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【第二十九話】「枯れた草の道」

 レヴェカたちは日の出とともに屋敷へと向かった。

 丘の上にあるはずの屋敷がないこと、細い煙が弱々しく出ていることから、すでに屋敷が通常の状態でないことは想像が付いていた。


 だが、遠くからではルリアが無事かどうかだけはそこからは判別が付かない。

 そのため屋敷まで行く必要があった。


***


「おい……、あの立派な屋敷がこんな跡形もなく崩れ落ちるのかよ……」

 大男は唖然としながらも足場の灰を足で軽く蹴った。


 他のみんなは黙り込み、ただただその無残なまでの光景を眺めていた。


 レヴェカは(まだ分からない……)と自分に言い聞かせ、その一帯の周囲を一周しようと考える。


 そしてちょうど半周したところで、足を止めた。


「……枯れた草で道ができてる。もしかして……。ねぇ! これ!!」

 慌ててメンバーを呼んだ。


「どうした!?」

 駆け寄る。


「こんな道……なかったよね……」

「……ああ。たぶんなかったと思う」

「これって多分……」

 慌てて図書館から借りてきた書籍『悪魔と魔女の研究レポート』を取り出した。


「あれ、こんな本あったか?」とお頭。

「魔女のところにはなかったけど、読んでた本に『悪魔』の記述があってね、それで念のため悪魔の棚のところを見たんだけど、そこで見つけたの」

「中はなんて書いてある」

「ちょっと待ってね」


 目次を途中まで人差し指でなぞると、ぱらぱらとページをめくる。

 そして読み上げる。

「『悪魔になる段階に入った魔女は、ひたすら旅を続ける。だがそこに心はない。たとえ話しかけても言葉は通じないし、まるで光に照らされないその身体は世界中の闇を凝縮したようだとの目撃証言がある』だって」

「遅かったか……。もうルリアは……」

「まだアタイは諦めない」

「…………でもどうすれば」


 構わずにレヴェカは書籍を小声で読み続ける。


『もしそれに近づけば不幸が訪れるという言い伝えもあるが、それについては現在のところ実証はされておらず、どのような影響があるかも明確ではない』


 レヴェカはしばらくして本をぱたんと閉じ、鞄に再びしまい、立ち上がって歩き出す。

「ここから先は、アタイが行く。みんなは好きにすればいい」


「ったく、しゃーないな」と立ち上がるお頭。

 レヴェカとともに歩き出さないメンバーは誰一人いなかった。


 早足で歩きながらレヴェカは思う。

(専門書にも具体的なことはほとんど書いていない。つまり楽観もできないけど、絶望もできない。まずは今のルリアに会ってみないと……)


 そして今一度、進行方向を眺める。

 果てしなく続く植物が枯れた道。

(この道のいちばん先に……ルリアが……)

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