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トレジャーマーチ ◆◆◆青き少女と滅びた帝国の謎◆◆◆  作者: 小日向 ななつ
第1章 終わりを知るハジマリの物語
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恐ろしくてしっかり者のお師匠様

 休息を含めて移動に三時間半。マロン達はようやく目的のキャンプ場へと辿り着いた。


「マロン」

「ティト、言いたいことはわかる」


 マロンとティトは、目の前にあるテントに入るのを躊躇っていた。それを不思議に見つめるフィーネ。

 一体何を恐れているのだろう、と考えながら二人のやり取りを見守る。


「リリル先生、絶対に怒っているよね?」

「怒っているだろう。だが、これ以上待たせる訳にもいかない」

「こ、殺されちゃうかな?」

「覚悟はしておこう」


 マロンとティトは、意を決した様子だった。

 二度ほど深呼吸をし、そしてテントの入り口にかけられているのれんを上げる。


「ただいま到着しました!」

「遅れて申し訳――」


 マロンが何かを言い切る直前に、円盤らしきものが顔面に飛んできた。

 それが何なのか認識する前にマロンは、後ろへと吹っ飛んでいた。

 転がっていくマロン。そんな状態になっている相棒に遅れて気づいたティトは、身体がガクガクと震えていた。


「遅いですよ、マロンにティト」


 フィーネは転がっているマロンから視線を移す。

 耳に入ってきたのは丁寧な口調だが、浮かべているその笑顔はどこか恐ろしく、怒っているような雰囲気が溢れ出ていた。


「こんなにも私を待たせるなんて、どういう神経をしているのですか?」


 ポニーテールにされた黒髪をなびかせながら、女性はティトに問いかけていた。ティトはそれに対して、ただ震えるだけだ。


「ご、ごごご、ごめんなさい! その、その、バギーが、壊れちゃって……」

「それは災難でしたね。ですが、遅刻は遅刻ですよ?」


 女性は右手を広げた。ティトは途端に逃げようとしたが、恐怖と緊張のせいか上手く飛ぶことができなかった。


「ひぃー! 許してー!」


 そのまま握られるように捕まってしまうティト。女性はニッコリと笑いながら、こんな言葉を囁いた。


「今日はかわいい服を用意しました。たっぷり遊びましょうね」

「や、やだー!」


 懸命に暴れるティト。だが誰がどう見ても、首を激しく振っているだけにしか見えない。


「あ、あの」


 今まさに、お人形として遊ばれそうになっているティトに助け舟が現れる。

 こっそりと様子をうかがっていたフィーネが、恐る恐る顔を覗かせていた。


「あら? あなたは?」


 女性の興味がフィーネに移る。これはチャンス、とばかりにティトが言葉を並べた。


「あ、あの子だよ。先日遺跡で見つけた女の子は。マロンからの手紙は見たでしょ? 先生」

「あら、そうなのですか?」


 女性はティトを離して、フィーネに近づいた。

 離されたティトは、どこか安心したかのように息を吐く。そして、倒れているマロンの元へと駆け寄った。


「失礼」


 まじまじと髪を、顔を、身体を見つめる女性。フィーネはどこかくすぐったさを覚えながら観察が終わるのを待った。


「なるほど、私達とあまり変わりがありませんね」


 観察が終わると、女性は一度わざとらしく咳払いをした。どこか気品さが見える女性の顔は聡明で、凛々しくもあり、なんだか頼りがいがありそうな雰囲気が感じ取れる。

 着ている服装はマロンと同じワイシャツに、動きやすそうな緑色のズボン。懸命に働いているのか、シャツは土の色がこびりついている。

 そんな女性が、フィーネに優しい笑顔を浮かべた。


「初めまして。私はマロン達の師を務めているリリルと申します」

「あ、は、初めまして!」


 とても丁寧な挨拶をされるフィーネ。マロン達とは違い、常識があるようだ。

 その証拠に右手を差し出されている。

 フィーネは自分の右手を出して手を握った。その瞬間、リリルは鋭い目をする。


「あなた、大丈夫?」

「え?」


 言葉の意味がわからなかった。身体のどこか悪いのかな、とつい思ってしまう。

 しかし、リリルはその言葉を取り下げるようにこんなことを言った。


「全く、こんな女の子を歩かせるとは。我が弟子が失礼しました」


 どうやらフィーネの状態に気づいた様子だった。長く寝ていたために、体力があまりない。

 リリルは相変わらずダメな弟子に、呆れを抱く。


「あ、いえ。バギーが壊れたのは仕方ないことで――」

「そういってもらえるとありがたいです」


 呆れ顔でリリルはマロン達に顔を向ける。どこか頼りない弟子。それに罰を与えるようにこんなことを言った。


「マロン、それにティト。あなた達、鍛練が足りないですよ? そんなことでは、命がいくつあっても足りません」

「っ――。そう言われても、不意打ちをどうにかできる訳が――」

「言い訳は無用。そうですね、私のバギーを貸しますから夕ご飯までに近くの村で情報収集をしてきなさい」

「そんなぁー!」

「もしいい情報を掴めなければ、わかっていますよね?」


 その笑顔は、鬼だった。

 マロン達は「行ってきます!」と元気よく返事をし、テントの外へと走っていく。さすがにフィーネもこの様子に、リリルの恐ろしさを感じ取った。


「全く、私の弟子は」


 何か言いたげなリリル。だが、その言葉を口にする直前に、身体がふらついていた。

 思わず身体を支えるフィーネ。つい「大丈夫ですか?」と訊ねると、リリルは笑った。


「なんでもありませんよ。少し、疲れているだけです」


 フィーネはリリルのその笑顔に、違和感を覚える。だがその違和感が何なのか、ハッキリとわからなかった。


マロンとティトの師、リリル。

恐ろしくもしっかりしていて、頼りになりそうだ。

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