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【第十五話】「用ないなら閉めるけど」

 マジックショーが終わり緊張感のほぐれた五人の控え室に、トントンと扉をノックする音。

 いちばん近くにいた大男が重い腰を上げてドアノブに手を掛けようとする。


「おい!」と声で遮るのは、奥で片膝を立てて座っているお頭。

「何だよ」

「ルリアがいるんだぞ。このまま開けたらまずいだろ」

 そう隅で縛られてじっとしているルリアを顎で指図する。


「ああそうか」


***


 ミヤとレイは扉の前で立っていた。


 ノックをしたあと、中で物音が少しして、そしてがちゃりとドアノブが回る音がした。

 扉が開いた。


 姿を出したのはマジックショーのときの大男。

 ミヤは険しい顔だったが、見上げた先にどっすりと構える巨体に少し焦る。

「何? 用?」と愛想のない大男。

「あ、えっと」(あれ、ステージではあんなに気さくな感じなのに、こんなに感じ悪いの?)


「用ないなら閉めるけど」

「その……あの……、お、弟がファンなのでぜひお目にかかれればと」

「ふぅん」


 すると、ミヤの弟レイが眉をひそめながら大男を指さして言う。

「姉ちゃん、このおじさん、だれ……?」


 慌ててレイの口を手で塞ぐミヤ。

「あははははは、誰じゃないでしょ。あなたの好きなマジシャンさんよぉ。あの、すみません、そんなわけでサインを貰ってもよろしいでしょうか?」

「……。まぁいいけど」

「じゃあこの紙にお願いします」

 ミヤは鞄からノートとペンを取り出し、表紙の裏側を上にして手渡した。

「ああ」

 大男は受け取って、自分のサインを素早く書くと、後ろに座るメンバーにそれを手渡した。


 サインを書いて回している間に、ミヤは探りを入れることにする。

「今日もマジック凄かったです!」と必死の作り笑顔。

「ん、ありがとう」

「あの、今日の花のやつってどうやったんですか?」

「あぁ……、マジックの種は教えられないんだわ」

「そうなんですか、残念。それにしてもあんなにたくさんのラスベリアスの花を出せるなんて本当凄いなと思って」

「そうだな……」

「あのぉ、花はどこから取ってきたんですか?」

「……」

「このへんじゃなかなか手に入れられないのにあんなに調達できるなんて、びっくりしました。それこそ、魔法……か何かを使ったのかとぉ」


 ミヤにもう一人の影が覆い被さる。

「?」そっとおそるおそる首を上げる。


「お嬢ちゃん、探りはもっとうまくやろうぜ」

 その影の主、お頭はそう言った。


 そしてお頭の両手はミヤとレイの手首を勢いよく掴んだ。


***


 壁際の死角からそっと覗くルリア。

(やっぱりミヤさんの声……! でもなんで……)

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