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【第九話】「午前三時の笑い声」

 夜。


「店手伝ってくれたし弟の面倒も見てくれたから、今日も泊まってっていいよ。私もそのほうが助かるし」

 ミヤのその言葉に甘えてルリアはベッドの中にいた。


 そして今日一日の出来事を振り返る。

(たった一日でこんなにいろんなことが起きるなんて……。いろいろあったけど楽しかったなぁ。でも、あの言葉はちょっと引っかかるな)


 ルリアは、ミヤの店にやってきた宝石女こと隣の店主の言葉を回想していた。

 やはり「トドメ」という言葉がどうも気になった。


 その後ウトウトして眠りに入ったが、再び目を覚ました。

 月明かりに照らされる壁掛け時計を見る。

(もうすぐ三時……か。ちょっと、散歩でもしようかな……。なんか嫌な予感もするし……)


 ルリアはベッドから出た。


***


 外の心地よいひんやりとした空気に深呼吸しつつ、ミヤの店のある商店街まで歩くことにした。

 月明かりと、ぽつりぽつりと不規則に配置された電灯の明かりのおかげで、それほど道は暗くなかった。


***


 ルリアが商店街に入ってすぐのことだった。


 なにやらガサゴソと物音。

 きっとどこかの店が仕事か何かをしているのだろうと最初は気にもとめてなかったが、ミヤの店に行くにつれて、その音は大きくなっていった。


「まさか……でも……」

 そっと建物の影からミヤの店を監視することにした。


 その場所から店内を見ることはできなかったが、時折笑い声が聞こえ、ルリアの不安な気持ちは徐々に膨らんでいった。


 しばらくすると、その気配は消え、あたりは虫の鳴き声しか聞こえないほぼ静寂の状態となった。


***


 ごくり、と息をのむ。

 ルリアはミヤの店に忍び足で近づき、愕然とした。


「……!」


 窓ガラスが割れていた。

 そして内側から開けられたと見られる半開きの扉。


 不安に駆られ、ルリアは慌ててその扉から店内へと入った。


「うわ………………」


 言葉を失った。


 店内は荒らされていた。


 それは商品を〝壊した〟というレベルではなかった。

 魔法で商品をめちゃくちゃな状態に変形させられていたのだ。陶器のカップや皿も、木でできた小さな椅子や引き出しも、布地の小物雑貨も。すべて意味のない、原形をとどめない奇妙な形にさせられていた。


「ひどい……。ミヤさんに言わなきゃ! ……いや……」(でももし言ったとしたら……しばらくの間はこの店を閉じる必要が出てくる……。そうすると、この店の収入だって完全になくなってしまうし……)


 ルリアは自分自身を納得させるようにこくりと頷いた。

 そして小声で呟く。

「そうだ……。私が直しちゃえばいいんだ……。店にあったものは全部覚えてる……。すべて私の魔法で昨日の状態を再現すればいい。そうすれば店もミヤさんも影響を受けない。朝までにはまだ時間がある」


 ルリアは変形された塊を一つ一つ手に取り、意味のある雑貨に戻すことにした。


(私は忌み嫌われている魔女。人間に生まれたかった魔女。でも誰も見てなければ、誰かのために魔法を使うことは悪くないと思う……)


***


 一方、ミヤもなかなか深く眠れていなかった。

(やっぱり、昨日の宝石女の言葉が気になる……。今までも脅し文句は散々言われてきたのに何でだろう……)


 ミヤはおもむろにベッドを出る。


「ちょっとお店……見てこようかな……」

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