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【第十三話】「言うとおりにすればいいだけさ」

 朝。


 ルリアは手足を縛られ、寝返りすら困難な状態で洞窟に捕らわれていた。


 光が洩れてくる方角からは、徐々に人の気配が活発になってきた。

 足音、昨日の五人と思われる話し声、何かを燃やす音。


 そして時折聞こえる笑い声。

 どうもみんな機嫌が良い。


(私……このままどうなっちゃうんだろう……)


 不安は様々な想像を巡らす。


(まだコインを作らされるだけのほうがマシだったかもしれない。だってこんなところに住んでる人たちだし、暴力とか振るわれて無理難題をふっかけられるかも……。そしてもし用なしになったら……)


 向こうから聞こえる声。

「この肉うめえなぁ、どこのだよ」

「すぐそこの村のだよ。朝食は前祝いだ」


 青ざめるルリア。

(もしかしたら丸焼きにされて食べられるかも……)


***


 しばらくして数人の足音が向かってくることに気づいたルリア。

 素早く振り向くと、いちばんの大男とお頭と呼ばれている長身の男が立っていた。


「起きたか」と腕組みの大男。

「お前には今日一日、頑張ってもらうぞ」

 隣のお頭は何かを企むかのようににやりと笑う。


 ルリアはおそるおそる尋ねる。

「あの……、私は何をさせられるんでしょうか……」


 お頭が声を沈めて答える。

「なぁに、俺らの言うとおりにすればいいだけさ。……言うとおりにすればね」


 今度は後ろから鋭い目つきの女が来た。

「そろそろほどいてあげたら? その縄。魔女っつったって手に乗せられるもの以外は変形できないんでしょ? ここそんなもん何もないし」

 手に腰を当ててそう言う。


 大男は返す。

「でも逃げられたら困るからな」

「それなら両手だけでもほどきなよ」

「そ、それもそうか」


 その女の気の強い言い方は大男をすんなりと受け入れさせ、ルリアの両手首を縛る縄はあっさりと解除された。


 ルリアはその女に言う。

「あ、ありがとうございます」

「肝心なときに魔法を使わせられなかったら困るのはアタイらだからな」

「え…………」


***


 ルリアは言われるがままに馬車のぼろい荷台に乗せられていた。


 荷台ですぐ横に座っているのは先ほどの女。

「アタイさん……、私たちはこれからどこに……」

「いや、それ……名前じゃないから……。とりあえずこれ食いな。腹へってんだろ?」と差し出される小ぶりな三つのパン。

「どうも」


 ルリアは遠慮なく受け取ると小さくちぎって口に運んだ。

 そして咀嚼そしゃくしながら思う。

(やっぱり、この人たち……よく分からない……)


***


 ルリアは馬車を操っているお頭を見る。

 横に視線を移すと隣にはもう一頭の馬に乗る大男の姿。ルリアは馬が少しかわいそうだと思いつつ、向こうの荷台に詰まれたカバーの掛けられた何かに目をやった。


 がたごとと、ルリアたちの馬車は郊外の広々とした道をゆっくりと進んでいく。

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