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第一学園 「お姉様」

今回から機甲ファリクサーKと名づけられた外伝が五話続きます

第一学園 「お姉様」


「え?」

「え?ってどうしたんですか~お姉さま~」

あれ、なんで俺はこんな現場にいるんだ?

突然目の前に現れた女の子が咲の手を握り締めてこう言いだしたのだ。

「お姉さま」咲は困惑した表情で俺に助けを求めている。でも俺には何もできない。

きっと一生に一度いや、10回転生して一回遭遇する程度に違いない。

俺は咲の目に我慢できず、助け舟をだすことにした。

「えーと君……咲が困ってるから離してあげ――」

女の子の目がとてもキツイものになる。まるで親の仇を見ている目だ。俺何かしたか?

手を振ると高々と言い放った。これまでと全然違う口調で。

「何?あんさんどなたはん?もせやけどダンさんて甲長 輝って人?」

……関西弁?さっきまで普通に喋ってた人が?

女の子は急に恥じらいの表情を見せ、顔を伏せた。咲はさらに困惑した表情になっていた。

俺はというときっと間抜けな表情をしているに違いない。女の子は顔をあげると。

「ごめんなさいです~お姉さま~また今度です~」

「え、う、うん。またね」

「はいです~、そこの男」

女の子が関西弁から戻っている。さっきの関西弁はなんだったんだ。

怒っている時にでもなるのか……?女の子は続けて言葉を紡いだ。

「お姉さまに近づくのは許さないから、そのつもりで」

その後、女の子は走って廊下から去って行った。あとに残されたのは咲と俺。

咲の手に何か握られているのに気づいた。

「咲、それはなんだ?その手紙みたいな」

「え?あれ、本当だ。いつの間に持ってたんだろう」

手紙を開けるとそこには、こう書かれていた。咲が読み上げる。

「拝啓 原河 咲様、いえ、お姉さま。私の名前は妹羨 姫歌と申します。 お姉さま私とお付き合いしてください」

あの女の子の名前は妹羨いもうら 姫歌ひめかと言うらしい。

「あ、続きがあったよ。PS.甲長 輝という男にも言っておいてください、お姉さまに近づくな」

俺はなんでそこまで恨まれてるんだ?何かしたか、本当に。いや、気づかれないうちに何かしたのかも知れないけど……。

記憶にそんな場面はないんだけど。

……

次の日。また学校の廊下。

ちなみに何故学校にいるかというと夏休みで学校が休みのはずなのに、補充授業ということで皆駆り出されている。

この学校一応エアコンの冷房はついているんだけど、いかんせん学校が広くて冷房が回らないのだ。

「お姉さま、読んでいただけましたですか~?」

「え、えーと、あなたの気持ちはうれしいけど、ごめんなさい」

そして何故か咲は俺を見た。輝くんは何も感じないの?と言った顔だ。俺が目で返すと何故か咲は顔を赤らめた。

何か勘違いしてるのか……?

その時だった、妹羨 姫歌さんが俺を見て目を細めたのは。

「あんさんが邪魔をしたの?許さない」

また関西弁か……!俺は何もしてないぞ?聞いてるか、おい?

「許さん」

言葉づかいが段々乱暴になってるぞ!?ここは逃げよう。俺はそう決心するとすぐに行動に起こした。

走って逃げる。咲は状況を飲み込めず、ただ立ち尽くしていた。

「待ちやがれ」

なんだなんだ!?いつの間にか妹羨さんはモップを持っていた。それを振りまわしながらこっちに向かってくる。

結構可愛い顔だと思うのにこうなると鬼の形相と言う言葉が正しいだろう。

「わいが鬼?」

なんで俺の思考がわかるんだよ!?俺はさらに逃げる。しばらく逃げると陽樹が教室から出てくる所だった。

「陽樹!助けてくれ!」

「は?」

陽樹の後ろに俺が隠れると同時に妹羨さんが現れた。モップを振りまわしている。

陽樹が細い声で話かけてくる。

「何やったんだよ、お前のことだからHなことでもしたんだろ」

「してねぇよ!てか、お前のことだからってどういう意味なん――」

俺の言葉はモップによって遮られた。陽樹の頭にはモップがクリーンヒット。

野球なら場外ホームランをしている勢いだ。あの細い女の子にこんな力があるのか!

「ふーふーふー……」

妹羨さんは息をあげているにも関わらず俺を追いかけてくる。怖い。女の子が怖い。

俺のトラウマは日に日に増していくばかりだ。この勢いなら一か月後には女の子と話なんてできやしない。

そう思う。

俺は階段を駆け上がると屋上にでた。ここなら安全のはずだ。ちゃんと屋上の扉を閉める。

「あけやがれ、お姉さまに近づくやつは許さない、あけやがれ」

その言葉が5分くらい続いたと思うといきなり止んだ。やばい、かなり怖かった。

ホラー映画より怖い。モップを持って女の子が追ってきて、さらにその理由が咲に近づくな。という内容なのだ。

なんでだ?これは陽樹が言っていた「百合」とかいう奴なのか。

俺が溜息をつくと「それ」は目の前にいた。影。その影を見上げると――。

「ふぅー……ふぅー……ふぅー……」

「妹羨さん?何所からきたんだ!?」

屋上の扉を確かめる。ちゃんと閉まってるよな。うん、閉まってる。

さて、皆はどこから来たと思う?

……。……。現実逃避はやめよう。俺が屋上を見渡すとそこにはロープがあった。

もしかしてあそこから登ってきたのか?凄い腕力だ、というよりどうやってロープを引っかけた。

「ふぅー……はふぅ?」

はふぅ?その瞬間妹羨さんは倒れた。見事に後ろに倒れて鈍い音が響いた。

「お、おい!大丈夫か!?」

俺はゾッとして近寄るとおなかが鳴ったような音が聞こえた。もしかして妹羨さん?

もう一回妹羨さんを見るとまた鳴った。次はもっと大きい音だった。

「あぅーお腹すいたーですぅー」

俺は一気に気が抜けた。さっきまで俺が怖がっていた女の子とは思えないほどだった。

このまま置いていくわけにもいかず、俺はおんぶで食堂に行った、今の時間ならまだパンが売ってるはずだ。

あんぱんくらいしか残ってないと思うけど。

食堂に行く途中、咲と出会った。やっと状況が飲み込めたか……?

「あ、輝くん、それに……妹羨さん?」

咲が怪訝な顔をする。なんだ、その目は。何もしてないぞ。

「俺を追いかけてたらおなかがすいたみたいだから今から食堂に行くけど咲もくる?」

「うん、行く、ちょっと気になるから……」

気になる?何が気になるんだ。わからない。学校にいるといつも色々巻き込まれる。

ファリクサーに乗って戦っていた時は学校にいても気が気じゃなかったけど、今は気楽なものだ。

こんな日常は久しぶりだ。そう思えた。でも女の子に追いかけられるのは金輪際勘弁してもらいたい。

……

「あぅー?」

妹羨さんが目を覚ました。食堂の中で適当な席を見つけると座った俺と咲は妹羨さんが目覚めるまでしばらく待っていた。

「あ、お姉さま!……と甲長 輝?」

別にフルネームでなくてもいんだけど。俺はとりあえず買ってきたあんぱんを妹羨さんに渡す。

「なんやろか?敵からの施しは受けまへん」

また関西弁だ。別に敵ってわけでもないだろうに。

「いや、お腹すいてるんじゃないのか?」

「すいてまへん」

その言葉の直後におなかが鳴るものだから俺と咲は思わず笑ってしまった。

妹羨さんは恥ずかしそうに顔を背けるといつの間にか手元にあったあんぱんがなくなっていた。

「これはお姉さまからもらったということにするです~いいですよねお姉さま」

「うん、いいよね?輝くん」

「いいけど」

妹羨さんはあんぱんをすぐに平らげると一気に言葉をまくし立てた。

「甲長 輝!あんたに負けたなんて思わないですー!お姉さま!断られちゃいましたけど、私はお姉さまのこと諦めませんからね!」

それだけ言って風のように妹羨さんは去っていった。咲はまた俺に目で訴えている。

俺はそれが何なのかわからなかった。

それを咲に言ったら、咲は怒って帰ってしまった。咲を追いかけるも。

「輝くんはやっぱり鈍感だね」と言われた。俺ってそんなにか?

でも言葉を言ったあとの咲は笑顔で笑っていた。その顔はとても可愛かった。

俺はこの時から気づいていたのかもしれない。。

咲が俺のことを好きでいたとそして――でもそれがあんなことに繋がるなんて思ってもいなかった。


第一学園 オワリ


第二学園へ続く

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