7話「5000系5009F」
薄々感じてたけど、やっぱあの車両嫌いだな。
この夏は泊まりで関東を一人旅して、東海管内も一人で多治見や大垣に行った。"一人旅"っていう楽しさを結構感じたし、お父さんの言うところの、紙の時刻表で即座に行程を修正する能力もなんとかこの夏休みに会得した。敢えて乗り遅れて、遅れを取り戻すために修正する。これが意外と楽しかった。やっぱりウチには時刻表鉄の素質があると思う。今後授業中はこれで暇潰そうかな。で、高校生って意外とあっという間に時間が過ぎてくんだよね。気づけばもう冬。陽が落ちるのが早くなって、肌寒くなってきた。麗香はすっかりタイツ履いて、もこもこのマフラーと手袋付けてたけど、ウチは意外と寒さに強いのでまだネックウォーマーだけで耐えてる。で、これは冬の日常のお話。
(うわ…。5000系かよ…。)
夏休み前位から学校に行くときは一眼レフを持って行ってたので、帰りはチャリで回れる範囲で撮り鉄してから帰ることが多い。ウチのバイト先は二十軒からちょっと行ったところのコンビニなので、チャリで行ける範囲のショバで撮り鉄してれば、バイトに遅れることはない。
(このレパートリーなら、3150系はアタリだよな…。)
各務原線というのは、末端のローカル線とは言わないけど、名古屋本線や犬山線、常滑線に比べたら主要幹線という部類ではないので、特急列車という特急列車は今では運行されていない。去年まで辛うじてミュースカイが運行されていたが、今となってはダラばかり。たまに準急が来るくらい。運用されている車両も1800系とか6800系、3150系とか5000系だから車種的には面白い。だから帰りは沿線ショバで撮影に勤しんでるんだけど…。
(マジでさぁ。5000系なんなの?3150系かと思えば違うし。幕切れるし。)
5000系に腹が立ってしょうがない。3150系のつもりで撮ると全然違うし、なんなら幕切れするから良く写らんし面白くもない。今まで鉄道車両に対して嫌悪というか、嫌いという感情が湧いたことなかったんだけど、最近日常鉄しててなんとなくその感情がわかってきた。そして、ウチが5000系嫌いということにも気づいてきた。
(1200系だったらまだVなんだけどなぁ。言うて更新車は大してVでもないしなぁ。)
名鉄は2015年とか2017年位からいろんな車両の塗装変更とか機器更新をしてるけど、個人的に更新後もVとか更新後の方がVと思える車両は存在しない。2200系なんてあのホワイトのボディだからカッコいいのに、それ小学生の時に考え付いたわって感じの赤い帯入れちゃってさ…。3100系は赤が映えるボディだったのに白くなっちゃうし、3500系更新車はLEDになってキショいし、3300/3150系は微妙にダサくなるし…。1200系に至っては愛称が消えて特徴的な塗装やめたと思えば、自動放送まで入りやがって。もうあんなの1200系じゃねぇよ…。って言いたくなる代物が出て来た。しかも乗ると音は界磁チョッパなのに、内装はいかにも"最近の電車"だからかなりキモい。これは三河ワンマンの6000系にも言えることだけど。
(お。6800系か。まだこれはV。)
そうだよなー。5000系と6800系を比べるとウチは圧倒的に6800系の方が好き。なんなら6500系でもいい。てか早くあの激V、9500系をよこしてほしい。風の噂では、各務原線は次期ダイヤ改正でワンマン運転になり、3500系更新車と9500系の天下になるらしい。3500系更新車は丁重にお断りしたいけど、9500系は2200系に次ぐ激Vだから早くたくさん来てほしい。お隣、高山本線に比べたら車種自体は豊富なのに、こんなこと言ったらワガママかな?
(さて、今日のリザルトを見返すか…。)
そろそろ飽きて来た&バイトの時間が近づいて来たので撮った写真を見返してみる。
(1809F、6818F、5009F、3158F…。)
色々撮ってた。構図はしっかりしてるんだけど、天気が微妙なせいで暗かったり側面に日が当たってない写真が多い。
(なんでテメーだけは上手く撮れてんだよ…。)
なぜか成功してる5000系の写真。ホント腹立たしいな。良心ともいえる3150系は大失敗なのに、5000系は大成功。ちょっと悪意すら感じる。
(…行こ。)
もうじっくり写真を見る気にもならなかったから、カメラを片付けた。バイト行こ。
今日のバイトは、5000系のことを考えてたら一瞬で終わった。5000系をVだと勘違いする方法、5000系が早く滅ぶ方法、色々考えたがどれもあり得ない話に落ち着いた。ウチこんなに5000系のこと考えて、好きなのか?いや、今なら断言できる。
「俺あの車輌、嫌いだわ。」
つい独り言を呟く。それも俺呼びで。どうも昔から癖で、一人の時とか腹が立った時は自分の事を俺呼びしてしまう。女の子らしくしなさい!がウザくて一人称を頑張ってウチにした過去があるけど、あざとくてキモくなっただけかも。
(んー。帰ったら何しよっかなぁ。)
バイトの帰り道。チャリを押しながら5000系について考えることを辞め、別の考え事をする。時刻は20時過ぎ。冬の風は寒いけど、バイト終わって家に帰るまでのこの時間がなんだかんだ好き。
「ん。」
ブレザーの右ポケットに入れたスマホに通知が来る。誰だろ?
「麗香だ。」
チャリを押す手を止めてスマホを見る。
≪結奈、バイトお疲れ。今晩時間ある?≫
麗香からLINEが入ってた。
「んー。」
≪お疲れ≫
≪家帰って風呂入って飯食ったら暇だけど、何かあった?≫
麗香にLINEを返す。すぐに既読が付いた。暇人かよ。
≪ううん。通話相手が欲しかっただけ。22時にはイケる?≫
麗香、ホント字打つの早いよな。スマホオタクってこうなのか?
≪何とも言えんけど≫
≪準備できたらこっちからLINEする?≫
かじかむ指で何とか字を打つ。
≪そうして。よろしく。≫
その返事が来たところでウチはスマホの画面を消す。
「ん。」
建物や道路の隙間からわずかに見える各務原線を電車が走っていく。
「また5000系か?」
なんか今日はツイてないなぁ。またお前かと言わんばかりの5000系。俺お前のこと振ったはずなんだけど。何?振ってもストーカーしてくる因縁彼氏か何か?彼氏いたことないけどさぁ!
「ちっ。」
腹が立ったので舌打ちして再び帰路に就いた。もうしばらく5000系はいいや。そう思えた冬のとある1日だった。
2022/11/25 平野結奈




