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【第四話】「魔女になんて生まれなかったら良かったのに」

 ジオは牢を閉めると同時に深呼吸。


 できたばかりの偽コインの箱を抱えつつ、ゆっくりと歩きながら思いにふける。

(それにしても、今回捕らわれた魔女の子は本当に魔法のレベルがずば抜けて高い……。魔法を使っているときのオーラも今までの魔女とは比べものにならないし、作らせた偽コインの完成度の高さはすさまじい。魔法にも才能ってのがあるんだな……)


 廊下の窓には大粒の雨が当たりしたたっている。


(しかし、そうなると〝反動〟も今までの魔女以上になるかもしれない……。あまり溜め込んでしまうと……)


 外では遠くに雷鳴が轟いていた。


***


 一方、牢の中で再び一人になったルリア。


 先ほどこっそり手に入れた回収もれの偽コインをポケットから取り出し、じっと見つめていた。


 そして思う。

(そう、こんな魔女がいたから、きっと魔女は人を混乱させて不幸にさせたんだ。経済のバランスや社会の仕組み、人の命だってほんと軽い気持ちでぶっ壊せる……。私は魔女のそんなところが大嫌いだった。私は絶対そうならないって誓ったのに、私は自分の命惜しさに今同じことをしているんだ……。あんなに誓ったのに……!!)


「魔女になんて生まれなかったら良かったのにな……。そしたらこんなに孤独じゃなかったと思う」

 今まで、思っても口に出さなかったことを言う。


 そしてこくりと一人頷き、つぶやく。

「この魔法を最後にしよう……。私は明日から普通の人間になるんだ……」


 ルリアは両手のひらの真ん中に偽コインを置き、目を閉じて念じた。


 そして、ジオが先ほど牢を閉めるのに使っていた鍵の形を思い浮かべ、魔法であっさりと変形させる。


***


 牢の中の時計は深夜の二時を回っていた。


「そろそろ……大丈夫だよね」

 ルリアはすっと静かに立ち上がると、鉄格子の外に手を出し、鍵穴にお手製の合い鍵を差し込んだ。


「…………」

 息をのんでそっと鍵を回す。


 カチャ。


(やった……!!)

 ルリア自身が驚くほど、解錠はあっさりと完了した。


 早速、なるべく音を立てないように、鉄格子の扉をゆっくり慎重に開ける。


 そして脱出。


***


 どんなに忍び足で歩いても床は時折きしんだが、幸いにも多少の足音は外の大雨が消してくれた。


 廊下を進み、階段を下る。

 そしてまた、廊下を進む。


 大きな屋敷ではあったが構造は入り組んではなく、何となくこっちに行けば出口に近づくであろうという想像は付いた。


 玄関が見えたときのことだった。


 耳元でささやく声。


「こんな時間にどちらへおでかけですか?」

 後ろに人影。


 顔を引きつらせながらゆっくりと振り向くルリア。

 雨音は自分の気配だけを消しているのではないことに、ルリアはそのとき初めて気づいた。

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