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【第二十六話】「私、気づいちゃった」

 薄暗い牢屋の中で、ルリアはただひたすら考え事をしていた。

 そして一つの結論が生まれてくる。


(私は外を動き回ることで、いろいろな人と出会うことができた。みんながみんな、私にはもったいないくらいなまでに優しい人だった……)


 雨の音が次第に強さを増していった。


(ミヤさんは弟を学校に通わせるために頑張っていた。そしてラチッタのレヴェカさんたちも……みんな乾いた会話をしながらも、互いが互いのために力を出し合っていた……。そばにはみんなすごく大切な人がいたんだ)


 小さく声に出す。

「私には……大切な人が誰もいない……」


 そう発した言葉は、ひどくルリア自身の胸を突き刺さる。


「……たしかにみんな私に優しくしてくれた。……でもそれは表面的なもので、……私にはこれまでも……これからも……、誰かによって引き裂くことができないほどの絆はどこにもないんだ……。だって私は魔女だから。私は人間じゃないから。それに私には過去もないんだから……」


 雷が鳴り響いた。


「…………私、気づいちゃった」


 そう言うと、ルリアの身体からは黒いオーラが湯気のようにわき出した。

 当時にキーンという鋭い音が鳴り響く。


***


「!?」

 ジオは階下にいたにも関わらず、その異様な音に気づいた。


 慌てて階段を駆け上がり、ドアの施錠を一つ一つ解く。

 近づくにつれてその音はどんどんと大きくなり、ジオは鍵を持っていないほうの左手で片耳を塞いだ。


 そしての檻の前へと早足で向かう。


「どうされましたか!?」

 そう声を掛けるが、鼓膜を突き破るような鋭い音にかき消されていた。


 ジオは檻の向こうのルリアの様子を窺う。

「…………!!」


 そして目を丸くした。


***


 ある曇り空の朝、ミヤが自分の店の開店前に落ち葉をかき分けていると、背後から数名の足音が聞こえた。


「?」

 振り向くとラチッタの面々だった。


 あまりの暗い彼らの表情に恐怖を覚えたミヤ。

 手に持っていたホウキを倒して早口で言う。

「あの……! 私何も悪いことしてないよ!! 何しに来たの!?」


 レヴェカが切り出す。

「えと……そうじゃなくて……、あのね……、ルリアがさらわれた」


 ミヤは一転、冷静になり尋ねる。

「どういうこと?」


***


「……と、そういうわけなの」

 店内でぎゅうぎゅうになりながらテーブルを囲い、レヴェカたちがミヤに一部始終を説明。


「なるほど。それで捕まってしまったんだ……。でもごめんなさい。私、その屋敷がどこにあるのかとか、全然見当が付かない……」

 ラチッタメンバーの大男が答える。

「いや、屋敷の場所は分かってるんだ。ただ……」

「……そんなやばい人なの? その屋敷の……ムークって人は」

「ああ。まぁそれもあるんだが、そこは何とかするさ。だが……」

「だが?」


 今度はレヴェカが言う。

「何か他に手掛かりがないかと思って……。もし仮にこの状態でルリアを助けに行っても、このままじゃルリア自身が逃げることを拒んでしまうかもしれない」

「なんで? 逃げたいに決まってるじゃない」とミヤ。


 沈黙。


 レヴェカが再び口を開く。

「あのさ、ルリアはアタイたちを助けてくれたんだ。アタイたちに危害が加わることを恐れて、自分を犠牲にして行ってしまった。……しかも『もう構わないで』って言い残して。別れ際、必死にアタイたちに嫌われようとしてた……」

「嫌われ……、なんでそんなこと……」

「きっとアタイたちをこれ以上危険に晒させないため……。そして、私たちがルリアを見捨てることを正当化できる口実を作るため……」

 そう言うと目を潤ませた。


 レヴェカが息を整えて続ける。

「馬鹿だよね。あんなのすぐに嘘って分かるのに……。あんなこと言われたんじゃ、逆に優しすぎて放っとけないよ……!!」

 感情は声を震わせた。


 すると、ミヤは冷静に話し始めた。

「手掛かりになるかは分からないけど……」

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