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仁義なき異世界転生 ~勇者マサヨシの任侠伝~  作者: 風来坊 章
第一章 仁義なき異世界転生
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第14話 不幸な事故

 テントを出るとレオーネが審問官共に命令を下し、教会前の広い野原で俺と相対した。

 俺とレオーネの周囲を審問官共が取り囲み、逃げ場がない状況。

 ヤミーは審問官共の前で、ちょこんとしゃがみ込んでこちらをじっと見ている。


 しかし参ったな、この小僧やる気満々で(どーぐ)とか持ってやがるよ。

 あれは西洋剣で言う所のだんびら、片手で使うブロードソードってやつか?

 刃渡りが短い、60センチくらいだな。


 でも冷静になれよ俺、ここでこの貴族(アホ)の小僧をボコボコにしちまったら……。

 多分俺は、ヤミーと一緒に囲んでる審問官共に殺される流れだな。


 さて、どうしたものか。

 こいつにわざと負けてやっても、嘘の報告をしたとか言って殺させちまうかもしれんし。


 あああああああああああ、早く旅立ちてええええええ。

 一刻も早くこんなクズ共から、おさらばしてええええええ。


「どうした? おじけづいたのか? 剣を貸してやるからそれでかかってきてもいいのだぞ?」

「いえ、もしもお体を万が一傷つけてしまいましたら、私めの命では贖えません」


 この人斬りマサ様をなめやがって小僧が。

 俺が剣なんか持ったら、てめーをうっかり斬り殺しちまうだろうがバカヤロー。


「お前に万が一などない、剣を取れ平民出のクズが」


 あー、どうしたもんかねえこの状況。

 審問官共も、面白がって俺に鞘付きの剣とか渡してきやがったし。

 貴族に平民が殺されるのが、娯楽の一つみてえな感じだな。

 本当に、仁義もへったくれもねえクソみてえな野蛮な世界だぜここは。


 じゃあ一つ文明人らしく、俺が芸でもしてやるか。


「それではお手合わせの前に、この神父見習いマサヨシが、芸を皆様に御覧いたしましょう」


 鞘から軽く剣を抜くと、どうやら本当に真剣みてえだ。

 すぐに俺は鞘に剣を戻す。

 この剣が竹光だとか偽物だったら、今からする芸がただのギャグになるからな。

 それと鞘と剣の相性なんかも見たが、日本刀よりもやりづれえから難しいかもしれん。


「芸とは何だ? 剣を交える前に見てみようではないか!」

「はい! そこの畑に野菜がありますので、引き抜いて私めの体に投げてみてください」


 すると、レオーネは露骨に嫌そうな顔をして、審問官の一人にアゴで指図する。

 土に触りたくねえし、マンドラゴラは嫌って感じだなこのお貴族様は。


 すると、審問官に引き抜かれた野菜は悲鳴を上げ………ない。

 あのクソむかつくマンゴラドラは、太陽が出てからただのカブみてーな野菜へと姿を変えていた。

 これも、ヤミーが吹っ飛ばしたあの青い月が悪さしてたんだろう。


「世界で怪異が起きてるのは、やはり悪魔の仕業のようだ。勇者である私が世界を救って見せよう」


 得意げに自分を勇者だとか言っちゃって、恥ずかしくねえのかこのガキ。

 親からどんな教育されてきたんだよ、このボケは。

 いや、この世界の貴族出身だからどうせ親もクズだわ。


 それとレオーネとやら、テメーじゃ無理だよ。

 だって、剣の持ち方一つで俺わかっちゃうからさ。

 こいつ多分素人でクソ弱い。

 今まで、武器を持たない平民イジメて楽しんでたクチだろうぜ。


「さて、芸とやらを見せてもらおうか平民」


 大物垂れやがってクソ雑魚のくせにと思いつつ、俺はその場で正座をする。

 レオーネが左手を上げると、10メートルほど離れた畑にいた審問官が振りかぶって、投げた。


「!?」


 ちょ、はええええええええ、こいつら神霊系の強化魔法使ってやがるのか?

 まるでメジャーリーガーみてえな豪速球で、野菜を投げつけてきやがった。

 たぶん、あの小僧よりこいつらのほうが強いぞ、だが。


 俺は最小限度の動きで立ち上がると、鞘から剣を抜刀し、野菜を一刀両断にして切って捨てた。


「つまらぬものを切ってしまった芸、お許しください」


 俺はレオーネと審問官共に頭を下げ、クソお上品なおじぎをする。

 ヤミーは俺を見ておーとか言いながら、ぺちぺち拍手して審問官共はポカーンとした顔をする。

 レオーネはまるで、信じられない曲芸を目の当たりにした感じで俺を見てやがる。


 当然だろ。

 俺一応転生前は、夢想神伝流居合道をシノギの合間にやってて、5段持ってたんだから。

 偽名使ってたから、社会的に無効だけど。

 習った先生から、筋がいい、まるで人を斬ってきた達人のようだって褒められたよ。

 まあ実際抗争(けんか)で何10人もぶった斬ってたから、俺苦笑いしたけどね。


 すると、レオーネが左手を前に突き出すような構えをして、俺の視界から一瞬消えた。


「へ?」


 やつが一瞬で俺の間合いまで入り込んで、超スピードの袈裟切りを放った。

 爆音みたいな風切り音で、俺の体が浮きそうになるが、神霊魔法で一瞬強化して何とか一撃をかわす。

 この野郎、剣の振り方はど素人だが肉体レベルが無茶苦茶高い。

 人は見かけにはよらねえって言うが、こいつかなりの手練れじゃねえか。

 やべえな、俺が勝てるかどうか怪しくなってきたわ。


「平民のくせに私の剣撃をかわすとは!」


 今度は大上段に構えて、レオーネは剣を振るった。

 悪魔と違って人間相手だったら、筋肉の動きと視線や気配から、なんとか予備動作ができる。

 だが予想以上に動きが素早く、俺はかろうじて頬の皮一枚で一撃をかわす。

 すると、今度は俺の足元が剣の風圧で地面ごと爆せやがった。

 俺は、冷や汗かきながらレオーネから慌てて距離を取る。


「お褒めあずかり恐悦至極」


 俺も負けじと大物感を出そうとするが、さっきから嫌な冷や汗が止まらねえ。

 たぶん肉体強化だけじゃない、何か別の技も使ってやがる。


「小癪な!」


 レオーネは次々と剣を振るい、そのたびに俺も何とかかわすが、考える暇も与えてくれねえ。


「これならどうだ! 空間列斬(エアスラッシュ)!」


 レオーネは魔力を集中させて、距離を取って離れた俺に剣を振りかぶる。

 何かわからんがやべえと直感した俺は、咄嗟の足さばきで半身になった。

 すると、俺がいた位置まで風切り音がして地面ごとぶった切れる。


 間違いねえ、こいつ多分肉体と風魔法を強化しまくって攻撃してやがる。

 なるほど魔法には、あんな使い道もあるのか。

 さて、じゃあ俺は。


 剣を鞘にしまい込み、さらにレオーネから足さばきで距離を取った。


「馬鹿め、臆したか平民め!」


 レオーネが俺を煽ってきやがるが、俺はこの一太刀に集中させる。

 ちくしょう、魔力コントロールがかなり難しいぞ。

 あれだ、剣撃に風魔法を乗せるイメージで……。


「おらぁ!」

「馬鹿め、お前の剣など届かぬ距離だ!」


 狙いはテメーじゃねえよ、この貴族(アホ)めが。

 レオーネの近くに生えてた木に向けて、抜刀して居合を放つと木に横一直線に切れ込みが入る。

 すると木がめきめきと音を立て切断され、俺とレオーネの間を遮るようにして倒木した。


「お戯れはこれくらいでよろしいかと、聖騎士様」


 俺がレオーネにクソ丁寧でお上品なおじぎをすると、審問官共が呆気にとられる。

 すると、一人二人と審問官共が拍手し始め、最終的に拍手喝さい状態となった。


 レオーネは自分の得意技を看破され、審問官達が俺に向けて拍手してるから立場がない。

 貴族にあるまじき醜態をさらしていると気が付いたのか、顔面が真っ赤になってやがる。

 ざまあみやがれってんだクソボケ小僧が。

 それにこんな小僧でも、殺せば得々ポイントがマイナスになるだろうし、閻魔大王様に感謝しろ。


「しかしすげえかっこいい技ができたな、名付けて真空居合斬とでもしとこうか」


 俺は誰にも聞こえないようにボソリと独り言ちた。


「おお、マサヨシよ! 今のハヤブサ切りすごいのう!」


 ヤミーが今の戦いを、まるで他人事のように見つめつつ、勝手に俺の技を名付ける。

 ちげえよ馬鹿野郎、真空居合斬だよって言おうと思ったがやめとこう、めんどくせえから。


「しかしあの自称勇者の白いの! ざまあないのう、ぶははははははは!」


 ヤミーはレオーネを指さして大爆笑する。


「しかも、もう生きてけないって顔しとるし! 死ねばいいのにあはははは!」


 おいいいいいいいい、こいつやっぱどSだわあああああ。

 ただでさえ、貴族としても聖騎士としても立場がねえこいつを、煽るか普通さあ。

 やべえよ、せっかく俺がうまいことまとめようとしてたのに、これじゃ……。


「クッ下郎どもめ、叩ききってくれる!」


 だよなあ、だよなあ、そうなるよなあ?

 ていうか、半べそかきながら剣構えてるし、この小僧ただのガキじゃねえか。


「聖騎士様、やはりこの神父見習いは悪魔討伐者に間違いありません!」

「これ以上はもうやめましょう! 我ら教会は大事な人材を失う羽目に!」

「貴族のくせに無様じゃの!」

「それにこの者からの、情報収集や裏付けもまだです!」


 口々に審問官達からレオーネへの非難の声が上がる。

 ていうか、その中にサラッと混じって毒吐いてんじゃねえよドSめ。


「うるさい! 邪魔だてするならば、お前達全員処刑だぁぁぁぁぁ」


 うわぁ、逆上して魔力全開にして全員処刑宣言出しやがったこの貴族(アホ)

 おいヤミー、おめーさんこのアホ見て、何をそんな哀れんだ顔してやがるんだ?

 おめーもコイツと同類だったんだぞ!


「これ以上はおやめください聖騎士様。それでも貴方は神の使徒ですか?」


 と俺が言っても、完全に逆上して聞く耳持たねえか。

 仕方ねえ、このアホ相手に難しいが、アゴか金玉に一撃入れて昏倒でもしてもらおう。

 いや、柔術で投げ飛ばして抑え込んだほうがいいかな。


 俺は剣を捨て、徒手空拳(すでゴロ)の構えを取った。

 そして、気合を込めてこの野郎を睨みつける。

 すると、ほんのわずかな隙ができたようで、一瞬ビビったようだ。


「くそぉぉぉぉぉ、しねぇぇぇ、この平民がぁぁぁぁ」

 

 だがレオーネは目を吊り上げて、剣を構えて踏み込んできた。

 まずい、さっき戦った時よりもスピードが速い!

 

 やべえな殺されるかも。

 素手の喧嘩は下手じゃねえけど、得意って程でもねえがしょうがねえ。

 俺が覚悟を決めたその時だった。


「!?」

 

 俺の間合いに入った瞬間、レオーネは俺が切り飛ばした木の幹に足をつっかけた。


「へ?」

「あ」

「ほお?」


 その場にいた全員が思わず声を漏らし、そして全員が予想だにしなかっただろう。

 けっつまずいたレオーネは、地面に顔面を強打して首がおかしな方向にねじ曲がり、勢いよく俺の横をゴロゴロと転がっていく。


 そして派手に20メートル以上回転しながら転がった後、ようやくうつ伏せになって動きが止まった。

 レオーネは、体中の関節が、あらぬ方向に曲がってしまってる。

 まるで、プラモデルの組み立てを失敗したみたいに。


「聖騎士様ああああああああ」


 審問官達が倒れたレオーネに駆け寄り、全員で回復魔法(ヒール)を唱えだした。

 外傷は治ったが、一番年長の審問官がレオーネの脈に手をかけると、青い顔で首を横に振った。


「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない」


 ヤミーがほくそ笑みながらレオーネの亡骸に対して呟く。

 言ってる場合かよおおおおおおおお。

 ていうかあの貴族(あほ)、自分の足元くれえ見て喧嘩しやがれ馬鹿野郎おおおお。

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