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【第二十話】「場所を教えてくれ」

 ムークの屋敷。


 ここで働く小太りの男ジオは、来客に紅茶を差し出した。

「どうぞ。ムークはもうすぐ来ますんで」

「ああ、どうも」


 来客はカゲマという名の、背の低い女。年齢とは不釣り合いなほど落ち着きのある、肝の据わった様子。躊躇も遠慮なく、出された紅茶にすぐ口を付ける。


 そこにムークが現れる。

 ジオは軽くお辞儀をして退室した。

 

「やあ、カゲマ。新しい情報は入ったか」と早速本題。

「ああ。ルリアの行方だが、突き止めた」

「ほう」

「ラチッタというマジック集団に保護されている」

「ラチッタ? 俺はそいつらにも報酬を約束してルリアを捜すように依頼しているはずなんだが」

「どうやら、受け渡す前にルリアで一稼ぎしたようでした」

「あいつらそんな危ないマネを……。まあいい。それで、ルリアをいつこっちへ引き渡そうとしていたか分かるか」

「それ……なんですが……」

 カゲマは黙り込んだ。


「どうした……」

「いえ、私にも分からない部分が多いんですが、以前監視してたときはルリアを屋敷に連れて行くみたいな話をしてたんですよ。だけど、昨晩の会話を盗み聞きしたら、どうやらルリアをあいつらのメンバーに入れるみたいな展開になってて……、私にも何がなにやら……」

「そんなわけがあるか!」

 ムークは突然両手で机を強く叩いた。


 それにもびくともせずにカゲマは続ける。

「いや、たしかにそうな話はしてたんです。間違いありません」


 ムークは再び椅子にもたれかかって口を開く。

「そんなわけがあるはずがない。こっちに引き渡せばあいつらには大金が入るんだぞ。あいつらは金に困っていた。なのになぜ……」


 カゲマが言う。

「あいつらもルリアが金になるって気づいたんじゃないですかね」

「いや、そんな馬鹿な。まぁたしかに一度や二度はうまくいくこともあるかもしれない。しかし魔女なんて厳重な牢屋の中に閉じ込めておかないと何をしでかすか分からないことくらい知っているだろう。現に、ルリアはこの屋敷もすぐに脱走した。悪知恵は働かせるし素行も極めて悪い、それはあいつらも分かってるはずだ! なのになぜ……!!」


 その疑問に、カゲマは口をつぐんだ。


 沈黙の末、ムークが呟く。

「もういい。場所を教えてくれ」


***


 ジオは台所で片付けをしていると、勢いよくムークが横切っていった。


「ムークさん、おでかけですか!? 何時頃お帰りでしょう?」


 ムークは立ち止まり、振り向かずに言う。

「帰り? さぁな。まぁそんな遅くにはならないつもりさ」


 その答えに返事をせず、険しい顔をするジオ。


***


 細い一直線の道。

 馬に乗ったムークは、前のめりになって馬を走らせる。


 そして思いを巡らす。

(ルリアもルリアだ。俺の屋敷にいれば魔女という理由で周りから攻撃されずに済むのに、なぜそれでも外に出ようとする……! ここにいれば飯だってタダでくれてやれるというのに……!)「くそっ!! なぜだ!!」


 思い通りにいかない苛立ちは、獰猛に辺り一面をこだまさせた。

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