奴隷②
「本当に大丈夫?」
「あ、ああ大丈夫だ」
曇らせる顔は全然大丈夫に見えない。
今の状態で戦闘させるのは危険すぎるな。
足を止める僕にも気付かずに前を走り続けるゼノスを呼び止める。
「どうしたんだ?」
屋根上にいるシェリを見上げるとシェリは顔を顰めて兄を見ていた。
「知らないほうが良かった?」
「え?」
「奴隷がどんな扱いを受けてるか、だよ」
「…………」
周りに座り込む奴隷を見回した後、ゼノスが顔をあげる。
「分からない……俺は」
「獣人がどうなろうと知った事じゃない!!」
屋根の上からのその声に僕らは上を見上げる。
「シェリ……」
「しっかりしてよ!お兄がガルムに付いて行くって決めたんでしょ!」
(獣人がどうなろうと、か)
青髪の奴らもそうだったけど、獣人への憎しみが高すぎないか?
今はそんな事を考えてる場合じゃないけど気にはなる。
「……すまん、足を引っ張って」
「え?ああ……うん」
ゼノスが笑顔を見せる。
だけど握られた拳は強く握られ震えていた。
「やっぱり私には無理だよ!今のままでも私は困らない!!」
「ダメだ!!……それだけは……ダメだ」
2人が睨み合い言葉が止まる。
「行こうガルム」
その言葉を残し走る背中を見つめ、上で止まるシェリを見上げる。
「シェリは来るの?戻るなら手を貸すけど」
僕の言葉に答える事無くゼノスの後を追うように屋根上を移動し始める。
「色々あるって事だよな……」
当り前だよな、皆何かを抱えて生きてる。
2人は悪い人間じゃない。
だからこそ知りたくもある。
「僕が異常なのか、王国が異常なのか。それとも世界が異常なのか……」
ただ笑って毎日を過ごすことがそんなにも難しい事なのかよ……。




