芽生え
長らく更新出来ずに申し訳ないです。
トイレから戻ると、俺以外のクラスメイトは既に揃っていた。
俺は一瞬だけ遅刻をしたのかと思ったが、そもそも予鈴は鳴っていなかったし、何よりも時刻を確認すると、まだ朝のホームルームの時間までは五分程あるので、トイレに行ってて遅刻という間抜けな事を起こしたわけでは無かった。
予鈴がなり、ホームルームが始まった。
ホームルームのやり方も前世とは違う。
前世では教師が教室前面に立ち、生徒に連絡事項を伝えるというやり方だった。
しかし、今世では自分の座っている机に教師のARが表示され、そのARが連絡事項を伝えるというやり方だ。
正直、どんなやり方をしようとも、ホームルームでの教師の話を聞く生徒など一割にも満たないと思うので、俺は無駄な技術を使っているなとしか思わなかった。
事実、ホームルームが始まったというのに、いまだに会話をしている生徒が多数いる。
これでは、教師が直接連絡した方が良いのではと思ったが、そこには俺には分からない学校側の何かしらの考えがあるのだと思い、これ以上考える事を止めた。
ホームルームが終わると、突然教室の扉が開いた。
扉を開け、教室に入って来たのはラフな服装をした若い女性教師だった。
些か教師とは思えない格好だが、入学式の時にその姿を確認しているので、俺にはこの女性が教師だと瞬時に分かった。
その若い女性教師は、教室前面に立つと、話を始めるかの如く教室全体を見回した。
「皆さん入学おめでとうございます。このクラスの担任の泉樹瑞希と言います」
若い女性教師……泉樹先生はどうやら担任らしく、簡単な……それこそ名前を名乗る程度の挨拶をした。
クラスの皆は突然の出来事に、何もリアクションを取れないでいる生徒が多々居た。
もっとも、敢えてリアクションを取らないでいる生徒も居るが。
「それでは、皆さんの方からも自己紹介の方をお願いします。自己紹介と言っても名前を名乗る程度良いので、固くならないで下さいね。それでは、出席番号一番の子からお願いします」
続けて泉樹先生は、俺達に自己紹介をするように促してきた。
自己紹介をさせる事に別段驚く事ではないが、何だか強引に自己紹介までの流れを持っていくなと俺は感じた。
「出席番号一番の青木清志郎です。よろしくお願いします」
そして、先生の言葉から数十秒が経つと、のそのそと気だるそうに出席番号一番の生徒が立ち上がり、自己紹介をした。
その生徒に続き、二番三番と生徒が次々に自己紹介をし、遂に俺の番が回ってきた。
「出席番号八番の月如深夜です」
「君が噂の月如君ね……」
俺は何の面白みも無い、それこそ普通の自己紹介をした。
しかし、今まで何のリアクションも見せなかった泉樹先生が、俺の普通の自己紹介に対してだけ反応を見せた。
泉樹先生の反応を見る限り、試験部屋を壊した噂の月如君と言った、言わば目をつけいているニュアンスの言い方だったが。
「ごめんなさい。流れ止めちゃったね……次の子どうぞ」
泉樹先生は、自分が反応を見せたことによって自己紹介の流れを止めてしまったことを察して、クラスにそう言葉を掛けた。
――
俺が自己紹介した後の生徒達先生が反応を見せる事は無く、何事も無くスムーズに自己紹介は終わった。
「では、自己紹介が終わった所悪いですが、この文章を何時でも良いので読んでおいて下さい……十三時になったら自由に下校して良いですよ」
自己紹介が終わった後、泉樹先生はそう一言言い残し、教室から去っていった。
(自由下校か……それにしても文章とはどこにあるんだ?)
俺はこの文章とは一体どの文章だと思ったが、それも一瞬の事だった。文章は、机にしっかりと表示されていた。
「年間行事ね……」
文章という程長々とは書いていなかったが、本校における年間行事内容がその文章には書かれていた。
俺は流し見程度に年間行事内容を見たが、九月の行事内容に一つ気になる行事があった。
それは、「魔法祭」という行事だ。
名前と時期から察するに体育祭の魔法バージョンだと思うが、どのような競技をするかは想像もつかなかった。
単純な魔法の撃ち合いでは、危険極まりないし、何よりも単純な魔法の撃ち合いでは、強者が弱者を痛ぶるだけの競技になってしまう。
それならばクラス代表を選出し、代表同士で競技をやらせれば良いとも考えるかもしれないが、そもそもこの学校のクラス分けのやり方では、それこそAクラスの代表が、他のクラスの代表を痛ぶるだけに終わってしまう。
(一体何をやるんだろう……まぁいずれ分かるか)
まりんに小学校の時に何をやったか聞くという手段もあったが、俺はそうしなかった。行事の内容はいずれ分かる事だし、何よりも魔法祭近くで競技内容を知れた方が競技への期待感……と言って良いのか分からないが、それは高まるだろう。
「ん?十三時になったか」
俺がそんな事を考えている内に、いつの間にかに十三時になっていた。
いつの間にかと言っても、考え始めてから二、三分程しか経っていないが……。
「まりん帰……」
俺はまりんに「帰るぞ」と呼びかけようとしたが、まりんの姿を見てその言葉を言うのに思いとどまった。
なぜならまりんは既に、友達と呼べるかは分からないが、クラスの女子生徒と楽しそうに談笑をしていたからだ。
その談笑している中に俺が「帰るぞ」なんて声を掛けるのは、空気が読めない……所謂KYというやつだ。
しかしながら、まりん一人を置いて帰るのも違う気がする。
「ちょっとイイか?」
俺はどうすべきか立ち往生していると、高宮から声が掛かった。
「なんだ?」
俺はまた面倒くさい事になりそうだなと思いつつも、高宮に了承の意思を伝えた。
「付いて来い」
高宮はそう言い、首で向かう方向を差した。
……まるで喧嘩をする前の雰囲気だ。
俺はいざとなったらやり合う覚悟で、高宮について行った。
第4部の父親の過去が編集の結果、文字数が多くなってしまった為分割したいと思います。




