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第二十八話 「クシュリナ」

第二十八話 「クシュリナ」


我の苦しみは二千年前から始まった。人間にとってそれはとても長い時間だ。悠久の時間と言っても差し支えないだろう。

「おぉ、お前か、どうだ。我の政策は」

「凄いよ。皆よろこんでらぁな。ヴァルセメリキウスのお陰だ」

我の親友。我の友。

我の――。

「そのヴァルセメリキウスという呼び方はやめてくれないか。我にとってはくすぐったい」

今まで一人だった我に個体を示す名前は必要がなかった。それまで部下が我を呼ぶ時は「主」だった。

だが、この男は我に名前をつけた。それが我と親友の絆でもあった。

我はそこで思考をやめ。意識を表層に回復。クシュリナ・ボックス充填開始。

我、何故、名前、残す。

我は何故名前を残している。奴との絆など。絆……など。

アイツからは我と親友の結んだ絆と同じモノを感じる。

何故、未だに生きている?何故帰ってくる。

――否。

我が寄っているのか。あの親友に。

それを否定する何者か、それが我の中にいた。

……

アルクェル帝国の大地は、緑で溢れていた。機械の存在など忘れてしまうような、緑。ただ木が羅列しているような自然ではなく。

草木が生えており、水も、生物も住んでいる。地球よりも緑に溢れた惑星。

様々なものが人間に縛られることなく、自由に暮らしている。ただ、本能の赴くままに。

その惑星にファリクサー、フェクサー、フォクサー、フィクサー、ファエスリアス・改、ファエムリアス・改、白い塗装で塗られたファエスリアスのような機体。七機の機体が舞い降りる。草木が生えている光景には、とても似合わない。

七機の機体が降りるとともに、草木が舞い上がり、水しぶきが上がる。舞い降りた場所は、陸と海で分かれている場所だった。

陸の部分へと着地。

「ここが、アルクェル帝国の惑星……」

「そうだよ。ここが、アルクェル帝国の本星なの」

「なえかはなんでこんな所にいたんだ?」

「それは……ん、待って、こっちに着いてきて、ここは危ない」

「え?」

「ほら、あそこに見えるでしょ。VH-2の大群が」

フィクサーの指差す方向には、VH-2の大群のシルエットが光に照らされていた。

「本当だな……」

「だから早くこっち」

フィクサーは手招きをして、水が所せましと詰められている、海の中へ入って行った。

ファリクサーもそれに続くように中に入って行く。

海の中には、生物が生息しており、かなりの数の魚がいた。魚の群れには、地球に生息している、イワシなども存在していた。

「うわぁ、こんなに魚がいっぱい。凄いね、輝くん」

「……ああ」

「輝、こっち!早く早く!」

フィクサーは海の中へ少し潜った後、黒い闇に吸い込まれていった。

ファリクサーも続いて、暗闇に吸い込まれていく。

この惑星は命に満ちている。だが、ヴァルセメリキウスはフィアーズ族を殺そうとしている。

何故そうなるのだろうか。

こんなにも地球より命の営み育まれている星で、何故、彼は人間を殺そうとしているのだろうか。

命のありがたみがとっても分かる星で。

暗闇に吸い込まれる。頭の隅に過る輝の疑問。

……

輝達の駆る七機の機械が暗闇を抜けるとそこは洞窟だった。

無駄に広い空洞。その中には、ファエスリアスに似た機体が多くいた。

「おい…エム。どういうことだ?これは。離れた星に兄弟がいるなんて聞いていないぞ」

「私も聞いていない。どういうことです?ケッキン」

「ケッキン……まぁいいですと言いたいですが、少し待って下さい」

「なん――」

「皆、ここで降りてきて、詳しく話すから、私が」

なえかの声が洞窟に響く。

それを聞いて、輝、咲、京朗がそれぞれの機体から降りてくる。

なえかは最後にフィクサーから降りてきた。

そこに輝が駆け寄る。

「て、輝!?」

「なえか……本当に……なえかなんだな」

「ちょ、いきなり抱きついて!何処触ってるの!?」

「なえか……」

「輝――くん?」

咲がニッコォと笑顔で笑っていた。その顔は今まで見たことが無い、咲の顔だった。

とても怖い。般若のような顔だ。

怖すぎる。

輝もさすがにその気配には気づいたのか、なえかを離す。

「あ……ごめん。なえか生きてたんだな……」

「ううん。輝、ただいま」

「ああ、おかえり。なえか」

「……」

あれ?私、蚊帳の外?と思う咲だった。

なえかは、少しの間、輝と咲の間を見る。

それはほんの少しの間だった。

なえかは咲に近づくとヒソヒソ話をし始めた。

「でも……咲――」

「……!?」

「なえか……?」

咲はそのことを聞いて驚いているようだった。赤くなったり、謝ったりしている。

「何してるんだ?」

「な、なんでもないよ!」

「うん、なんでもな~い。咲、いくら――されたからって、うかうかしてたら私が略奪するからね」

「略奪!?な、なえかさん!」

「あはは。でも本当にやっちゃうからね~」

「……」

咲は気難しい顔をしている。

なえかはとても愉快そうに。

輝は少し困惑気味。

この光景がいつになく、懐かしい三人。

そして、場を整理するように輝が当然の問題を口にする。

「なえかは、何故ここにいたんだ?そして生きて……」

「……私は――」

それからなえかは、思い出すように目を閉じて語りだした。

「私は、いつの間にかここにいたの。そして三ヶ月間ここで戦ってた」

「は?いや、なえか。それは説明になってない」

なえかはやっぱり?という顔をしながら。

「ごめん輝。私正直覚えてないんだ。私の目が覚めた時は、もうここにいたから」

「そうなのか……」

「その疑問を解決するのが私こと――」

「このケッキンが話してくれるって」

「何故!?名前名乗らせて!」

「いやよ。長いもん」

「ガーン。もうケッキンでいいよ。ケッキンで……。ふぅ、話しましょう。何故なえかさんが生きていたか。そのすべて。そしてこの星の秘密もすべて」

「この星のすべて……?」

「そう。この星のすべて、です。私は――」

「そうか……お前が欠陥品と呼ばれていた。知識の釜か」

「あなたは、原河 京朗さん。よく知っていましたね、私のことを」

「アルクェル帝国にいた時、聞いたことがあった。知識の釜と呼ばれている、最高の頭脳を持ち、すべてのルーツを宿した機械がいると」

「ねぇ、輝。あの人が……原河 京朗さん?」

「なえか……知ってるのか?」

「うん、知ってるよ。一応。ケッキンから色々聞いてたから」

「そうなのか。凄いの……か、あのケッキンは」

「うん。凄いよ。ケッキン」

「……また私……」

「咲、何か言ったか?」

「う、ううん。なんでもないよ」

「ケッキン、ケッキン連呼しないで頂けますか!?とにかく話しましょう――私が彼女を見たのは、2カ月前です。恐らく、時空の壁を突き破ってここにきたのでしょう」

「時空の壁……?」

思わず輝が疑問を投げかける。

「時空の壁というのは……そうですね。ここにあるフィクサーとあなた達の知っているフィクサーが別物なのは知っていますね?」

「どういうことだ……?違うフィクサー?」

「そのことまで知らなかったんですね。フィアーズ族も地球に様々な文献を残したと書いてありましたが……それほど有意義なモノは残っていなかったようですね――」

先ほどまでとは打って変わって、ケッキンは説明を開始する。先ほどまでの馬鹿さが嘘のようだった。

「あなたの乗っているファリクサーはブラックボックスを詰んでいますが、そこの……原河 咲さんが詰んでいるフィアート・ボックスとは違います」

「フェクサーにはブラックボックスは搭載されていない……?どういうことだ?」

先ほどから皆の頭には?マークが浮かんでいる。

「そこも知りませんでしたか……。オリジナルのブラックボックスというのは、ファリクサーだけに搭載されています。そして、他のフェクサー、フィクサー、フォクサーと言った機体は、量産型のフィアート・ボックスを搭載しています」

「なら、何故ブラックボックスと同じモノだと地球では判断されていたんだ」

「それは……そうですね。ブラックボックスもフィアート・ボックスも同じく存在の力を吸い、力にしています。ブラックボックスは存在の力を消費しますが、フィアート・ボックスはオリジナルのブラックボックスに成るために、存在の力を蓄え、一定の量が溜まるとそのフィアート・ボックスは、オリジナルとほぼ同等の力を発揮する、量産型のブラックボックスとなります。だから、ファリクサーは絶対無二の存在であり、フィクサー、フェクサー、フォクサーは量産もされています、なので恐らく、もうすぐあなたたちの持っている、フィアートボックスはブラックボックスに昇格するのでしょう。だから地球の技術では分からなかったんです」

「だからフィクサーが二体以上存在しているということなんだな……」

「そうです。話を戻しましょう。貴方達の知っているフィクサーと今ここにあるフィクサーは別モノです――個体差の違いでしょうけど……似たものがあったんでしょうね。そのフィアート・ボックスのおかげで彼女は時空の壁を突き破ってここにこれた。いえ、甲長 輝さん、あなたの絆がそうさせたんです」

「俺の……フィアーズ・コードが……?」

「そうです。あなたの絆の力となえかさんの絆の力が時空の壁を突き破り、こちらに飛ばしてきたんでしょう。生きていてほしいと願ったことで。私の気づいた時には、もうなえかさんは今乗っている、フィクサーに乗っていました。そして今に至る訳です」

「とりあえず、飛んできた理由は理解できたような理解できなかったような……」

「まぁ……いきなり言っても難しい話です。ああ、それとフィアート・ボックスを持っている、ファエスリアスさん達のことですが。きっとファエスリアスさん達を発見した、学者さん達が自分の手柄にしようとか言って報告したんでしょう」

「妙にリアルだな……今までの話より」

「それは……現実ですからね。ああ、あと私がエスさんとエムさんに似ているのは、元からこのボディーはこの惑星で作られたからです。そしてこれからの行動についてですが……」

「きょ……俺の兄弟がいたぞ!エム」

「そうだな……エス。私はついていけない」

「倒すべき敵はヴァルセメリキウス……今上空にVH-2が通る時間だからここに隠れてるけど、とにかく。それが通過したらヴァルセメリキウスがいる所にいくよ!」

「なえか。ああ、分かった」

「早くしないと地球が……潰されちゃうから、ここからは迅速に行動しないといけないから」

「地球が潰される……?」

「そう。輝も見たでしょ?あのシールド。あれで地球に突撃しようとしてるの」

「ウェポンボックスでも破れなかったものが激突なんてしたら……」

輝の未に悪寒と言えるべきものが走った。

きっとアルクェル帝国の惑星ほどの質量がぶつかれば、地球は粉々に破壊されるだろう。

「そう、きっと地球が潰れる。だから早くヴァルセメリキウスを倒さないといけない」

「でも、それならさっきみたいにシールドを壊せばいいんじゃないのか?」

「それは無理です」

口を挟んだのはケッキン。

「どうしてだ?そちらをやったほうが効率的だろう」

京朗が当然の疑問を口にする。

シールドを壊せば、アルクェル帝国の惑星まで壊れてしまう。いくらヴァルセメリキウスだとしてもそこまではしないだろう。

「あれは……完全に壊してはいけないんです。この豊かな自然を見たでしょう?シールドにめり込んでいる、あの惑星から、あのシールドが発生していますが、シールドとめり込んでいる惑星からは、空気の循環。温度の調節など様々なことが行われているんですだからアレを完全に破壊してしまったら機能してしまわなくて、ここは完全に死の星になってしまいます」

「さっき壊してたじゃないか……」

「あれは一応自己再生機能があるので、あれくらいは大丈夫です。ですが、命を生き残らせる為に、あれは破壊してはいけないんです、なのでこの星を動かしている、ヴァルセメリキウスを止めよう。という訳です。あと10分ほどで、ここのVH-2が巡回を終了するはずなのでその後、行動を開始します」

「分かった」

「それは各自自分の機体に乗って下さい。あと7分です」

それぞれが散って機体に乗って行く。

「なえか!」

輝がなえかを呼びとめた。咲はその様子を少し離れた所から見ている。

「なえか、これはヴァルセメリキウスを倒す為の戦いじゃなくて、地球に帰る為の戦いだ」

「帰る為の戦い……。そう……なんだ」

「そうだ、これは帰る為の戦いだ」

「うん。分かった。倒す戦いじゃなくて、帰る戦いなんだね」

「咲!なえか!」

「え!?な、何」

咲の存在に気づいていた輝は咲を呼ぶ。

「絶対に帰ろう!」

「当たり前だよ、輝」

「うん、輝くん。絶対に帰ろう」

なえかは輝と咲を見て、少し寂しそうに俯いていた。

「あ~あ……やっぱりダメなのかなぁ。ううん、ここで諦めない諦めない」

「何か言ったか?なえか」

「ううん。なんでもないよ。輝。早くいこう!」

「あ、ああ」

……

海上から、七機の機体が水を装甲に受けながら勢いよく飛びだした。

その七機は勢いよく、ヴァルセメリキウスがいる場所へ向かっていた。地下にいる、ヴァルセメリキウスの場所へ。

ヴァルセメリキウスがいると思われる場所には複数の敵がいた。

「甲長隊長!ここは行ってくれ!」

「ここは任せてください。甲長隊長」

「私もここで戦いましょうかね……」

「エス。エム。ケッキン……。分かった。咲!なえか!京朗さん!」

「さぁ!いくぜ!兄弟」

「兄弟……そうですね、私達は兄弟です!」

「キャラが被ってる気がする……誰だこんなのだしたの……」

エムだけ何故か文句を言って戦闘を開始していた。

それから、輝達は妨害なく進めた。

まるで、彼らを誘っているかのように。

……

ファリクサーがとてつもなく大きな扉をインフェルノソードで斬る。

その先には全長50mはあろうかという巨大な機体と大きな広場だけが広がっていた。

「よくきたぞ!フィアーズ族の民!」

大きな声が、響く。その声は、真ん中にいる、機械から発せられていた。

「あれは……」

「あの大きさは……!?」

「あれが、ヴァルセメリキウス。このアルクェル帝国の主だ」

「あれが、ヴァルセメリキウス……。何故お前はいままでフィアーズ族を殺してきた!」

「銀河の星系に生き残っているのに私が復讐したい存在がいたからだ。そして今ここにそいつはやってきた!」

二千年前のフィアーズ族とアルクェル帝国の戦いは、アルクェル帝国の戦いで幕を閉じた。

そして、フィアーズ族は銀河に散り散りに散っていった。あるものは死の惑星へ、またあるものは生きている惑星へ。

二千年の時を経て、今ヴァルセメリキウスの目的は達成されようとしている。

「な……に?」

「それがお前だ!甲長 輝!」

「俺が……?どういうことだ!」

「甲長 輝。ヴァルセメリキウスはお前を惑わせようとしているだけだ!すぐに攻撃を――」

「原河 京朗……ふん。生きていたのか。だが、貴様らはここで終わりだ。過去の過ちは繰り返さない。ここで廃にしてくれる!フィアーズ族ゥゥゥ!」

「な……ああ……ぐあぁぁぁぁ」

「輝!」

「輝くん!どうしたの!?」

「な……これは……」

「ここまでやってきたのは褒めてやろう。だが、ここに来たのはお前たちだけではない。アレを見てみろ」

大きな広場の隅には、これまで戦ってきたのであろう。フィクサー、フェクサー、フォクサーが大破した形で置かれていた。

「我に……滅ぼされる寸前。ここにきて戦った奴らだ。今ここで、我の追いもとめていたアイツの子孫を滅ぼせるのだ。これで我の……二千年の夢は達成される」

「うあああああぁぁぁ」

輝の苦しそうな声が響く。

オリジナルのブラックボックスは強力が故、存在の力を吸収し、消費する。だが、その存在を一定量吸収されるとブラックボックスとその搭乗者は共同体として存在することになる。

所謂、輝の死がブラックボックスの死。ブラックボックスの死が輝の死となるのだ。

「ここで消えろ!ファリクサー!甲長 輝――真のクシュリナ・ボックスの力によって消えされ!フィアーズ!」

「うぐぁぁぁ……」

「て、輝くん!」

「輝!」

ファリクサーの足元から、じょじょに粒子化していく。

ファリクサーを構成している、粒子が少しずつなくなってく。それと同時に、輝の体も粒子化していっている。

「大丈夫だ……咲……なえか……俺――」

刹那。時が止まった。

すべての思考が。時が。

ファリクサーが完璧にこの世から消え失せた瞬間。

ファリクサーを構成していた、粒子が完全に空気と同一になっていく。

咲が操るフェクサーが手を伸ばした瞬間。それは手を触れることなく。消えててなくなった。

「て……る……くん……あ……あ……嫌あぁ!」

咲の声だけがそこで反響して声が響いた。


第二十八話 オワリ


第二十九話へ続く

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