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凛耶の心情[1]

  俺は今仕事ではなく、私用でとある家に向かっている。

  何故()に生きている俺が私用でとある家に向かっているかというと、それは如月家の()()()の息子に依頼をされたからだ。


  如月家の当主の夜光やこうは、優秀ではないと思っているみたいだがな。


  ⋯⋯まぁそれはいい。


  依頼の内容はこうだった。


  息子が魔法を使えるようになったから、指導をしてほしいとの事だった。


  俺は何故魔法指導の為に、お前の家に行かなくてはならないのかと聞いた。

  に生きている人間に直接依頼をするような内容は、基本的にお偉いさんの暗殺や名門の破壊などの、常人には到底出来ないような内容だからだ。


  だが、次の言葉で俺は納得した。


  「俺の息子は二歳にして大嵐テンペストを発動した」


  にわかには信じられない話だった。

  二歳で天災級魔法を扱うなど、前例の無い話だからだ。

  二歳では生活魔法が使えれば、天才と言える。それをこいつの息子は天災級魔法を使うと言うのだ。

  もはや、人外の域に達している。


  さらに、続けて如月紅夜はこうも言った。


  「息子は大嵐を使えるだけではなく、()()も持っている」


  ⋯⋯これはもう神だ。

  これが事実なら、神が降臨したとしか思えなかった。

  別段俺は神を信仰する宗教などには入信していないが、こんなイカれた能力を二歳の内から秘めているとなると、そいつは神ではないのかと思ってしまう。

 

  「へぇー⋯⋯なるほど」


  俺は平静を装いつつ、素っ気ないリアクションを取った。


  「どうだ?指導する気になったか?」


  目の前に居る如月紅夜はこう聞いてきた。


  そんな子供が実際に居るなら、興味を持たない人間はまず居ない。

  それがの人間ならば尚更だ。


  「あたりまえだ⋯⋯お前の息子を指導してやるよ」

  「取り引きは成立だな⋯⋯」

  「あぁ、そんなイカれた子供を見れるなら料金は要らない」

  「それは助かる」


  これで如月紅夜との取り引きは終了した。


  こいつの息子が正道に進めば、間違いなくこの世界はいい方向に変わる。

  だが悪道に進めば、確実に世界は崩壊する。


  (さて、どんなヤツか見極めてやろうか)


  俺は件の二歳児に()を抱きつつ、如月紅夜の家に向かった。




 ――


 


  如月紅夜の家に着いたが、件の二歳児はまだ寝ているようだ。


  「一つ聞くが、どこまでならやっていいんだ?」


  俺はどこまでやっていいのかを聞いた。

  かなり具体性に欠ける言葉だが、この男なら理解出来るはずだ。


  「生活に支障がない程度には抑えてくれ⋯⋯間違っても殺すなよ?」

  「こんな期待できる子供を殺すわけないだろ」

 

  如月紅夜の俺への印象は、残虐非道と言ったところか。

  間違ってはいないが、俺は子供を殺すような事は絶対にしない。


  如月紅夜と会話していると、部屋の扉が開いた。

  そこから現れたのは、件の二歳児だった。


  「おはよう」


  如月紅夜の息子は「おはよう」と言いながら部屋に入って来たが、その目はしっかりと俺を捉えていた。

  しかもその目は、俺の事を値踏みする様な目だった。


  ならば俺も、この子供の品定めを開始するか。


  まず何と言っても特徴的なのは、溢れんばかりの魔力量だろう。

  基本的に魔力は魔核に納まっているが、この子供の場合は魔力量のおよそ八割程は溢れ出している。

 

  これはこの子供が魔力を制御出来ていないのではなく、膨大な魔力量に本体である魔核が対応出来ていないだけだ。


  次に特徴的なのは、髪色だ。


  髪色は、得意属性魔法と保有魔力量である程度決ってくる。

  炎属性なら赤色、水属性なら青色になる。

  しかし、得意属性の髪色になるのは稀で、得意属性の魔法の髪色にならない場合の方が多い。

 

  そして、保有魔力量では色の濃さや美しさが変わってくる。

  魔力量が多ければ多い程、色の濃さや美しさに磨きが架かる。

  本当に稀有な存在ではあるが、宝石のような美しい髪色になる人も居る。


  だが、この子供の髪色は銀色なのだ。

  正確にはシルバーアッシュと言った所だろう。

  地毛でこの髪色の人を俺は見たことが無い。


  これは俺の推測だが、あまりにも膨大な魔力量のため、本来の髪色である黒髪が色落ちして、シルバーアッシュになってしまったのだろう。


  (⋯⋯とんでもない子供だ)


  俺の中でのこの子供の評価は、その一言でしか表せなかった。

 

  俺の品定めが終わると同時に、子供の方の俺への品定めも終わったようだ。


  子供の方からは何もアクションを起こしてくる気配が無かったので、俺の方からアクションを起こす事にした。


  「おいおい、このガキに魔法を教えるのかよ」


  俺は性格を見極めるべく若干煽りが入った言葉を投げ掛けたが、子供の方は全く意に介していない様子だった。


  「てか、こいつ言葉話せるのか?大嵐ってしっかり言えんの?」

  「大丈夫だ。しっかりと話せる」


  俺はさらに言葉を発したが、子供の方ではなく如月紅夜の方が反応してしまった。


  だが、これで俺は確信した。

  この子供には、同年代には絶対に無い知性がある。


  そして、間違いなく大嵐を使う事が出来る。

  俺は確信を得ると同時に、こいつの魔法を見てみたいという欲求が湧いてきた。


  「なら、俺に撃ってみろ」


  俺は無意識の内にそう言っていた。


  その言葉を聞いた子供は、明らかに困惑した表情をしていた。


  (なるほど⋯⋯知性があるのも困り者だな)


  まさか、この言葉で動揺を誘えるとは思ってもいなかった。

  俺は思わぬ収穫を得たと内心で喜んだ。


 


  その後如月紅夜の指示に従い、子供の魔法を見るべく隔離空間アイソレーションを発動した。

元々隔離空間は、()()()が医療用に開発した魔法だが、結局不完全の出来に終わり、今となっては応用力がある魔法程度の認識でしかない。


  そして、俺はこの子供と会話をする為に脳内疎通テレパシーを発動した。

  いくら知性があるとはいえ、口は回らないだろうと判断したからだ。


  まず、俺はこの子供の呼び名に困っていたので、名前を聞くことにした。


  『さて、これでお前と話せるわけだが⋯⋯まずはお前の名前を言ってみろ 』


  俺は脳内疎通でこの子供に向けてそう話した。

  だが、子供の方からは返事が帰ってこなかった。

 

  (無視か⋯⋯いや、まさか)


  俺はやってしまったと思った。

  脳内疎通は通常の魔法とは違って、魔核を使う魔法だ。

  それをこの子供は知らない。

  つまり、脳内疎通で会話するのは不可能という事になる。

 

  脳内疎通で会話出来ないのかと思い、落胆していると、唐突に子供の方から脳内疎通で返事が来た。

 

  『 俺の名前は、深夜だ』


  ⋯⋯俺はこの子供に驚かされてばかりだ。

  通常魔核を使うには、数年のトレーニングが必要となる。

  それをこの子供⋯⋯深夜は一瞬にして使い方を理解したのだ。


  (やはり深夜は紛うことなき天才だ)


  俺は改めて深夜の天才具合を実感した。




  そして俺は深夜に大嵐を発動させるように催促した。


  深夜は何か言いたそうな顔をしていたが、すぐに大嵐を発動させた。


  (ふっ⋯⋯化物だな)


  俺はその大嵐を見てそう思った。


  深夜の発動した大嵐は、天災級魔法と言われる通りの威力を発揮していた。

  対風魔法用の結界を隔離空間の中に仕込んでいたが、十秒も持たずに破壊されそうになっていた。


  このままでは俺自身に被害が及ぶと思ったので、すぐさま相殺レジストした。


  『 はぁーんやるじゃねーか。まさか本当に大嵐を使えるとはな』


  俺は無意識にこの子供に言葉を投げ掛けていた。


  これは心から思っていた事ではなく、俺の本心を隠す為に無意識に出ていた言葉だった。


  そして、俺は決めた。

  ただ深夜を指導するのではなく、子供の内に()()()()ように指導すると。

 

  なぜ俺がそこまでするのか⋯⋯それは深夜が俺の願いを達成する為の鍵になりそうだからだ。


  こうして俺は人生で二回目の表舞台立ちを果たした。

文字数が多くなってしまったので、分割して投稿します。

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