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国外追放されたので『魔王』に成った  作者: くろふゆ
第五章 支配者の蹂躙
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044話 いつかまた……

【こちら、ドロシア・スミシー。ご主人様、火急耳に入れて頂きたい要件が】


(……どうした?)


【《蓋世王》の《世界式改竄》によって、ご主人様が《魔王》になられたことが大陸全土に伝わっております。そして今、ご主人様がミッドヴァルトにいないということも】


 遅れて気付いたが、確かにこれでは魔の森にドロシアを置いていても、彼女がヒツギの偽物であることは見破られている。いくらコピーした姿の宿主の三割の力を使うことができるといっても、魔の森の王とその主線力を欠いた現状で、他勢力の相手はできない。


【第十一席、北の《猛火王》リーザ・ジャビーがご主人様に再戦を求めています。これに第十二席、南の《堕落王》バジュラ・アジュラは関わらないと表明し、敵に回ることはないものの味方になるつもりはないと。そして一番の問題が、第七席、《不動王》ガルマ・バルバトスが西から動き出しました。おそらく目的地は我々の拠点、ブラッドムーンかと】


(分かった。急ぎ帰還する。それまで陣頭指揮は……ドロシア、お前に一任する)


【かしこまりました。では、ご主人様、こちらはお任せ下さい】


 ヒツギはドロシアとの《王権》による通信を切った。

 そして鋭い双眸をアーガス王国軍へと向ける。


「ふん、興が冷めた。ザコの相手をしている暇はない。……魔の森へ帰るぞ」

「……へ? い、いいんですか、ボス? あいつらを見逃しても」

「……ウルル、こちらにもやることができた。お前にも働いてもらうぞ」


 ウルルの疑問に詳しく答えることはなく、ヒツギはアーガス王国軍のほうはもう視界に入っていないというばかりに、完全に無視してタイラントレックスの背に乗った。


 そのときを見計らって、ヒルデは右腕を天に掲げて吼える。


「《屍術王》ヒツギ・フォレストはこの私、《放縦帝》ヒルデガルド・エーベルに臆した。よってこの場は一時休戦とする! 負傷者を回収し引き上げろ! 死者は捨て置け!」


 ヒルデの勝利宣言に、若干の不安を残しながらも、アーガス王国兵は大いに湧く。


「ふん、ヒツギ様に見逃して頂いた分際で、いい気なものですわね。これだから人間は」


 その光景を、ヒツギの隣に立つルナが苛立ちを抑えきれずに爪を噛み、睨んでいた。


「別にいいだろう。いずれ滅ぼす国だ。今回は死の宣告を与えてやるだけで十分さ」


 こうして『ヒツギ・フォン・アーガス』の復讐の旅は、此処に終着となる。


 ――風が吹く。強く、冷たい風が。

 背中で結んだ黒い長髪を、一度だけ後ろへと、風が流していく。


「………………」


 ズボンのポケットに手を入れたまま、成長した背中をヒルデに見せて歩き出す。


(さようなら、先生。次に会うときは、こうはいかないだろう。お互い立場は変わってしまったが、いつかまた、あの頃のように……無邪気に遊びたいものだな)


 すでに《魔王》となった少年は、ふっとその顔に少しだけ寂しそうな笑みを浮かべる。


 そして、ヒツギら《デミ・レギオン》一行は、兵士達の歓声を後ろに《屍術》で死体を回収しつつ、みんな仲良くタイラントレックスの背に乗り帰路に着いた。



 ◇ ◇ ◇ 



 サンマルカ王国某所にて。


「そうか。《黒の魔女》の正体は、アーガス王国の元第二王子、ヒツギ・フォン・アーガスだったのか。ヒツギ、柩……懐かしい響きだ。あいつは向こうで元気にやっているかな」

「もう《黒の魔女》ではない。奴は《十二界王》の一人、冠する名は《屍術王》です」


「……ふっ、そうだったな。我が副官、《白狼の凶刃》――カゲヒサ・カミイズミ」


 若い女性の隣には、四十半ばの老けた白髪をオールバックにした男が佇んでいた。

 180センチに届きそうな程の長身。歳を取ってもその肉体は衰えというものを知らない。


「それで、《極拳帝》――ホンファ・ルー・ブリンク、あなたはどうするのですか?」


 背丈は百六十半ばの、『十八歳』の女性が口を開いた。


「まずはミッドヴァルトの西側、《不動王》ガルマ・バルバトスの討伐だな。《屍術王》は魔の森の東側を拠点としている。しばらく会う機会はないだろう」


 紅色の長髪。それを天辺で結った、ホンファのポニーテールが揺れた。


「だが、妙な確信がある。私はやがて《屍術王》と相見えることになるだろう」

「……ほう、なぜか楽しそうですね」


「ああ。不思議なことにね。懐かしい感じがするんだ」

「気が合いますな。実は私も『柩』という響きには感じるものがある」


 前世での、高森柩の師匠にして唯一彼が愛した女、凰紅花フアン・ホンファ

 そして高森柩の命に終止符を打った宿命の男、上泉景久かみいずみかげひさ


 二人は姿と年齢を変えて、アーガス王国の反対側。サンマルカ王国にて、軍の最高階級である《元帥》と《師団長》を務め、さらにホンファは《七聖天帝》の一人、《極拳帝》として、カゲヒサはその副官としての地位を築いていた。


 ホンファの直感は正しく、近いうちに《極拳帝》と《屍術王》は拳を交えることになる。


 しかしそれは、ミッドヴァルトにいるヒツギには、まだ知る由もないことであった。



 ………………to be continued?

これにて『魔の森の屍術王』完結です。

ブクマが少ないながらも多くの評価を頂けて嬉しく思います。

完結記念に評価とか感想くれてもええんやで(/・ω・)/

とりあえずは第一部完結ということで……

別作品か続編でまた会えることを祈っております。

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― 新着の感想 ―
[一言] 国外追放されたので『魔王』に成ったの続きがみたいです
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