

 てめーのとこの、畜生も満足にしつけが出来ねえのかっての。


 南の氷の大陸は、そもそも人が住んでねえ。

 現在は、魔王軍総司令本部が置かれてる筈。


 アルフランド大陸西にも、海挟んで大陸があるらしいが、まったく謎。

 海から入ろうとしたら、船ごと消えちまうからわからねえんだとさ。


 トワイライトゾーンや、バミューダトライアングルかってんだよ、おっかねえ話だぜ全く。


 これが、この世界の現状。

 

 しかし俺が加わる事で、情勢を変えるとすると。


「なあ、これはよお。教会抱き込んで、俺という存在を世界中で知らしめて、王国のあんた中心に、魔王軍対策打ち出して、世界をある程度一つの方向にまとめた方がいいんじゃね?」


 俺はアレクシアに提案する。

 これは、極道だった時の俺の経験上の話。


 子分のヤスの提案もあったが、改正暴対法による警察(サツ)の取締りの影響を脅威に感じた、俺達極悪組が、音頭とって対策ガイドラインを発表し、冷戦や敵対してる九州や広島、東京の組織連中にも、抗争や冷戦状態は一時中止して、日本の極道全体の共存共栄をうたった件と似ている。


 そして、このガイドラインがうまくいけば、俺の極悪組が、日本全国の極道の模範を示したとして、日本の極道を統一出来る仕掛けでもあった。


 だが、俺の不細工な不手際と欲目で、結局極悪組が内部分裂して、ヤスにぶっ殺されたけど。


 そう、問題は、俺という存在が出てきた事で、それを利用しようとする人類連中の、足の引っ張りあいと、俺の暗殺の可能性。


 100年前の救世主、髭で長髪の先輩の二の舞は、絶対にゴメンだ。


「ええ、勇者様のおっしゃる案素晴らしいです。ですが、魔王軍も甘くないです。ここ人類側に、魔王軍のスパイが紛れてますから。王国にも、教会にも、共和国にも、おそらく皇国にも。だから、人類は一枚岩になれないのです」


「なん……だと」


 おいおい、そこまでダメダメかよこの世界。

 ていうか何で……。


「何でそんな事、あんたが知ってんだい?」


 俺が聞くと、アレクシアはニコリと笑う。


「ええ、この国の国王、魔王軍幹部ですから」


 はあああああああああ?

 あのアホの国王、人間じゃねえのかよ。

 ていうかこの王女も人間じゃ……。


「ご安心ください、私は人間ですよ。国王に入れ替わっているのです。本物の国王はもう殺されてるでしょう」


 あ、そう?

 俺はコイツが、同じ人間かどうかも怪しく思ってるけど。


「ただ、あの青い月が無くなった瞬間から、魔王軍は統制を失ってる様子。国王に化けてる魔王軍幹部も、かなり混乱してます。それに何やら魔王軍も一枚岩でない様子ですし」


 ああ、ヤミーと俺が最初、参謀本部のある前線基地を跡形も無く吹っ飛ばしたからな。


「私、あの間抜けの悪魔から、情報を引き出してますが、あの悪魔の名はバフォメット、魔王軍の将軍」


 マジか。

 将校最弱レベルのオークデーモンに、あんなに苦戦したんだから、将軍クラスだと、やべえな。

 

 今の俺じゃ、勝てるかどうか怪しい。

 倒すには、王国の最大限の攻撃戦力が最低条件だろうし、魔王軍の停戦協定もあるから、もし表立っておっ始めれば、魔王軍と全面戦争になりかねない。


 まいったぜ。

 弱きを助け、強きを挫くなんて俺はうたってたが、今回は条件が悪すぎる。


 いや、待てよ。


「なあ、姫さんよお。俺は魔王軍総司令官元帥の、アスモデウスとは停戦協定を結び、確か前線基地があるって言う青い月から、総司令本部を隣の氷の大陸に移し、部下に召集命令かけた筈」


 今までの薄っぺらい微笑みを消して、アレクシアは俺の言葉に、真剣に耳を傾ける。


「だが、おかしくねえか? その後、俺が公爵の件でケジメつけた魔王軍のチンピラが、商人に化けて奴隷商やってたり、将軍クラスが、国王に化けて召集命令応じてなかったり、軍の統制全然取れてねえ。軍規違反ってやつだろ?」


 俺が言うと、アレクシアの顔もハッとする。

 コイツも何かに気がついたようだ。

 この姫さんも、人間らしい表情すれば、絶世の美少女なのにと俺は思った。


 そうだよ。

 どこの国の軍隊も、極道社会でも、上の召集命令聞けねえ奴は、ケジメ案件だ。


 戦争中だったら、上役から鉛玉食らっても文句言えねえ。

 

 つまり、魔王軍内部で軍旗違反が横行してる。

 組織の規律やモラルがガタガタ。

 もしくは、元帥のアスモデウスの命令をあえて無視している、跳ねっ返りがいる。


 いいねえ、付け入る隙が出てきた。


「勇者様、魔王軍の構成とか、手掛かりになる情報ってございません?」


 今まで得た情報を、アレクシアに説明する。

 軍の構成、親分の名前、そして悪魔達の特徴。

 そして、アスモデウスから得た情報。


「さすが勇者様ですわ。そこまで情報を入手してくるなんて。これなら私の仕掛けも色々と実行すれば、何とかなりそう。それに国王に化けてる魔王軍幹部も、勇者様が倒して魔王軍の軍規違反について糾弾し、さらに有利な条件を取り付ける。そしてその功績を各国に伝えれば、魔王軍にも各国にも、王国が優位に立てる。そして私は女王になり、マサヨシ様と結ばれて……ああ、素晴らしい」


 おいコラ。

 俺はおめーさんと結ばれる気はねえ。

 なんか、目がうっとりと、してやがるみてえだが。


 しかし、この姫は女としての独占欲が半端じゃ無く強くて、周りや身内にも冷淡すぎる。


 もしかして、コイツ俺のおふくろの転生体か?


 転生前、俺を満足に愛せず、男からの愛に飢えた挙句に、最後はシャブに溺れ、俺にも捨てられ、孤独に自殺したおふくろ。


 確かに俺のイケメン振りは、おふくろの遺伝で激マブよ。

 けれど、おふくろは母親失格だった。

 

 俺を愛するために業まみれで転生したのか?


 あり得る話だ。


 まあ、こっちの世界では、俺はコイツの腹からオギャーと生まれたわけでもねえし、生まれや育ちも人種も違うし、いい香りする天使のような美少女のお姫さんで、惚れてんなら別に抱いてやってもいいけど。


 いや、やっぱ無理だわ。

 サイコパスだものコイツ。

 まあ、義理も出来たし、俺の業に引き寄せられて、救いを求める魂ならば、救済方法を考えなきゃ。


 そしてまだ、大掛かりな仕掛けをするには、俺もコイツも不完全な事がある。


「この仕掛けをやるには、俺もまだ戦力不足だし、そちらさんの準備も足りねえ。違うか?」


「ええ、まことに遺憾ながらその通りです。期間は今から1ヶ月後」


「は? 何それ短くね? 準備期間」


 俺の指摘を無視して、アレクシアは話を続ける。


「私の誕生日に合わせて、勇者様の歓迎式典を実施します。王都に王国中の騎士団を招集し、軍事パレードを実施しましょう。戦力を集結させた後、魔王軍バフォメットを討つ」


 ああなるほど、その説明なら戦力を集結しやすいし、筋は通るな。


「その間に、勇者様には戦力をその間整えていただきます。そうですね、亜人種を、勇者様の仲間に入れてくるのはどうでしょう?」


「ほう? なぜ亜人種を?」


 正直俺は、亜人に関しては詳しくない。

 お互い住んでる文化圏が違うからだ。

 知ってる事と言えば、精霊の加護があれば、亜人と人間は婚姻と子供をもうけることは可能だし、この世界の人間は純粋な人間種ではなく、亜人と人類の子孫であるという伝説が残っている。

 

 それと精霊魔法は、亜人連中しか使えないらしい。

 あと、エルフの女連中は超絶マブい女ばかりだという話。

 いいなあ、それ名目でもちょっと立ち寄って、口説いてコマしてやろうか。


「亜人には、通常の人類にはない強い力があります」


 アレクシアは亜人について、説明をし始めた。

 この国の王家に伝わる話を。 

後編に続きます。

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