凛耶との対戦
遂にこの日がやって来た
今日は凛耶との別れの日だ。
あと数時間程で凛耶が来る
それで凛耶と会うのは最後だ。
こう思うと、今日までの日々は色濃かったと思う。
お互いに毒を吐きあったり、魔法をぶつけられたり、隔離空間に閉じ込められたりとか・・・・・・あれ?そう考えると俺って虐められてたのか?
・・・・・・まぁいい。俺も凛耶に刺のある事を結構言ったしお相子だろう。
何だかんだ言いつつも、楽しかった日々だった。
それが終わると思うと少しだけ目頭が熱くなってくる。
俺は若干センチメンタルになりつつ、凛耶が来るのを待った。
――
「おう、深夜待たせたな」
凛耶はいつも通りの時間に、いつも通りの表情で来た。
だが、一つだけ違う所がある。
それは服装だ。
普段はジャージを着ているが、今日は魔法使いらしく黒のローブを着ている。
そして、首にはチョーカーを着けている。あれがおそらく魔法具だろう。
「いや、待っていない」
ここで待ったと言えばいつも通りの光景になるが、それでは駄目だ。
「・・・・・・そんじゃ始めるか・・・・・・隔離空間」
凛耶は一言そう言い、フードを被った。
(フードを被ると視野が狭まる筈だが・・・・・・)
そんな事を考えながら俺も構えを取った。
沈黙が周囲を包む。
今なら百m先の話し声が、耳元で囁いてる様に聞こえてきそうだ。
俺と凛耶は視線を交えたまま、一歩も動かない。
(・・・・・・このままだと埒が明かないな)
沈黙を破る、地面を蹴る音がする。
先に動いたのは俺だ。
まずは、全身に強化を全身にかけた。
自分自身のスピードが格段に上がるのが分かる。
対する凛耶は何のアクションも起こさず、ニヤついた表情を崩していなかった。
俺は不審に思いつつも、そのまま接近した。
「 炎拳!!」
俺は凛耶の手前五mで魔法を発動させた。
ここまでくれば何かしらのアクションを起こすだろうと思ったが、凛耶の表情は相も変わらずニヤついたままだった。
「接近戦ね・・・・・・」
接近して来る俺に対し、凛耶はニヤついたまま一言だけそう言った・・・・・・その直後だった。
辺り一帯にとてつもない強風が吹き荒れた。
台風なんて目じゃない風だった。
俺は強風に耐え切れず、後方に飛ばされてしまった。
「俺が接近戦に弱いと踏んだようだが、それは甘い・・・・・・それに俺は接近戦は苦手ではない。お前が懐に入れたとしても、何も出来ずに終わってたぞ」
何かしらの魔法で対処されるのは想定内だったが、接近戦が苦手ではないのは、想定外だった。
しかも、懐に入ってくれば叩きのめせるとも言ったのだ。
「そうかい・・・・・・ならこれはどうだ?」
だが、俺は懲りずに凛耶に突っ込んだ。
「何回やっても無駄だ」
凛耶はそう言って魔法を発動させた。
・・・・・・俺はそれを狙っていた。
凛耶は俺が魔法を見れる事を知らない。
無発声で発動している魔法を見破れるわけがないと高を括っている。
そこが狙い目だ。
「烈風!!」
俺はウインドを発動させ、凛耶の魔法を相殺し、懐に突っ込んだ。
距離にして二m。俺の射程圏内には十分入っている。
「!?相殺か」
さすがの凛耶も魔法を相殺された事に、驚いている様だ。
「炎拳!!」
俺は驚いている凛耶に、ここぞとばかりに炎拳を放った。
否、放とうとした。
「!?」
凛耶の腕がほんの少しだけ動いた。
俺はその動作を見た瞬間、全身に悪寒が走り、無意識の内に横へ飛び退いていた。
「やるじゃねーか!今のを避けるとはな」
凛耶の言葉に釣られ、俺は先程まで自分が居た場所を見た。
その場所を見て俺は唖然とした。
地面が抉れていたのだ。
それも、隔離空間の地面をだ。
俺が何度大嵐を打ち続けても、傷一つ付けられなかったのに、凛耶は腕をほんの少し動かしただけで、地面を抉ってしまったのだ。
それに、この動作に気付いたのは偶然の産物だった。
偶々俺の視線が凛耶の腕に行っていただけで、意識して見ていたわけではない。
(地力が違いすぎる)
こうして直接対決すると凛耶の強さがよく分かる。
現に、俺はまだ凛耶の事を一歩も動かせていない。
「おいおい、まさかこれで終わりじゃねーよな?」
俺が戦闘中にも関わらず、抉れた地面を見続けているのを見て、凛耶はそう言った。
「まさか、そんなわけないだろ?」
「なら、早く秘策を見せろ。こんなちまちました事をやってても、俺にかすり傷さえ与えられないぞ?・・・・・・まぁその秘策にも今までの様子を見る限りだと期待出来ないがな」
確かにこのままではかすり傷すら与えられない。
しかし、秘策を使うとなると・・・・・・いや、使うしかないな。
それに凛耶のこの言葉は、お前の攻撃なら受けきれると言っている様なものだ。
「凛耶!俺は次の魔法で最後の攻撃にする」
俺はそう宣言した。
「言うじゃねーか・・・・・・さっさとその魔法を見せてみろ。俺はどんな魔法を使われても絶対に死なねーから遠慮なんてすんなよ」
凛耶は俺の宣言を聞き、少しだけ身構えた。
俺は凛耶の死なないという言葉を聞き、安心した。
俺の使う魔法・・・・・・技は、遠慮なく発動した場合、俺と凛耶が死んでしまう可能性があるからだ。
そんな技を使う必要は無いと思うかもしれないが、俺の今使える魔法や技でこれ以外に凛耶を倒す手段が思いつかなかった。
「最後にもう一つだけ聞いても良いか?」
「あ?何だ」
「もし、俺自信が死ぬような技を使ったらどうする?」
俺は最後にこの質問をした。
自分が死ぬ可能性がある魔法を使うのに、恐怖を感じない人間などそう多くは居ない。もちろん、俺も恐怖を感じる人間だ。
発動する前から恐怖を感じていたら、全力では放てないだろう。だが、この質問に対して凛耶が「その魔法を防ぐ」等の様な返答をしてくれれば、俺の恐怖も完全に消えるだろう。
何とも人任せな考えだが、今の俺にはこの方法が一番効果的だった。
「そんな魔法お前が使えるとは思えねーが・・・・・・もし使ったなら打ち消してみせるさ」
俺の質問に対して、凛耶はそう答えた。
これで俺の恐怖は完全に消えた。後は魔法を発動するだけだ。
「水作成」
俺が使ったのは、何の変哲もない水を作る魔法だ。
俺はその水で、隔離空間の半分程を埋め尽くした。
「それが秘策か?・・・・・・俺の行動力を封じると言ったところか」
凛耶は呆れた様にそう言ったが、俺の魔法はまだ終わっていない。
この水を大量に作る事は、俺の秘策を発動させる為の肝だ。
「そんな事の為に使うわけないだろ?・・・・・・なぁ凛耶、水蒸気爆発って知ってるか?」
「あれだろ?大量の水と高温の熱が接触した場合に起こる爆発だろ・・・・・・お前まさか水蒸気爆発を起こす気か!?」
凛耶は俺の秘策に気付いた様だ。
そう、俺の秘策は水蒸気爆発を起こす事だ。
自然現象なので、コントロールは出来ない。 だから使いたくなかったのだが、凛耶が秘策を見せろと言ったので、仕方がない。
それに、凛耶は打ち消すと言ったのだ。それならば何とかしてくれるだろう・・・・・・。
(これって恩返しになってるのか?・・・・・・まぁ成長を見せるという意味では、恩返しになるだろう)
俺は発動した技の処理を凛耶任せにする事に、恩返しかどうか疑問に思ったが、気にしないことにした。
「おい!深夜止めろ」
凛耶に止めろと言われたが、そう言われて魔法を止める俺ではない。
凛耶は俺に秘策を見せろと言ったし、それに俺が死ぬような魔法を使っても打ち消すとまでも言ったのだ。それならば、寧ろ凛耶が俺の魔法を止めてみろと言ってやりたい。
「凛耶今までありがとうな・・・・・・暴走熱量!!」
俺は凛耶に魔法を教えてくれてありがとうと伝えつつ、炎属性魔法の暴走熱量を発動させた。
暴走熱量は、摂氏千五百度を超える炎を作り出す魔法だ。
水蒸気爆発を起こす為に必要な熱源としては、十分な温度だ。
「深夜!チッ・・・・・・あれを使うか」
凛耶が何かを呟くが、俺の魔法は止まらない。
そして、炎と水が接触する。
その瞬間、天地を引き裂く様な轟音が響いた。
爆発音がチラリと耳に入った瞬間、俺は意識を手放した。




