表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/124

魂晶の儀

魂晶(こんしょう)の儀当日。


朝から忙しかった。体を清めて、身なりを整える。それだけで、3時間ぐらいかかった。

ピロロは髪のセッティングやら化粧やらで、さらに、時間がかかっていた。


謁見の間には城中のものが集う。


まず、俺が衛兵に案内され左側に立つ。つぎに、ピロロがマドムさんに案内され入ってきた。


扉が空いた瞬間、会場がどよめいた。そこには真紅のドレスに身を包んだピロロが佇んでいた。凛とした立ち居振る舞いに、隣に俺が居ていいのか不安になった。


俺の右側へやってきて並ぶ。続いて、ラキノン王が上段より降りてきて、俺達の前に立った。

俺とピロロの額に手をかざし、親指と人差し指で何かを摘むように引き出た。そして、真ん中で手をひとつにあわせる。

王により引き出された二本の赤い光が、手の中で一つに合わさり、より一層輝いた。

再度二つに分け、俺達それぞれの前でゆっくり掌を開く。


眩い光が徐々に落ち着き、装飾品が出現した。ピロロには赤い宝玉が嵌め込まれた指輪、俺には耳飾りが与えられ、王直々に付けてくれた。

ピロロと俺は、ゆっくりと後方に向きをかえた。ピロロが手を高々と掲げる。貴族達から、割れんばかりの拍手が起こった。


その後、他国使者のご祝福等があり、俺が参加する儀式は終了した。ピロロはその後も、ダンスパーティーに参加したりと忙しそうだった。俺は部屋に戻り、次に呼ばれるまで寛いだ。


ふと、思い立ち、ドン・スネークに誰の守護魔獣なのか尋ねてみた。俺のお腹から顔を出す。気に入ったようで、知らぬ間に入り込んで、入り浸っているのだ。

第二皇女であるヴァイオレッタ姫の守護魔獣であること、背中にある一枚の赤い鱗が宝飾であることを教えてくれた。そう言われて、よく見ると、白い体に一枚だけ、赤い鱗が混じっている。自然体で羨ましくなる格好よさだった。


ヴァイオレッタ姫は今、シアニン帝国に嫁ぎ皇太子妃になっているらしい。国を離れる際、ドン・スネークことを思い、こちらに残るよう取り計らってくれたのだと。

能天気そうなこの蛇にも、色々あったようだ。


昼過ぎモアゼルさんが俺を呼びに来た。国民にお披露目するのだそうだ。馬車でパレードを行うらしい。


ピロロと俺は、二人でオープンタイプの馬車に乗せられた。その後ろをラキノン王の馬車が着いて走る。左右を騎士が併走し警護していた。


沿道には多数の国民が、俺達を、いや、ピロロを一目見ようと集っていた。皆、口々にお祝いの言葉を叫んでいる。ピロロも笑顔で手を振り、それに応えていた。

テレビで見たことはあったが、まさか、自分がこっち側に来ることになろうとは。人生とはわからないものである。


そんな、能天気なことを考えていたら、突然、鋭い殺気に襲われた。

慌てて、ピロロと俺の周りに結界を張る。それと同時に、結界が破壊された。漆黒の矢が突き刺さったようだ。弾かれた矢は、大型のカラスに変身した。というより、このカラスが矢に変身していたようだ。


背中には、悪魔のような奴が乗っている。


「よくも、私の大事な日を汚したな」


ピロロは1本の髪飾りを抜くと、宙へと放った。それは、真紅の鋭利な結晶となって飛んでいき悪魔に突き刺さった。奴は全く気にする素振りをみせず、笑いながらいった。


「これは失礼。お怒りをお収めください。ニガレオス帝国皇帝ボン・ブラック様の使者として、お祝いを述べに参上しただけです。

この度はおめでとうございます。また、いつの日かお会い出来ることを、楽しみにしております。フハハハハ、アハハハハハ! 」


絵に書いたようなセリフを吐くと、黒い煙となって消え失せた。


「皆の者伏せよ! 」


ラキノン王の一声で、群衆が一斉にふせる。二対の朱雀が飛び出していき。黒い煙の周りを飛翔した。それはやがて、一つの火球となり、爆音とともに燃え尽きて、また、二対の朱雀となり王の元へと戻った。

王は瞬時に、あの黒煙が有害な物だと判断し対処したようだ。


一連の騒動が落ち着くと、国民から歓声があがった。


「国王陛下、万歳! 」


「ピロロピロール妃殿下、万歳! 」

その声は国中に広がり、俺達が城へ帰るまで、いや、帰ってからも、鳴り止まなかった。




この事件から、俺たちとニガレオス帝国との戦いの火蓋が切られることになる。

そしてそれが、こんなにも長く陰鬱なものになろうとは、その時の俺は知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ