入学式
加筆として、苗字偽装の回で今回出て来るとある人物が、この学校に在籍をしている様な会話を入り混ぜました。
「新入生はこちらになります」
よく通る声が、学校の門から響き渡る。
今日は神奈川第一魔法学校の入学式の日だ。
新入生はこれから過ごす高校生活に胸を踊らせたり、はたまた不安を感じたりもするだろう。
俺とまりんは、その学校の門の前まで来ていた。
「何だが緊張してきた……」
「そうか?」
門の前に居た在校生の誘導を受けつつ、入学式の会場である体育館に向かっていると、まりんがそんな事を言い出した。
「深夜は何で緊張しないの?」
「何でって言われてもね……」
まりんは俺が緊張しない事に不思議がっていたが、それは仕方が無い事だ。
俺は前世で入学式というものを三回経験してきた。今回のを合わせると四回目になる。さすがに慣れてくるものだ。
「あれれ?……そのシルバーアッシュの髪色は、もしかして月如君かな?」
まりんと会話しつつ会場に向かっていると、突然誰かに話し掛けられた。
俺は話し掛けられた事によって、反射的に声の聞こえた方に顔を向けた。
まず目に付いたのは、神奈川第一魔法学校の女子生徒の制服。そして、腕に巻かれている「生徒会」と書かれた腕章。
これはその名の通り、神奈川第一魔法学校の、生徒会に所属している生徒だと言うことを表している。
次に目に入ったのは、相手の髪色だ。その髪の色合いは、自分の母親とそっくりの美しい白色だった。
「初めましてと言った方がいいのかな?……私の名前は白露冬湖と言います。これからよろしくね」
……何というか面影があるとしか思えなかった。
似ている。自分の母親に物凄く似ているのだ。何がとまではハッキリとは分からないが、髪色然り雰囲気等が自分の母親を連想させるソレだった。
「よろしくお願いします」
俺は取り敢えず、よろしくお願いしますとだけ返しておいた。
「月如君は有名なんだよ」
俺が挨拶を返すと、白露さんは突然そんな事を言い始めた。
俺からしてみると、有名になるような事をした記憶は、一切無い。
「実技試験で部屋を壊す……今までそんな事をやらかした受験生は居ないってね」
白露さんは楽しそうに笑いながらそう言った。
俺は馬鹿にされているのかと一瞬思ったが、それは違うと思った。
白露さんの表情は、玩具を見つけた子供の表情にそっくりだったからだ。
おそらくだが、俺の実技試験部屋を壊したという行為が白露さんの何らかのツボに入ったのだろう。
「そ、そうですか」
俺は当たり障りの無い返答をした。
「そう、だから期待しているよ」
白露さんは最後に一言そう言い、校内に消えて行った。
――
体育館に着くと、既に新入生はかなりの人数が集まっていた。
別段俺とまりんが遅く来たわけではない。
座席の指定は特に無いので、俺とまりんは一番後ろの席に座る事にした。
前世では入学式の前にクラス発表をし、そのクラスで入学式の席を決めていたが、今世ではそれが無いようだ。
「深夜……暇」
突然隣に座っていたまりんがそんな事を言い始めた。つい先程までは緊張すると言っていたのに、その様子はどこへ行ったのやら。今は暇という感情を持てるぐらいには、平常心を保てているようだ。
「後数十分ぐらいは我慢しなと言いたいところだけど、俺も少し暇だな……しりとりでもするか?」
俺も暇を持て余していたので、まりんにしりとりの提案をした、
センスが無いと思われるかもしれないが、ぱっと思い付いたのがしりとりしか無かった。
そもそも、今の日本にしりとりが存在しているのかが疑問だが。
「しりとりって昔遊びのやつ?……」
どうやらしりとりは昔遊びになっているらしい。
「そうだよ。じゃー俺からいくね。りんご」
「ごりら」
「らっぱ」
……………………
こんな感じで俺とまりんは、しりとりで入学式までの時間を潰す事にした。
――
「神奈川魔法第一学校の入学式を挙行致します」
どうやら入学式が始まったようだ。
俺にとって今世での学校生活は、今まで経験した学校生活とは全くの別物になるだろう。
魔法然り、前世では居なかった幼馴染みの存在。その他にも魔法学校では様々な出来事が起こるだろう。
俺はそんな学校生活を想像し、胸を踊らせながら入学式に臨んだ。




