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次の日。マコト君がいる白い建物に着くと、なにやら話をしているみたい。昨日いた女
の人と知らない眼鏡をかけた男の人。時々、うなずいているマコト君。どうしたんだろう。
女の人たちが部屋から出ると、マコト君はすぐにあたしがいる方へ向き直り、にこっと笑
った。
ちくちくちくちく
昨日よりも胸の痛みが鋭くなったような気がする。……なんだか苦しい。
「やっぱりバンシー来てくれてたんだね。待ってたよ」
カラカラと窓を開けてさらに微笑むマコト君の顔がとても……。
(さっき、なにかお話してたみたいだったけど……なにかあったの?)
「……僕の手術の日が決まってね。治る可能性は低いけど、成功したら元気になるかもし
れないんだ。だから、その話をしていたんだ」
(しゅじゅつ?それってマコト君が元気になるおまじないなの?)
「んー。おまじないっていうか、魔法っていうか……難しいな」
(元気になるといいね)
「うん!僕が元気になっても、バンシーは僕と友達でいてくれる?」
(っ⁉あたしと……友達に……?)
「そうだよ!……いやかな?」
(う、ううん。その……あたし、友達ってほんと少なくて……その……)
「ありがと!嬉しいよ」
ちくっ
まただ。さっきよりも痛くなってる……。苦しい。これが、言ってた恋っていうのかな。
マコト君と話していると、時間が経つのが早く感じる。あたしが来たときはまぶしい時間
だったのに、今はもうオレンジ色に染まっていた。……こんなに話したの初めてかも。
「マコト君。寒くなるから窓閉めなさい。今日もまた独り言?」
「そうだよ。えへへ」
「……程々にしておきなさいよ。……そういえば、そろそろあれの時期ね」
「あれ……?バレンタインのこと?」
「そう。今年もたくさんもらえるんじゃない?」
「……どうだろうね」
一瞬、マコト君の顔が曇ったように見えた。とても寂しそうで、今にも雨が降り出しそ
うな……重たい雲をまとっているようだった。それと、さっき女の人が言っていたばれん
たいん?っていう言葉が気になった。
(マコト君。ばれんたいんってなぁに?)
「バレンタインデーっていうのは、女の子から好きな男の子にチョコをあげる日のことを
いうんだよ」
(へぇ。マコト君物知り♪)
「でも、今回はもうないかもね。だって……今はここにいるし」
(お友達はここにきているの?)
「ううん。僕がここに来てから一回も……。お父さんお母さんは仕事が忙しくて時々しか
……」
(……そうなんだ)
「でも、バンシーは毎日きてくれて本当に嬉しいよ。僕、バンシーと色々お話できてとっ
ても楽しいよ。ありがと」
ちくっ ちくっ ちくっ
胸の痛みがいたずらに笑っている。ほらほら、好きなんでしょう?言っておしまいなと
くすくす笑いながら。
「……そろそろ先生が部屋に来る頃だ。バンシー、また明日」
(あっ!あのっ!マコト君。その……マコト君。その、「ちょこ」っていうお菓子、貰えたら
嬉しい?)
「そりゃあ、嬉しいよ。今の状況が状況なだけにとっても励みにもなるし」
(……そっか。わかった)
「あ、先生が来た。またね」
急いで窓を閉めたマコト君は、昨日いた眼鏡の男の人となにか話をしていた。今日はち
ょっと長かったかな。しゅじゅつっていうことについてお話しているのかな……。あっ!
こうしてる場合じゃない。あたしだってやることがあるんだった。マコト君の横顔をもっ
とみていたかったけど、今はおあずけ。今度、たっくさんマコト君とお話するために。




