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【第八話】「装飾品をちりばめて」

 体中に装飾品をちりばめて店の中へとやって来たその中年女性は、不敵な笑みを浮かべていった。

「何しに来たか……知りたい?」

「売れない宝石の押し売りですか? なにもそんなに体に着けなくても」とミヤ。

「これは私のよ」

 ふん、と苛立ちを見せる。


 ルリアはその迫力に半歩後ずさり。


 その宝石女はあたりをキョロキョロと見回すと鼻で笑い、口を開いた。

「それにしても、本当に冴えない店ね。時代遅れな職人が作った雑貨、効率の悪いものばかり。さっさと潰れないのかしら」

「あいにく、まだ買いに来てくれる人が少しはいるので」とミヤ。

「へぇ、それはそれは。前時代的な店には前時代的な客がいるのね。納得したわ」

「お客さんを悪く言うのはやめてもらえますか?」

「まぁそんなことはどうでも良くてね……、気づいてない? 近所の人も言ってたわよ。『なんでまだ潰れないんだろう』『値段も隣の店よりかなり割高で使えない』ってね」

「……」睨む。


 女はさらにたたみかけた。

「うちの客のおこぼれで食べてるくせになぁにその反抗的な態度は。まぁいいわ。端的に伝えたいことを言うとね、そろそろ目障りなの、あんたの店。だから……そろそろ、トドメ刺そうかと思ってね。今日はそれを言いに来たの」


 黙り込んだままのミヤの代わりにルリアが慌てて訊く。

「あの……トドメって……」

「さぁ、なんでしょうねぇ。それはこれからのお楽しみ。それじゃあね」

 そう言うと、宝石女は満足げな顔をして店を去って行ってしまった。


***


 ミヤは、はぁぁぁっと大きなため息。

「ほんっと、ヤな奴でしょ? あの宝石女」

「はい」

「本当にむかつくけど、気にしてても仕方ないからね。さて仕事仕事」

「なんか、トドメがなんとかって言ってましたけど、ちょっと恐いですね」

「まぁいつものことでしょ。いつも面白半分にそうやって脅してくるのよ」(でもルリアの言うとおり、トドメって言葉はちょっと引っかかるな……)


***


 そして数時間が経過。

 ルリアにとってミヤの働きっぷりはとても輝いて見えていた。


 客がいなければいないで仕入れ先に電話をしたり伝票の整理をしたり、やっと客が一人入って来たら長時間の相談にも丁寧に付き合ったり。


(私とそんなに年齢も変わらないのに……、なんでこんなにできるんだろう)

 思わず見とれてしまうほどだった。


 ミヤは幸せそうに言った。

「ありがとうございました! おばちゃんまた来てね!」


 そして見送ったあと、ふふっと小さく笑ってルリアに話す。

「あのおばちゃん面白いんだよ。この前は重い鞄持ちながら店にある体重計に乗って、太った~ってわめいちゃって」


 ルリアは納得した。

(ああそうか。ミヤさんにとってこの店は商売の道具だけじゃないんだ……。ここを利用する人とのつながりの場でもあって、この空間そのものがミヤさんにとっての宝物なんだ……。だからどんなに大変でも店をやめないんだ……)


 夕焼け。


***


 一方、隣の店の宝石女は、自分の店の裏にいた。

 その部屋の中で、揺り椅子に座ってくつろいでいる付き添いの魔女の老婆に声を掛ける。

「今日の深夜。あの店にトドメを刺すよ。準備しといてね」

「準備? んなもん何もいらんわい。ワシにはこの両手さえあれば」

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