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世界最強は異世界でも最強ですか?  作者: 鯨鼠さん
世界最強は異世界に召喚されたようです。
16/23

<14>勇者様に慣れて来たようです


 四苦八苦しながらどうにかフーリの買い物を終え、ユウと勇者は宿まで戻ってきた。


 フーリの欲しがっていた物は、どこで売っているのか検討もつかなかない物ばかりだったので、売っている場所を誰かに聞こうとしたのだが、勇者の威圧感で皆すぐに逃げてしまう。

 なので地道に1店舗ずつ見て周ったのだが、これもまた店の人間の怖がられて大変だった。

 

 途中、



「二手に分かれて探しましょう!」


 という勇者の提案に乗り、別れて物を探すことにした。

 しかし、物を買う金を持っているのは勇者だったので、結局2人合流しないと物を買うことができないのだった……。

  

 そんなこんなで、



「……もう夕方じゃねぇか」


「……買出しがここまで辛いものだとは、知りませんでした……」



 ぐったりとした様子で、2人は宿の椅子に倒れこんでいた。

 勇者の威厳はもはやゼロと言っていいだろう。

 頭上に飛び出ているアホ毛もなんだか元気がなさそうだ。



「……もう少し普段から町の店をちゃんと見ておくんだった……」


「……全くです。案内役が場所を知らないなんて、案内役失格です……」


「てめぇ……勇者だからって調子に乗ってっといつか泣かすぞ……」



 迫力の欠片もない声音で話す2人だった。

 慣れないことをやると疲れるのは、人も勇者も変わらないのである。

 そこに機嫌が良くなったフーリが、



「お二人共お疲れ様でした♪ 今日の夕飯は豪華にするので楽しみにしていてくださいね!」



 とスキップしながらやって来たのだった。

 フーリはぐったりしている2人の理由に気が付いていないのか、



「それにしても、何でここまで時間かかったんですか? 何も難しい物を頼んだ覚えはないんですけど……」



 と止めを刺した。

 


「ご、ごめんなさい……。普段から町中まちなか何も見てなくてすみませんでした……」


「……買い物1つまともにできない勇者でごめんなさい勇者失格です時間かけすぎです……」


「あ、あれぇ……?」



 フーリは予想外の反応をされて戸惑った。

 ユウも勇者も暗い雰囲気をかもし出している。

 フーリの予想では途中でより道をしていたとか、トラブルに巻き込まれてしまった等と返事が来ると思っていたのだが……。



「す、すみません! 私少し早いかもしれないですけど夕飯の準備してきますね!」



 女将の特権、厨房に逃げるを発動。フーリはその場から逃げ出した!

 ユウと勇者はそれを見送ることもなく、テーブルの上でぐったりとしていた。


 本日の宿の宿泊客は、ユウと勇者以外誰もいなかった。

 ミイロ・アルザムに勇者が泊まっているということが、町中に広がっているのだと予想できる。



「買出しって、こんなに疲れるんですね……。これなら魔物を狩っていた方が楽ですね……。はぁ……」


「個人の買い物なら楽なんだけど、宿単位になるとここまでなるのか……。あれ、でもここそんな人入らないような」


「失礼ですよユウさん。どんなことがあるかわからないんですから、備えておいて損はありません」


「そういうものですか……」



 2人一緒に苦労していたおかげ(?)で、ユウと勇者の仲は少しだけ良くなっていた。

 少なくとも、勇者の威圧感に緊張することはなくなった。これが慣れるということか……、と1人納得するユウだった。

 


「あっ」



 2階からトオヤが降りてきた。

 彼も勇者に少しか慣れたのか、再び倒れるようなことはなさそうだ。

 ……腰がひけているのは丸分かりだが。



「……こんばんは。昼は申し訳ありませんでした。……大丈夫でしたか?」


「は、はい! 僕こそ倒れちゃってごめんなさい!」



 それでも会話することはできるようだ。

 おそるおそる勇者に話かける様子は微笑ましい。



「……少し部屋で休んで来るわ」



 勇者と話したそうにしているトオヤが、少し遠慮しているように見えてユウはそう言った。

 自分と勇者が話している間に入るのは気まずいのではないか、という考えだ。



「わかりました。私はここで待とうと思います」


「また後で」



 椅子から立ち上がり、ご飯ができたら呼んでくれ、とトオヤに伝えてユウは階段を上ろうとしたが、



「ま、まって……」


「……何」



 そのトオヤ本人に止められてしまった。

 焦った表情をしているトオヤの言葉を待っていると、厨房からフーリの姿が見えた。なんだか手招きしているようにも見える。



「なんだ、フーリさんが呼んでたのか」



 そういうことかと納得して、厨房に向かい始めるユウ。

 しかし、トオヤの焦りは収まらない。



「ち、違うよ! ぼ、僕1人で勇者様とお話できるわけないよ! 一緒に居てよ!」



 小声の早口で伝えてくるトオヤだったが、言われたユウは聞く耳持たないようだ。

 それくらい1人でなんとかしなきゃ強くなれないぞ、とユウに言われてしまいトオヤは1人で勇者に立ち向かうことになってしまったのだった。




――――



「どうしたんですか?」


「ユウさんに用事はなかったんですけど、トオヤと勇者様を2人きりにしたくて」


「なるほど」



 ごめんなさいと小さく謝るフーリに構わないとすぐに許す。

 ユウとフーリはこっそりとトオヤの様子を伺うが、まだ緊張しているのかトオヤが勇者に話しかけれていない。



「意外だな。フーリなら俺と一緒のが良いって言うと思ってた」


「ふふ。あの子が勇者様と会話することができれば、未来のミイロ・アルザムも安泰かと思いまして♪」


「……なるほど、接待の練習か」


「そこまでは求めていませんよ。ただ、勇者様のあの感じに慣れることができれば、これからどんな怖い旅人が来ても怖がることはなくなりますから」


「考えてるんだな」


「えへへ」



 トオヤが勇者に話しかけに行ったのを見送って、ユウはこっそりと3階の部屋に戻ろうとしたのだが、



「まぁまぁ、もし見つかってしまったら台無しですからここに居てくださいよ」



 笑顔のフーリに止められてしまった。

 今のフーリの笑顔は怖くないが、ユウは一瞬ピクっと反応してしまった。



「話し相手になってくれるだけで良いですから」


「……皿洗いとぶつ切りくらいなら手伝うぞ」


「本当ですか? ならついでに野菜も洗ってくれますか?」


「ま、任せろ!」

 


――――



「……? 何時もより野菜細かく切ったの?」


「気のせいだ」


「あ、あはは……」



 野菜を細かく切りすぎたこと以外、得に問題もなく調理は終わった。

 細かく切ったといっても、食べ辛かったりするわけではない。ただ、トオヤから見ると普段慣れているものと比べたら小さいというだけだ。

 


「あの……よかったんでしょうか?」


「はい。気にしないで下さい」



 何時も3人で食べていたユウたちの中に、なんと勇者も一緒となっていたのだ。

 テーブル1つの中4人で食べているので、少し狭く感じるがそこは気にしないでいられる程度。

 それより驚きなのが、フーリもトオヤも勇者の威圧感に順応していることだ。



「2人共大丈夫なのか?」



 気にしないで、とフーリは言ったが無理していないか心配だったユウは思い切って尋ねて見た。

 様子だけ見るなら問題ないように思えるが、恐怖を隠している可能性だってあるのだ。



「ええ、無理はしてませんよ。ちょっとピリピリ来ますけど、一緒に居られない程ではありません」


「僕も大丈夫。ちょっとだけ怖いけど。ちょ、ちょっとだから!」


「……申し訳ありません。ありがとうございます……」



 少しでも恐怖させていることに申し訳なさを感じた勇者が謝る。

 気にしないでと言われても、気にしてしまうのが人間というものだ。その後この話題には触れないように会話は進んだ。


 主に話しているのは勇者以外の3人。

 勇者は時折相槌を打ったり、何か聞かれた時は答えるといったスタンスだった。

 このように会話するのは慣れていないのだろう、と当たりをつけて勇者が会話に入って来なくても3人とも気にすることはなかった。



「……話しながら食べすぎた。ご馳走様です」


「お粗末様です♪ 片付けちゃって大丈夫ですか?」


「よろしくー」


「……勇者様は?」


「あ、はい! 大丈夫です!」


「わかりました。ではごゆっくり」



 フーリが片付け始めたのを見て、トオヤもそれを手伝い始めた。

 自然な流れでユウと勇者は二人きりとなる。



「……あー風呂でも入ろうかな」


「お風呂、ですか」


「うん、今日は何か疲れたし、風呂入ってもう寝ようと思う……」


「そうでしたか。……なら、私が背中流してあげましょうか?」


「……何言ってるの」


「?」



 何を言っているんだ? という目で見ていたら、逆に何を不思議がっているのだろうというような目で見られてしまった。

 と、何かに気がついた勇者が目線を合わせて来て、



「なるほど。ユウさんの世界では男と女は分かれてお風呂に入るのですね。ですが、この世界は基本的に混浴なんですよ」


「な……! 本当かよそれ……」


「はい。ですが、恋人でもない異性の裸をじっと見つめるのはマナー違反で、その時は怒られてしまうこともあります」


「……なら分けた方がいいんじゃないのか?」


「仕方ないんです。ここ……というか、町はそこまで窮屈じゃないんですけど、国だとどこも土地不足で、男女別にお風呂を分ける余裕はないのです」


「へぇ……。町と比べて国は大変そうだな。……でも、ならここでそうする必要はなくないか?」


「そうですね……。宿泊客も私と貴方以外誰も居ないみたいですし、無理をして一緒に入らなくていいと思います」


「だよな……」


「ただ、疲れて見えたので……。喜ぶかと……」


「……悪いな。何か、気使わせちゃったか。大丈夫、背中洗うくらいの元気残ってるよ」


「そう、ですか。あと……、お礼も入ってました……」


「お礼?」



 何かお礼をされるようなことをしただろうか、とユウは考えを巡らせるが何も思いつかない。素直に勇者の言葉の続きを待つことにする。



「はい、ユウさんから皆さんと食事できるようなきっかけを頂いたので……」


「…………?」


「い、一から十まで説明するのは恥ずかしいのですが……!」


「…………ごめん、わからないわ。でも、別に意識してやったわけじゃないし、気にしないでくれ。うん、俺もわからないしな」


「……そうですか。わかりました。そうします……」



 とても不服そうな勇者だったが、何のことだかわからないのだから仕方がない。

 全部を説明するのは恥ずかしいらしいので、聞くこともできない。

 


「……でだ。俺は風呂に入ろうと思うが、勇者さんが先に入りたいなら俺は後でもいいぞ」


「それは大丈夫です。私はそこまで疲れていないので、ユウさんが入り終わってからで大丈夫です」


「そっか。お先」


「ごゆっくり」



――――


「ふぃー……」



 頭も身体も洗い終わったユウは浴槽に浸かりリラックスしていた。

 この世界にもお風呂というものがあって本当によかったと思う。

 これが濡れたタオルで身体を拭くだけとか、水浴びしかないなんて世界だったら生きていける自信がない。

 というくらい風呂好きなユウだった。


 勇者がこの町に来てまだ1日だが、このような日があと2日も続くとなるとまだまだ大変そうだ。

 天井の模様を見ながら、あとどれくい入っていようか悩んでいると、


「……ん?」


「…………あれ?」



 誰かが入ってきた。

 誰かが……というより、1人しかいないのだが……。



「……勇者さんよ。貴方あとで入ると言っていたではないですか……」


「え、いやわざとじゃないですよ!? だっていつも男の人は10分もしないでお風呂から上がって来てますよ! 逆になんでユウさんまだ入ってるんですか!」


「俺が悪いのか……? いや、ここの常識と比べられても……。というより、その人ら勇者あんたが怖くて早く上がってただけじゃないのか!?」


「そ、そうだったんですか……! …………も、申し訳ないです」


「そんなに落ち込むなよ……。まぁいいや、俺上がるから」


「そんな! 悪いのは私なので、私が出て行きます!」


「いや、俺もう暖まったから」


「……わかりました。私は出て行きません。なので、ユウさん。貴方も出て行かないで下さい」


「ふむ、どうしてそうなったのか説明してもらおうか」



 勇者の方を見ないようにして、ユウは話の続きを待つことにした。

 勇者もユウを気にすることなく、頭を洗い始める。

 


「そこまで大層な理由はありません。こちらの常識的には、男女が共に風呂に入ることは特に問題はないからですよ」


「……そう来たか」


「はい。私もじっと見られなければ恥ずかしくないので」


「……朝は?」


「そ、それは……! こ、こほん! お風呂とそうでないのとでは天と地の差があるんですよ!」


「……見られている結果が同じでもか?」


「はい! なので、気をつけた方がいいと思います!」


「いや、朝のは業とじゃない……。いや、すみませんでした……」


「いえ、私の迂闊さが招いたようなものなので、もう怒りはしませんけど……」


「は、はい」



 自分から話題を出しておいて、今更ながらユウは勇者のことを意識し始めていた。 

 朝の無防備な勇者を少しとはいえ、見てしまったのだ。

 今も見ようと思えば見ることはできるので、ちらりと見たくなってしまう。



「……何か邪なこと考えてませんか?」


「……何も?」


「そうですか」



 頭を洗い終わった勇者が身体を洗い始めるのが目の端に映った。

 そのまま見ていたら変態になってしまうので、天井を眺めることで回避する。



「それにしても長湯なんですね」


「……そうか?」


「ユウさんの予想通り、私が怖くて皆早く上がっているいるのかもしれませんが、それでもユウさんは長い方じゃないですか……?」


「さぁな……。誰かと風呂一緒に入るなんて初めてだから……」


「…………すみません」


「ああ……。すまない、今のは俺の失言だった」


「怖がられるのは私も、ユウさんも、一緒みたいですね」


「……似たもの同士ってか?」


「そうかもしれませんね」



 身体を洗い終わった勇者が、浴槽に浸かり始める。

 浴槽はそこまで広いというわけではないが、2人分くらいなら足を伸ばしても余裕があるので、一緒に入っても問題はない……のだろうか。



「あの、似たものついでにお願いがあるんですけど、聞いてくれませんか?」


「……聞くだけなら聞いてもいいが、て」



 声近くないか、と言おうとして言葉が詰まった。

 ユウはずっと天井を見ていたので気付かなかったのだが、勇者が何時の間にか至近距離まで近付いて来ている――!

 湯で濡らさないようにまとめられた銀色の髪や、お風呂で熱っぽくなっている勇者の表情までくっきりと見ることができる。

 というより、少し動いただけでキスできてしまうような距離間――。



「近すぎだろお前!! 馬鹿か! さっき身体見られるのは恥ずかしいって言ってたのは誰だよ!」


「わぷっ!?」



 あまりにも近くに勇者がいたので、ユウは驚いてお湯をぶつけてしまった。

 この行いに勇者も流石に怒った。



「何するんですか! びっくりしたじゃないですか!」


「知らねーよ! 驚いたのはこっちだわ! なんでそんな至近距離にいるんだよ!! 逆に引くわ!」


「ひ、引く!? 私は遠くより近くにいた方が身体のライン見られないと思ってこうしただけです! 引かれるようなことは一切してません!」


「はぁー!? 何だそれ! お前俺が無害な奴だとでも思ってるのか!? あんたみたいな美少女が裸で隣にいて何もしないとでも思ってるのか!?」


「な、なななな!? 貴方は自分より年下の女の子に手を出すつもりなんですか!?」


「年下とか関係あると思うなよ!」


 ……………………。

 ………………。


――――



「ねーお母さん。勇者様とユウさん仲良いんだね」


「そうねー……。そろそろ止めに行ってくるね」



 お風呂があるのは2階。

 フーリたちの部屋があるのも2階。

 ユウと勇者の言い争いは丸聞こえだったのだ。


 



 

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