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【第十二話】「洞窟」

 土の上で気を失っているルリア。

 それを取り囲むのは三人の男と二人の女。その若めの成人五人が皆じっとルリアを見つめていた。


「おい、こいつだよな。捕まえたら報酬もらえるって言ってたやつ」

「ああ、たしかに依頼のとき受け取った写真そっくりだ」

「それにしてもオーラがないな。本当に魔女かよ」

「こんなに簡単に見つかるとはね。さっさと連れて行って大金貰おうぜ」


 いちばんガタイのいい男がさっそく持ち上げようとすると、今までずっと黙っていた長身の男が、うつむき加減のまま口を開いた。

「待て」

「何だよおかしら

「あの屋敷に連れてくのはまだ早い」

「何言ってんだ。早く渡して金貰って、うまいもの食おうぜぇ?」

「そう慌てるな。よく聴け。俺たちに捕まえるのに期限は定められていない。今日連れて行こうが来年連れて行こうが関係ないわけだ」

「それがどうしたってんだよ」

「せっかくの魔女だぜ? そのまま依頼主に引き渡すのって、惜しいと思わないか?」

「ん?」


 お頭と呼ばれている男が顔を上げて言う。

「なぁに、ちょっとくらいこいつを利用させてもらっても、バチなんて当たらないさ」

 冷酷な笑みを浮かべていた。


***


「いたた……」

 固い地面の上でルリアが意識を取り戻した。


 そこは洞窟の中だった。

 ルリアの周りは真っ暗闇だったが、首の方向を変えてみると少し先の方で柔らかな明かりと、バチバチと火を焚く音が聞こえた。


 そして身動きが取れないように縛られた両手と両足に気づく。

(また……捕まっちゃったんだ私……。でも屋敷じゃない……。誰がこんなことを)


 そっと明るさのあるほうに進むことにする。

 歩くことはもちろん立つことすらできないルリアは仕方なく、芋虫のようにくねくねと腰から膝を曲げたり伸ばしたりして、光の方向へとゆっくり進んだ。


 ちょうど突き当たりにさしかかって、そっと顔を出す。


 視線の先には、焚き火を囲いながら五人の男女が飯を食いながら話をしている風景があった。


(何話してるのかな……?)

 危険を感じたルリアは顔はいったん引っ込めて、壁に寄りかかり耳を凝らす。


「もう俺たちに失うものなんてあるか?」

「いや、ないな。はっきり言ってもう何だってできる」

「これはまたとないいい機会だ。覚悟決めるぞ……!!」


 その乱暴な台詞の断片は、焚き火の音とともに洞窟内をわずかに響かせた。


(なんか屋敷の人よりも大雑把な感じだなぁ。ヤケクソ感が恐いというか……。私、今度は何させられるんだろう……)


 ルリアは肩をすくめた。

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