表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第一章 仁義なき異世界転生
20/163

第19話 マブい女 

「お主、さてはとうとう頭がおかしくなったのか? あ、元からじゃったか」


 ヤミーが憐みの目で俺を見つめる。

 うるせえ馬鹿野郎。

 ていうか、今はこいつとバカやってる時間はねえ!


「頼むよ、悪魔野郎の(たま)取るのに必要なんだ!」

「お主、本気で言っとるのか?」

「おう、持ってんだろう? 道具をよ。頼む」


 俺が言うと、ヤミーは顔を真っ赤にしやがった。

 知ってるぜ? おめーさんの秘密。

 ちんちくりんのくせに、俺の目盗んでは、テメーが持ってきた頭陀袋から化粧道具取り出して、鏡見ながら口紅つけて、眉毛イジってファンデーションつけやがって化粧の練習してるのを。


 化粧品の臭いなんか、男からすりゃあ一発でわかんだよ馬鹿野郎。

 

 馬車走らせてやがる時だって、暗い中でマニュキュア変えてやがっただろうが。


 で、俺が気が付いてねえフリして馬車の荷台をちらりと見ると、テンパって隠そうとしたのか、ファンデーションで顔真っ白になってやがるし。

 

 色気づきやがる年頃なのはわかるが、もうちっと時と場所考えろや。

 

 馬車乗ってるときにそのツラ見て、俺がとぼけて


「なんか感じ変わった?」


 とかいったら、ドヤ顔で頬染めやがって馬鹿野郎。

 

 褒めてねえよ、おめーさんくらいの年頃は何もつけてねー方が一番いいんだ。

 

 18過ぎた大人の女が身に付けりゃあいいんだ、そんな技は。

 

 そんなガキの時から化粧やってやがると、将来ロクな女になりやがらねえぞ?


 そんでそういう馬鹿女に限って、夜の盛場でぶらついて、たちの悪い男に目をつけられんのよ、俺みてえなヤクザ もんとかにさ。


 そんなわけで俺はヤミーから化粧をされる。


「おう、急いでるから早くやれや!」

「わかっとるわい! ここをこうして、ぷっ、あはははは」

「まじめにやれこの野郎!」


 待つこと10分。

 急いでるのに、時間が無駄に経過する。


「どうじゃ! 会心の出来じゃぞ?」


 嘘くせえ。

 ポケットに入れた手鏡を見てみようか。


「うわぁ」

 

 俺はあまりの出来栄えに声を漏らす。

 顔面真っ白で、唇に雑な真っ赤なルージュ、そして申し訳程度の眉書き。

 

 ああこれはアレだわ、俺の組事務所に置いてた、おたふくのお面だわ。

 

 もしくは場末の風俗嬢みてーな安っぽい感じ。

 ガキの美的センス信用したのが間違いだった。


「……もういい、自分でやる。道具かせ!」


 俺も若いから、肌の張りや化粧のノリはそこらのホステスやキャバ嬢よりいい筈。

 

 ちくしょう、鏡見ながら化粧するのってクソ難しいな。

 世の女共は、こんな苦行をよくもまあこなしてやがる。


 だが、転生前にどんだけ夜の女を見てきたと思ってんだい!

 俺の理想のマブい(すけ)を今夜ここで実現させてやるぜ!

 薄暗いから、少し濃くして、だいたい化粧はこんなもんか。

 

 時間にして15分くらいか?

 やべぇ、どんどん空が明るくなってきやがった。


「どうだい?」


 ヤミーに見せると、奴の顔が一瞬固まった。

 

「すごいのお主。どうやったんじゃ?」


 そうだろう?

 化粧ってのは、こうすんだぜ。


「すごい、まるで神界にいる名だたる女神のようじゃ」


 意外と俺も、化粧映えするみてえで、ガキが見てもこのセンスは通じるようだ。

 どうせなら、この僧侶服も変えたいがそこは(ペテン)の働かせ方だな。


 後は最後の仕上げ。

 

「おうヤミーよ、俺の髪の毛の結び外せ」


 ヤミーは、俺が雑に結んだ後ろ毛の結び目を解く。


「おぉ、今のお主を見ればビシュヌ様や、ラクシュミ様もビックリするじゃろうな。我の憧れのイシス様や、ヤカミヒメ様や、イシュタル様程ではないがのう」

 

 そらそうだろうよ。

 ていうか比較対象がいまいちわからんが、女神がビックリするくれえかよすげーな。

 

 俺は鏡を見ると、黒髪のロングヘアーの見眼麗しい俺好みの超マブイ女になってやがった。

 

 だがよ、言っとくが俺はホモでもアンコでもねえからな。


 ああ、アンコってのはあれだ。

 お侍さん達のいた時代は修道っていうあれ。

 あれの女役よ。

 

 例えば刑務所(ムショ)みてえな、女っ気のかけらもねえような、閉鎖的な環境にずっといるとよ、女が恋しくなるわけさ。


 それで、男役。

 まあカッパって言うんだが、女役のアンコと看守(せんせい)の目を盗んで、男女の関係になっちまう事を言うわけ。


 ちなみに、俺の組含めた全国の極道社会は、それらの行為は一切禁止だ。


 なんでかって?

 だって考えてもみろ。

 まずみっともねえし、気持ち悪いし、男としての格好がつかねえだろうが。


 そりゃあ男が惚れる男の中の男を目指し、男を売るのがヤクザ 稼業だが、実際に親分子分や兄弟分でそんな事してるなんて噂されてみろよ?

 

 世間様から、同性愛(ホモ)の集団で気持ち悪いって、後ろ指指されて肩身が狭い思いをするだろ。


 つっても最近の世間じゃLGBTだっけ?

 プロレス技みてえな名前のやつ。

 何の風の吹き回しかは知らねえが、そういうもんに理解を示そうとか言ってやがるし、社会はそうやって変化して進歩していくから、俺の考えも古臭くなってるかもしれねえけど。


 まあ、実際ヤクザ は親分兄貴分に尽くしたい、子分弟分を可愛がりたい恰好つけたい、みたいな感じで、精神的にはホモの集まりかもわかんねえけどさ。


 俺のヤスなんてもうその辺凄くてよお、俺が女と一緒にいようもんなら、それだけで焼きもち焼いて不機嫌になりやがったり、あの野郎は俺がアレ欲しいって言う前に、何でも揃えてきちまうんだ。


 そんでたまには女の夜の風呂関係なく、男同士で一緒に風呂でも入りに行こうやって言うと、お互いジジイになっても、若い時と同様、目を輝かせて二つ返事でついてきて、背中流してくれるんだぜ?


 可愛いもんだろ?

 あいつみてーな、気合い入った親分兄貴分思いの、舎弟や子分なんてなかなかいなかったぜ。


 だから親分は、そんな可愛い子分のためになんとかしてやろうって情や気力が湧くわけさ。


 まあその可愛い子分に殺されちまったけど。


 それに男を売るのに、実際に男娼みてえに男売ってどうするよ。

 男に惚れる惚れねえじゃなくて、掘ってどうすんだっての。


 だから俺の組じゃ、役職問わずそういう変態ヤローがいたら、有無を言わさず破門よ破門。

 

 まあそんな話はいいや。

 今急いでるし。


「あとは、適当に香水振りかけとけ。いや、それも俺がやる」


 香水の付け方も慣れたもんだ。

 稼業上、親分に丸一日くっついたり、一晩中喧嘩したり、おまわりにいきなりとっ捕まって、話がつくまで何日もブタ箱ぶち込まれたり、抗争で組事務所に一晩以上いたりして、満足に風呂にも入れねえ夜もある。


 そんな中で、風呂入ってねえようなアレの臭い。

 くせえプータローみてえな臭いさせたらカッコ悪いだろ?

 

 そして、ヤミーからもらったコロンを手ににじませ、耳元にサラッとつける。

 

 香水はあんまりかけると不快だし臭い。

 これに気が付がつかねえ女が世にどれだけいるか。

 隣で飲む男の事考えろっての。


「ふむ、こうやればいいのかの」


 なんか頭陀袋からノートとペン取り出して、メモしてるガキがいやがるが、こいつくらいの年頃にはもっと学ぶべきことがあるだろうに。

 

 俺も人様のこと言えねえが。


「いや、おめーにこのコロン似合わんぞ! ない方がいい」

「なんでじゃ! 神界の女神ファッション誌や、天界の天使コスメにも載っておったのに!」


 俺が言うと、ヤミーの耳が赤くなる。

 さっきの化粧といい、神界とやらで流行りのスイーツの情報が書いてる、ガキ相手の雑なファッション誌でも見て背伸びしたんだろう。

 

 これだからこの年頃のガキは困るぜ。


「おめーはよお、まだ背伸びする必要はねえ。今のままが一番綺麗だぜ」


 俺が言うと、ヤミーの顔が赤くなってプイと目をそらす。


 元がいいなら小細工なくても、男受けはいい。

 そんな事より性根腐った内面を磨けってんだ。


「よっしゃ、後はこの乾パンで!」

 

 俺は、盗賊共の水が入った瓶に乾パンを入れて、瓶の口にハンカチを組み合わせる。

 ついでに聖水の空き瓶も利用させてもうらうぜ。

 あとは中の菌を発酵させまくるイメージじで、神霊魔法を加えてと。

 うわ、臭! 酒臭!

 

 そして俺は魔力を高める。

 左手に火をイメージして微調整して蒸留し、あとはハンカチを伝ったアルコールを、右手の風魔法で冷やして、空瓶に入り込むようにっと。


 んー香りがいまいちだな。

 とりあえず香水瓶の中身もぶち込んどこう。


 おっしゃ、以外にも魔力消費も少なくていい感じだぜ。

 俺様特性の鬼殺し密造酒完成よ。

 俺も酒で、何人の女を泣かせてきたか。

 それに色々試せば、今後この世界で、俺様のシノギにも使えそうだぜ。


 まあいいや。

 もう時間的余裕はねえ。


「おう、てめーら! 村を案内しろい!」


 俺は小瓶を携える麗しの乙女となっていた。

 ヤミーが見ても女神の様に見えたといううお墨付きよ。

 

 盗賊野郎共も一瞬見とれて呆ける。


「グズグズすんな! あとおめーらのナイフと耳貸せ!」


 俺は盗賊共に今後のプランを話してやった。

 そして、村へ向けて馬車を進める。


 先導と馬車の運転は盗賊共にやらせ、俺とヤミーは馬車の荷台へ姿を隠す。

 

 村には見張りの盗賊共がいて、俺が恫喝(くんろく)した指示役の盗賊が事情を説明する。


「へえ、その僧侶の野郎は、隙を見てぶっ殺したのか」


「ああ、それに馬車にもう1人、僧侶服を着て、男に偽装したべっぴんが隠れていたから、これから親分に献上するんだ。しかもあの僧侶のガキ、生意気に酒なんかも持ってたし」


「おお、これなら恩賞出て、久々にかかあやガキに会える」


 よし、うまく行きやがった。

 村の中の様子は……。

 うわぁ、ゴブリンやオーガだらけじゃねえか。

 目に見えるだけでも、50匹以上はいやがる。

 こいつらが盗賊と一緒に、街道で湧いてきやがってたら、俺の旅がゲームオーバーだったぜ。

 

 ゴブリンは緑色の小鬼のモンスターで、雑魚だがすばしっこく、集団でかかってきて小賢しいので、舐めてたら囲まれてヘタすりゃ死ぬ。


 オーガは、大人の男よりもやや大きい青い鬼で、とろくて馬鹿だが、力が物凄く強いので、舐めて戦ってると攻撃受けてヘタすりゃ死ぬ。

 

 うん、真正面から襲撃かけてたら死んでたな。

 危ねえ、危ねえ。

 奴らの相手は最後にしよう。


 馬車は村外れの屋敷の前を通る。

 あそこが親玉の住処か?

 

 チッ、石造りの豪邸に、広い庭付きねえ。

 まるで一丁前の親分の邸宅みてえだ。

 クソ生意気にでかい家に住みやがって。

 

 庭には布一枚着させられた女共やガキらがいて、人質にされてやがる。

 

 しかも雑な鎖を首につけられて……。

 

 酷え事しやががる! これじゃあまるで畜生だ!

 女子供をなんだと思ってんだ!

 

 そりゃあ転生前の俺や組の連中も、散々カタギさんの茶碗に手を突っ込んで悪いことばっかりしてきたから、そんな事を思う資格はねえかも知れねえよ。

 

 女子供の弱み握って脅した警察(サツ)連中や裁判官だの、ヤクザ 連中もいた。

 

 俺や俺の組のせいで、女子供が不幸になったなんて話だってごまんとあったよ。

 

 だが今になって、俺や組からやられた連中の気持ちが痛いほどわかる。

 

 コレやられると抵抗する気も失せるから、この村の盗賊連中の気持ちがよくわかるよ。

 弱みを握られて、飼い殺しになっちまうんだ。

 自分の命よりも大事な、家族の生き死にがかかると、人は畜生に堕ちる。

 そして、人間としての誇りや感情も無くなっちまう。

 

 だから俺は夫婦所帯や実子なんて持たなかった。

 相手からこれやられたら、隙ができるからな。

 こういう親分衆は結構いる。

 

 だけどさ、本来こんなの人間の生き方じゃねえ。

 人間は誰かを愛し愛されるために生まれる。

 そしてその思いを次世代に繋げんだ。


 今になって俺が、そんなこと思うのは今更すぎるかもしれん。

 馬鹿は死ななきゃ治らねえ、なんてよく言ったもんだぜ。


 そして、転生前にヤクザな生き方した俺でもよ。

 こんなもん見せられて、黙ってる野郎は男じゃねえや!

 

 転生前さんざん、人様の気持ちを踏みにじり、外道と言われて死んだ俺。

 そんな俺だが、人間の魂だけはかろうじて踏ん張ってる。


 その魂が俺に言うんだ、こんな非道は許しちゃおけねえって。 

 だからこれはある意味、転生前の罪滅ぼしよ。

 俺がこの世界を救うためのな。


「親分にお目通り願いやす! 酒と美しい女を連れてきやした!」

 

 馬車が豚野郎の屋敷の前に止まる。

 盗賊の指示役が声をかけると、玄関前に色気のなさそうな女共や、目つきがすさんだガキ共が出てくる。


「おいヤミー。馬車の盗賊連中には話通ってるから来なくていいぞ」


 俺は小声で言うと、馬車を降りる。

 よし、後は中に入って豚野郎にお目通りだ。

 あとは服の中に隠し持ったナイフでっと。


 外道が、これからけじめつけてやるぜ。

 俺はこれがやりてえから転生したんだ。

 弱きを助け、強きを挫く任侠道。


 健さんみてえによ、我慢を溜めて溜めて最後の最後で、野郎に俺の男を見せてやる。


 今回の絵図(プラン)は古き良き神話方式で行く。

 

 例えば、極道の世界で欠かせねえ杯事。

 まあ結婚式みてーなもんだな。

 男と女が神前で誓いをたてる方式が結婚式ならば、この盃事は神前で親兄弟子分の誓いを立てる。


 吉日に祭壇作って、仲人の媒酌人の前で、杯を交わすのが昔からの伝統だ。


 俺も何度もやったし、媒酌人も務め上げた。

 大きな組織になればなるほど、男を上げれば上げるほどこうした義理ごとは増えていく。

 

 で、杯事は親分になるのに知識は必須。

 

 例えば若い衆なんて、まだ物をよく知らねえから、


「神前の神さんがどんな神様で、どういう神話や逸話あるんですか?」

 

 なんて聞かれたとする。

 親分兄貴分が答えられねえと恥ずかしいだろ。


 だから、日本神話はよーく勉強した。

 結構神話ってエゲツない話多くて、今回はスサノオさんやヤマトタケルさんがやった手法を真似させてもらう。


 女に化けて酒かっくらわせて首を獲る。

 見てろよ豚野郎!


 俺は馬車から降りて女子供の前に姿を表すと、皆が皆俺の方を見て惚ける。


 成功の確率を上げるには俺1人が一番いい。

 ヤミーには馬車で待っててもらう。


 それに変装は完璧だ。

 この僧侶服がちと不安だが、なんとか適当にペテン仕掛けて話を合わせてやろう。


「それではお美しい女性の方、こちらへ」


 村の年寄り女が言った。


「お、出迎えと案内ご苦労じゃの」


 ん?

 いやちょっと待て。

 なんでお前も馬車降りてんの?


「何してるのじゃ? 美しいレディは二人じゃぞ」


 ヤミーは俺を見て親指立ててこっち見てきた。


 だぁぁぁかぁぁぁらぁぁぁ。

 なんでオメーが来るんだよおおおおお。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ