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トレジャーマーチ ◆◆◆青き少女と滅びた帝国の謎◆◆◆  作者: 小日向 ななつ
第1章 終わりを知るハジマリの物語
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私の名前

 重たい荷物を背負って歩くマロン。少ないながらも手伝うティトに、何も持たない青髪の少女を引きつれて進んでいく。

 本来ならば移動に一時間ばかりかかる道のり。しかし、バギーがぶっ壊れてしまったこの状況では一時間で辿り着くはずはない。

 歩いても歩いても見えてこない目的のキャンプ場。それでもマロンは、足場の悪い中を歩いていく。


「大丈夫?」


 ティトが心配げにマロンに声をかける。マロンは正直に「きつい」と言い、歩き続けた。

 正直な話、弱音を吐いても現状は変わらない。それに、下手すればさらに状況が悪化するかもしれなかった。それだけにバギーを失ったことが大きい。


「ねぇ、あなた」


 そんなマロンを見かねた少女が声をかける。立ち止まり、何気なく振り返るとこんなことを口にする。


「最低限の荷物だけ持てば?」


 言いたいことが何となくわかった。しかし、マロンにとってこれは大切な戦利品だ。


「置いていけるか。俺はこいつを殺したんだからな」

「あなたね、状況がわかっているの?」

「わかっている。そのうえで責任を取るんだ」


 少女は呆れた顔をした。

 マロンが持っているリュックの中身。それは少女にとって大切な存在だった者の残骸だ。


「わかってない。もし、その魔獣だっけ? 襲われちゃったらどうするのよ?」

「戦うだけだ」

「そっちの妖精の負担とか、考えているの?」


 マロンは言葉が詰まる。

 確かにそこまで考えていなかった。もしティトのことを考えると、ちんたらと移動している場合じゃない。


「だがな」

「ったく、詰めが甘い男ね。バックを下ろしなさい」


 そういって少女はマロンの傍に寄った。マロンは言われた通りにバックを下ろす。すると、少女は中に入っていた機械人形の頭だけ手に取り、マロンへと渡した。


「これだけにしなさい」


 マロンは手渡された頭部を静かに見つめる。なぜだかわからないが、その背中はどこか寂しげだ。


「なぁ」

「文句なし。さっき許してあげたでしょ?」

「いや、そういうことじゃなくて」

「じゃあ何よ? 何か不満がある?」


 詰め寄られたマロンは、何も言い返せなかった。

 不満はある。だが現状を考えると、この少女の言い分が正しい。


「ないなら歩く。わかった?」

「わかった……」


 荷物の八割を捨てて、マロン達は進み始める。

 サンサン、いやギラギラと輝く太陽は、そんな三人を嘲笑っていた。マロンは汗を拭う。ティトも熱さに参っていた。

 だがそんな二人よりも大変そうなのが、青髪の少女だった。


「ハァ、ハァ……」


 長い間、箱の中で眠っていたせいだろうか。少女は体力がなく、今にも倒れそうな勢いだ。

 マロンはそんな姿を見て、つい声をかけてしまう。


「大丈夫か?」

「あたり、前、じゃん」


 どこが平気だろうか。

 マロンはティトに目配せをし、足を止めた。


「休憩するぞ」

「え?」

「意地張られてぶっ倒れたら困る。それに俺達も限界だ」


 本来ならいち早くキャンプ場に辿り着きたい。だが、少女の状態を見ればそんなことを言っている場合じゃない。

 マロンはそう判断し、近くに合った大岩の影へと向かい始めた。


「ちょっ、ちょっと、さっきまで魔獣がって――」

「ほら、飲め。ちゃんと水分補給をしろ」

「わーい、休憩だー」


 少女が戸惑っていると、大岩の影にマロン達は荷物を置いた。その荷物を椅子代わりにして座るマロン。垂れ流れる汗を拭いながら、一緒に休もうとするティトにこんな指示をした。


「ティト、少しその辺りを見てきてくれ」

「えー?」

「あとでキャンディをやるから」

「約束だよ? マロン」


 ティトはどこかへと飛んでいった。マロンはそんなティトを見送った後、周辺を見渡す。


「魔獣の気配はなしと」


 油断のならない敵はいない。そう踏んだマロンは、少女に顔を向ける。

 少女は少し警戒しながらマロンが待っている日影へと来る。そして、一度マロンを睨んでから渡されていた水筒のフタを開けた。

 口へと運び、喉を鳴らして水を飲んでいく。それは見ている側からしても気持ちいい飲みっぷりだ。


「プハァ」


 それはまるで、生き返ったかのような顔だった。それを見たマロンは、つい顔を綻ばせてしまう。


「何よ?」

「アンタも俺達を変わらないんだな」


 少女はその言葉に、つい目を点にしてしまった。


「何バカなことを言っているのよ? 見た目は、まあ違うけど、同じ人間よ? 大差がある訳ないじゃない」

「ほう、アンタはれっきとした人間だったか」

「あなた、ケンカ売っているの?」


 マロンはその言葉に堪らず笑った。

 どこか不安だった。この少女は、自分達と違うんじゃないかと。だけどその不安は完全になくなる。

 だってこの少女は、自分と同じだ。


「おーい、マローン」


 笑っているとティトが帰ってきた。マロンは何気なく振り返り、ティトに目を向ける。


「ねぇ、あなた」


 その瞬間だった。少女がマロンを呼んだのは。


「なんだ?」

「私、フィーネって名前だから」

「突然どうした?」

「勘違いしないで。いつまでもアンタって言われるの、嫌なだけだから」


 マロンは反応に困った。だけど少しだけ、戸惑いもなくなる。

 だから感謝を言葉にして送った。


「わかった。これからはそう呼ぶ。いいだろ? フィーネ」


 フィーネはフンと鼻を鳴らし、顔を逸らした。

 だが、少しずつマロンに心を開いた様子であった。


マロンに名前を告げたフィーネ。

ちょっとずつだが心を開いていく。


次はマロン達が恐れている師匠が登場だ。

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