第十話 「ガトリングバイパー」
第十話 「ガトリングバイパー」
なえかが、戦闘の時、嫌がっていたのは、何故か分からないけど。
ごめんなさい。と言ってきたので、一応許しておくことにしよう、本当に訳が分からん。
そして、一夜あけて、今は五月だけど、7月にある文化祭の出し物を決めることになっている。
昨日の正体不明の敵に関しては、未だ調査が続いている、と日々之さんから連絡があった。
いきなりファリクサーの全機能が落ちたのは謎だけど、俺が気にしても仕方のないことだ。
そんなことを考えているせいか、文化祭の出し物を決めるホームルームで、当てられたのに気付かなかった。
「ちょっと、輝!聞いてる!?」
「んあぁ、聞いてる、えーと……」
出し物を聞かれてるんだよな、なんて答えよう。
無難な所で喫茶店でいいか。
「喫茶店」
「喫茶店かぁ、何が目的?」
目的ってなんだ。あぁ、制服ってことか。
「別に制服目当てとかじゃないぞ」
「あ、やっぱり制服なんだ?」
やばい、墓穴をほった。俺はなえかの睨みつけるような視線を感じながら。
「あぁ、いや、陽樹が制服目当てなんだ」
隣で制服と聞いて、顔の頬が緩んでいる陽樹に話しを振った。
「はぁ!?俺がいつそんなこと言った!誰もなえかの制服姿とか、原川の制服姿とかは想像してねぇぞ!」
「へぇ、やっぱりそうなんだ」
「やべ!墓穴ほった」
なんて自爆劇だ、陽樹すまん。
そんなこんなで、文化祭の出し物は、喫茶店に決まった。
その後、俺達といっても、豊と志乃を抜いた俺、咲、なえか、陽樹は、俺の自宅にくることになった。
文化祭の喫茶店にだす、料理を咲となえかが作ってもってくるそうだ。
何もこんなに早く料理を作って持ってくることはないだろうに。
咲の料理が食べられるなんて、いい日かもしれないって俺は何を考えてるんだ……。
「ただいまー」
母親に、ただいまを告げて、俺は自分の部屋に入った。
すぐに制服を脱ぎ、私服に着替える。
それから1時間程度。俺は自室で待つことになった。
……
…
とある、宇宙の星。その一室。一室と言っても、かなりの広さはある。
「申し訳ございません、ヴァルセメリキウス様、クシュリナボックスを失ってしまいました」
「そうか、だが気に病むことはない、あれはアンチブラックボックスの試作品。今は成果がとれただけでも十分だ、他に何かあったか?」
無機質な機械声が、聞こえる。
それもその無機質な声を発しているものは、全長50mはあろうかと言う巨体だった。
「ハッ戦闘中に、私に頭痛が起きることがございました、これは、私の失われた記憶に関係があるのですか?」
「そうかもしれぬな、だが、その頭痛も心配することはない、休憩室にいけば、手当をしてくれる者もいる」
「分かりました、では、これにて私は失礼致します」
話していた、彼が静かに退室した。
丁寧に最後には、お辞儀をしている。
「ふん、フィアーズ・コードがあるから使っているものを、クシュリナボックスがあれば、原川 京朗、お前は用済みだ、それまで、散々使い倒して、ボロ雑巾のように捨ててやる!」
「あの憎いフィアーズの民!必ず次こそは殺してやるぞ!」
その後、その室内には、禍々しいほどの、笑い声が響いた。
……
…
なえか、咲、陽樹が、家に来たので、俺の部屋に通し、そこでなえかと咲が持ってきた料理を見せてもらうことになった。
二人が、無言で作ってきた料理が入っているお弁当の蓋をあけると……。
異臭がした。それも、とても耐えられるような異臭ではない。
臭くもない、でもこの臭いはやばい。
「この臭いは……なえか、まさか―」
「え!?わ、私何も入れてないよ!?」
「本当か?入れた調味料を言ってみろ」
「う、う~んと、塩でしょ、砂糖でしょ、醤油でしょ、七味でしょ、コンソメスープでしょ……」
聞いている内に、なんてものを持ってきたんだよ!という気持ちになった。
「なえか、お前は調味料は何を入れてもいいと思ってるのか?」
なえかの顔が曇る。
「えー……そんなことないよー、あははー」
必死にごまかそうとしている。
その時。俺の横にいた陽樹が、なえかの弁当に手を伸ばし、料理とはいえない、黒くコゲたものをすくい上げて、口に入れた。
「うっ……げぱら」
げぱら?と思ったのも一瞬だった、その直後、陽樹は泡を吹きながら、見事に倒れた。
「って、陽樹大丈夫か!?」
「わ!秋日くん!大丈夫?」
「……」
なえかは今にも泣き出しそうな顔だ。咲は陽樹の肩をゆすろうとしている。
あの学園のアイドル、原川 咲が、秋日の肩をゆすっているのに返事がない、ただの屍のようだ……じゃなくて、普通なら、あの学園のアイドルに肩触ってもらったぞ!とか言い出しそうなのに言い出さないということは。
気絶してるのか、
「う、ははぁ~」
何故か凄く幸せそうな顔になりやがる。気絶してないのか、いや、そんな器用なことをできる奴じゃないか。
「咲、放っておいてやってくれ」
「え?、でも……」
「いいの、放っておいて」
俺となえかに言われて、咲はおずおずと頷く。
「それじゃあ、咲のを食べてみるか」
「うーん……上手くできたか自信ないけど、お肉とお野菜の炒め物食べてみて」
咲はお弁当を開いた、中身はとても上手にできていると思う。言ったら悪いけど、なえかの料理とは比べ物にならない……と思う。
俺はお箸で、肉と野菜の炒め物を、食べた。
「美味しい!咲、これなら喫茶店で出せるんじゃないのか?」
「あ、ありがとう、でも、このままだとコストが掛かりすぎるから、ダメかな」
咲が顔を赤らめている、顔を赤らめるようなことを言ったか、俺は。
「へー、じゃあ私のも食べてよねぇ?」
なえかがめちゃくちゃムカついているという顔で、こちらを見る。
なんでそんなに怒ってるんだよ!
「あ、あぁ」
俺は地獄と知りつつ、なえかのお弁当に入っている「物」を掴んで口に入れた。
直後。俺は気を失った。薄れゆく意識の中で俺は、あぁ、なえかの料理は子供の頃から全然進歩してなかった。と思った。
……
…
「うっ……」
俺は意識を取り戻した……けど、目線が横になってる、何故だ?と思いつつ、顔を左に向けると、そこには咲の顔があった。
「あ、や……うっ」
咲が、とび跳ねた。俺はその衝撃で頭が宙に浮く、そしてそのまま落下。
「いて!」
俺は見事に、床に激突した。周囲を確認する。そこには、顔が真っ赤に沸騰と言っていいほど赤くなった、咲。
そしてここは俺の部屋だ、でもなえかと陽樹がいない。
そこから導きだされる結論は……なんだ?誰か教えてくれ。
とび跳ねた後の咲は。
「うっ……あ……じゃあね!輝くん!」
と言って、もうそこら辺の体操選手には負けないんじゃないかと言うほどの、走りで、俺の部屋からでて、すぐに帰っていった。
俺……何かしたか?いや、俺は何もしてないはずだ。
えーと、俺の頭が横に向いていて、左を向くと咲の顔があった。右には温かみがあった。
ということは、俺は咲に膝枕されていた……?
直後俺の顔が熱くなる、何故熱くなるのか意味が分からない、ってまぁ……分かってるんだけどな、でも咲がなんで膝枕なんてことをしていたのかが謎だ。
俺も一般的に健全な男子な訳で、などを色々考えていると、なえかと陽樹が扉を開けて、入ってきた。
「あれ、咲は?」
「ん、あ……え?」
「何言ってるの?って、変なことしたんでしょ」
「してねぇよ!」
「してる人は皆そういうの」
してねぇ奴もいうぞ…てか、これで無実の奴が、有罪になってたりするのか。
「輝、感触はどうだった」
陽樹が変なことを聞いてくる、何を言ってるんだ、こいつは。
「感触って、なんのだよ!」
「はぁ!?何言ってるんだよ!胸だよ、おっぱい!そんなこともわからねぇのか!?」
真面目な顔で言いやがる。
「分かるわけねぇだろ!それに触ってもいないぞ!」
「触ってもいない、触ろうとしてたんだな?」
おいおいおい。
「違う、そういう意味じゃない」
「じゃあ、どんな意味だ」
「だから何もしてないって言ってるだろ」
陽樹はボソボソと何か言っている。
俺にはこう聞こえた。「いつか尻尾を掴んでやる」
何もしてないのに、掴む尻尾もねぇよ……。
「ところで、何処に行っててたんだ?」
「輝が気絶したから、その間に私のお弁当を家に置いてこようとしたら、陽樹もくるって言ったから、咲と輝の二人にしてたんだけど……」
「そしたらこうだったから……」
場が凍る。やばい、なえかから、ゴゴゴゴゴと言っていいほどの何かがでている、どうしたらいいんだ!
俺の、ポケットに入れていた。通信機が震える。
「甲長くん、聞こえる!?なえかさんもいるわね?アルクェル帝国のロボットがこっちに向かって来てるのわ!今大気圏に入ろうとしているわ、急いで、外にでてファリクサーとフィクサーを呼んで!
原川さんにも、すぐに連絡するから!」
それだけ伝えて、日々之さんの通信は切れた。忙しい人だ……。
きっと落下予想地点はファリクサーに送ってあるはずだ。
これは初めて言うけど、ファリクサーのコックピットなどには、予め、パイロットスーツが備えられている。
それをコックピット内で着るんだから、一苦労する。
俺となえかは、すぐに、玄関から外にでて、念じた。ファリクサー。
すぐにファリクサーが頭上に現れる。一体どうやってこんなに早く来ているのか謎だ。今ここで気にしても仕方がない。
すぐにコックピットに乗り込んで。戦闘モードへ移行。ファリクサーを飛翔させる。
俺はすぐに落下予想地点にファリクサーを向かわせた。
落下予想地点は、遺跡だった。これが何を意味するか、俺はまだ知らなかった。
……
…
ファリクサーが遺跡と思われる場所に到達するなり、スパイラルユニコーンをウェポンコネクトし、ディメンションブレイクを行う。
周囲の空間が歪む……かと思われたが、それがキャンセルされる。
「なっ……」
輝は、もう一回ディメンションブレイクを行う。が、またもや、キャンセルされる。
「どういうことだ……」
その時。上空から、物体が降ってきた。そこに現れたのは、フォクサーだった。
しかも、たった一機である。
そこにフェクサーとフィクサーも駆けつける。
「輝!」
「輝くん!」
「咲、なえか!前みたいなことがあるかもしれない、慎重に行動してくれ、いくぞ!」
「「うん!」」
ファリクサー、フェクサー、フィクサーはフォクサーから一定の距離をとった。
「その判断は、愚かだ」
「何!?」
直後。何もない所から敵が現れた。違う、周囲の景色をとりこんでいただけだ。
不意を突かれた、フェクサーとフィクサーはその敵からの攻撃が直撃した。
「くっ」
「うっ」
「咲!なえか!」
輝がフェクサーとフィクサーに駆け寄ろうとするが、既に遅かった。
ファリクサーが背後を向いたのを、フォクサーは見逃さなかった。
すぐに、フォクサーはファリクサーに容赦なく攻撃を仕掛けた。
その衝撃で、ファリクサーが吹っ飛ばされる。完璧に戦力を分断した、フォクサーは、ファリクサーに追撃をかけに行く。
フェクサーとフィクサーは周囲に溶け込む敵を相手に、戦いを初めていた。
この時、既に勝負は決していたのかもしれない。
……
…
「っ……咲の所へすぐに戻らない……とっ」
輝は体をなんとか動かし、ファリクサーを立たせる。が、すぐにフォクサーが目の前に現れ、追い打ちをかける。
左、左、右、右足払い。
あまりの連続攻撃に、体勢を崩したファリクサーは地面に叩きつけられる。
「く、そっ!」
なんとか、ファリクサーはスパイラルユニコーンをフォクサーに向け、叫ぶ。
「ディメンションブレイク!」
「おっと……」
フォクサーはすぐに、距離をとる。
「分かるぞ、お前は焦ってる、あのパイロット達を守らないといけないと」
「……ッ、うおぉぉぉ!」
ファリクサーは無理な体勢を即座に立て直し、フォクサーへ向けて一直線に、突撃する。
「その焦りが、人を弱いものとする、そんな弱い奴らにやられていたなぞ、屈辱」
フォクサーが、突撃してきた、ファリクサーの左横に周り、ファリクサーの左腕を手刀で切り落とす。
清々しいほどの音をたて、ファリクサーの腕が切断される。
「ぐッ」
「この程度か、いや、この程度の奴に、やられていた、俺も……か、この屈辱、今断ち切る」
直後。大地が揺れた。
「むっ、この反応は……ウェポンボックスか!」
遺跡から、姿を現した、ウェポンボックス。
それはガトリングバイパー。ウェポンボックスの一つ。そして、ガトリングパイバーの条件は、「自信」
「なっ」
ガトリングバイパーは、なんと、ファリクサーを、輝を狙ってきたのだ。
ガトリングバイパーの銃砲が唸る。それがファリクサーに直撃する。
「な、どうしてだ!」
「分からないか?俺には今お前を倒せる自信が満ち溢れている、それだけだ!」
「ウェポンコネクト!ガトリングバイパー!」
ガトリングバイパーが、フォクサーの左腕に装着される。
蛇のような長身がそのまま砲身になっていると言ったらいいだろうか。
とても不気味な形状だ。
「ガトリングバイパー!アタック!」
ガトリングバイパーの砲身が伸び、更に、銃口が現れる。
その銃口がファリクサーにセットされると同時に、フォクサーは引き金を引いた。
銃口から、でた、光は、そのままファリクサーに直撃するかと思われた。
「ダメぇぇ!」
ファリクサーの目の前に現れたのは、フェクサーだった。フェクサーの固有武装である、オーパルシールドを全開で展開させた、フェクサー。
オーパルシールドに銃口からでた弾が直撃する、それが何度も当たる内に、シールドに亀裂が入っていく。
「咲!やめろ!」
「ううん、私が輝くんを守る、私が!」
シールドが拡散する。フェクサーが自分の身で、ファリクサーに迫る弾を弾く。
「なっ……ぐあ……あぁぁぁ」
フォクサーが、突如動きを停止する。声も聞こえてこない。
違う場所で戦っていた、敵がこちらに気づき、こちらに近づいてくる。
「京朗殿!おのれ……!」
敵が、フォクサーを抱え撤退する。
「咲!大丈夫か!咲!」
輝は、ファリクサーから降り、横たわっている。フェクサーのコックピットに駆け寄り、コックピットをあける。
すると、そこには、頭から血を流した咲が横たわっていた。
第十話 オワリ
第十一話へ続く