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9話「315系0番台C15」

情強って、素晴らしいね。

2023年4月20日。いや、ホントに情強って素晴らしいなって思うんよ。なんでかって?どうやらこの日はJR東海が増備を続けてる315系(さんいちごけい)C15編成が日車から出場してくるそうな。たまたま情報くれた方には感謝だよ。問題はこの日はド平日ってこと。学校に行ってないことがバレるともれなくお母さんに怒られるので制服のまま撮影に繰り出す。


「さぁ。迎え撃つか。」


委員会の仕事があるとウソをついて家を早くに出て、二十軒から岐阜、岐阜から飯田線の下地駅に来た。時間は9:10過ぎだからマジでギリギリなんよね。ここでまずは面縦を狙います。


「お。ピンにできそうな名鉄電車…9Rだ!!激V!!激V!!」


準備できて早々にやってくるのが9R。マジで運良いな。


「9503Fと…お!後ろは3700系(サンナナ)じゃん!これはツイてるな…。」


朝から良いモノを見れた。


「あ!2204F!!」


名古屋方面に向かう特急が反対を駆け抜けてった。今日の2204Fは022運用か…。あの後茶所に入るんよな…。ま、今日の本命は2204Fじゃなくて315系だからそっちに集中しよう。



後続の2200系、213系(にーいちさん)でなんとか構図を定め、迎え撃つ準備ができた。さぁ来い!新車の315系!


「…おっ!?」


豊川放水路の辺りから僅かに名鉄車でも313系(さんいちさん)でもない、白くてカッコいいLEDライトが見える。


「…キタぁ!!」


ファインダーを覗きこんで"モノ"を撮る準備をする。今回はネタなので一度しくると後がない。いや、315系自体はまだ何度か出てくるんだけど、今回のはミスったらミスりっぱなしで終わる。それは避けたい。いつもよりシャッターを押すのに緊張する。


(…ここか!)


いつもの切り位置より手前からシャッターを切る。汗が額を伝っていくのを感じた。手汗もすごい。それだけ緊張してるんだ。


「面縦はとりあえずよし。次は動画!」


面縦を撮った後だと、速度的に少し余裕があるので急いでスマホで動画を撮る準備を始める。


「ちょ、遅いの勘弁してくれ!」


安物スマホなのでカメラの起動にも時間がかかる。勘弁してくれよ!


「よし!」


なんとか間に合った。なんせ動画にしとけばこの8両固定編成(ハチコテ)が下地駅を通過してったって証明になる。写真は一種の作品だけど、動画は記録目的だからこれは理にかなってる…と思う。


「カッチョ良いなぁ…。」


後ろ姿を見送ったら一眼レフをリュックに収める。ウチはいつも登校する時もお出かけに使うのと一緒のリュックを使ってるので、違和感なく外で動ける。


「流石に東海道下ってくのはカメラ使う気にならんよなぁ…。構図酷すぎるし。」


下地から東海道を下ってく構図は、西端でケツ打ちすると信号だか何かよくわからん箱が映り、駅から編成にしようとすると長さが足りず、架線柱のワイヤーが車体に架かる。どう頑張ってもうまくは撮れないので動画だけ狙うことにした。


「10分くらいか…。ボーっと待ってるか。」


今日は4月下旬と言えど、暑くもなく寒くもない気温だ。この日差しを満喫しながら東海道を下る315系を待つことにした。



下地で315系を撮ったので、お次は名古屋へ東海道線で移動する。今日の予定はこの後名古屋で本線高速通過撮って、岐阜の2番線でエキセンして、神領の入区までを撮る。ホントは関ケ原とか行きたかったけど名古屋で撮ったら関ケ原には間に合わないので今回は諦めることにした。


(予定通りならこの次か…。)


スマホで時刻表(スジ)と時間を確認する。時刻は12:00。もうすぐで315系は、6番線を関ケ原へ向けて高速通過してく。


「♪~まもなく、6番線を列車が通過します。黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。」

(来た!)


7番線には営業運転に入ってる別の315系。正直いい気はしないけど、この並びは普通には撮れないので、まぁこれはこれで良しとする。本命は岐阜のエキセンだし。今日はどちみちもう良い光線で撮れないから面潰れは気にしたら負けかな?


「…。」


無言でファインダーを覗き、シャッターを切る。んー。ちょいピン甘だけど撮れただけマシにすっか。どっちも幕勝ちしてるし。幕勝ちですべて帳消しじゃね?


(…。岐阜行くまで少し余裕あるし、どっかで弁当食うか。)


今日は平日。リュックにはお母さんの弁当が入ってる。どっかでこれ食って、岐阜に行くか。



結局何も考えずに岐阜駅に来た。岐阜で停目見て、なんとなくで構図組んでから弁当を食った。制服JKがド平日に駅のホームで座り込んで弁当食ってるの、中々シュールだったんじゃね?とまあウチの見てくれは置いといて。


(編成風に撮れるけど…、面潰れしちゃうからなぁ。)


315系の出試は午前中に下り、午後に上りみたいな時間なので見事に逆光になる。というか名鉄甲種もこんな感じだから、ネタということを差し引けば撮る価値はあんま無いんよね。ネタだから撮るってだけ。


「ん?」


おや。同業だ。


「こんにちは。」

「こんちはー。」


挨拶してきたのでこっちも返しといた。


「C15撮ります?」


一応聞いとく。


「後ろの方って邪魔にならないですか?」

「むしろ、ウチの方こそ邪魔にならないすか?」

「そこだったら大丈夫です。」

「了解です~。ありがとうございます~。」


ショバで会った同業とは極力仲良くしとく。これだけで面倒な衝突は避けられる。


「今日はどちらから撮影いらしたんですか?」


お?同業が話しかけて来た。会話したいタイプか。ウチも話すのは嫌いじゃないから話しとこ。


「ウチは二十軒ですよ。すぐそこです。」

「今日は学校はどうされたんですか?僕は無理言って有給取ってきましたけど…。」

「ははは…。サボりですよ。今日は天気も良いんで、せっかくだし撮りに行こうかなと。」

「なるほどー。もう撮り鉄始めて長いんですか?」

「まだ1年位です。そんなに長くないですよ。」


同業との会話が弾む。お互い名前すら知らない、赤の他人だけど話は弾む。撮り鉄って世間的には異常者の集まりらしいけど、平和なショバだとこういうのも結構日常である。JKが平日の真昼間から、制服で撮り鉄してるのは異常だとわかってるけどね。


「お?」

「来ましたね。」


2番線に"ヤツ"が来た。いやぁ…、やっぱカッコいいんよなぁ。よく新しい車両ばっかり崇拝するのは新車厨って敬遠されるけど、ウチはそれでもこの新しい車両を推していきたい。確かに211系(にーいちいちけい)や311系(さんいちいちけい)もカッコいい。でも315系だってそれに並ぶくらいカッコいいんだよ…。よく〇〇が引退したから被写体無くなって趣味つまらんくなったっていうヤツいるけど、ウチは多分そういうヤツらとは友達になれないな。


「良いっすねぇ~。カッコいい。」

「お姉さん、この後どうされます?」


同業の男の人も撮るものを撮り終え、撤収の準備をしながら話しかけて来た。


「ウチはこの後神領の入区撮って帰ります。時間的にそれで終わりなんすよね…。」

「なるほど。僕はこれから大阪なんで、ここでお別れですね。お疲れさまでした!」

「お疲れ様です!大阪までご安全に!」

「ありがとうございます!」


同業の男の人はペコっと会釈をすると去って行った。ショバではこのくらいライトな関係がちょうどいいんだよね。こうやって思うってことは、ウチもやっぱ撮り鉄の素質あるんだろうなぁ。


(…神領行くか。)


片づけを終えたので、リュックを背負って1番線に向かった。



夕方、神領入区を撮り納めたのでWi-Fiでスマホに取り込んだ今日の写真を帰宅電の車内で確認する。


(んー。面縦は構図もピントも光線も上手く決まってるけど、幕負けしたなぁ…。幕残念ポイントだなぁ…。名古屋のは…、既にピン甘なのは分かってたけど幕は勝ってる…。んー…。)


ダメだなぁ。やっぱりネタ鉄って難しい。一発勝負なのは言うまでもないけど、条件が日常鉄に比べて限られてる中でうまく撮らないといけない。日常鉄なら多少の妥協か、待てばいいの撮れることあるけど、こっちはかなり妥協しないといけない部分がある。


(あ。でも岐阜のエキセンはかなりマシか。)


岐阜のエキセンは上手く決まってる。光線はもう気にしちゃダメとしても、構図とピントは上手く決まってる。Twitterに投げるのはこの辺かな。神領の入区は…。思ったよりも明るくなかったので、これは大事にしまっておこう。


(お?)


そういえば、一日スマホをほぼ触ってなかったので、LINEの通知とかも今頃気づいた。


≪明日は学校来る?≫


麗香からLINEが来てた。


(ん?)

≪普通に行くよ≫


そう返すとすぐに既読が付いた。


(早っ。暇人かよ。)


なお、お前も暇人だろってツッコミをした人は腹パンの刑です。ウチの拳をみぞおちに食らえ。


≪良かった…。じゃあ明日!≫


(何をそんなに…。可愛いヤツだな。)


ウチは友人の可愛いところを感じつつ、Twitterにさっき厳選した写真を投げた。こんな趣味に一直線なのに、良い友人を持ったな。そう感じた春の一日だった。


2023/4/20 平野結奈

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