Ⅰ・月夜の出逢い――その⑨
儀式って……,一体何をさせられるんだろう?
「何だか不安そうな顔をしているけれど。カナ,安心して。別に無茶なことをしてと言っているわけじゃないから。そんな大げさなことでもないしね」
いや,「安心して」って言われましても。そういう問題じゃないし。
「……分かった。んで,あたしは何すればいいの?」
こうなりゃ,もうヤケだ!矢でも鉄砲でも持ってこーい‼な心境で,あたしはミシェに訊いた。
「そうねえ。まずは,コレをあなたに飲んでもらおうかしら」
彼女はあたしに,小さな瓶を差し出す。大きさはちょうど,栄養ドリンクの瓶くらいかな。あたしはその中身に,眉をひそめた。
透明な瓶から丸見えな中身は,青紫色の謎の液体。それも,グレープジュースよりも濃い青紫色。SNS映えはしそうだけど,色だけ見てたら毒々しいことこのうえない。
……コレを,飲めってか⁉
「ねえ,ミシェ。……コレなに?」
「それは,マジカルフルーツの果汁よ。私達魔女や魔法使いの,魔力の源になるものなの。私達は小さな頃から,それを飲んで魔力を蓄えてきたのよ」
「へえ……」
得体の知れない薬とかなら,飲むのをためらったかもしれないけど。フルーツの果汁なら,飲んでも大丈夫な気がしてきた。
あたしは瓶の中身を,景気よくグビッと飲み干した。