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瑚島憧護の囚人生活  作者: 水月さなぎ
The New World
31/31

多分幸せかな

 

 三年後――

「いらっしゃ~い」

「ようこそ~」

「うえるかむ?」

「………………」

 無事にお勤めも終了し、ようやく鬼軍曹から解放されて社会復帰したところで表向き死亡。

 異世界もとい隠世へと移住(?)した俺を出迎えてくれたのは枝宮さんとなると結だった。

 身体を殺してやってきたのに大歓迎されているのが何とも複雑だ。

 しばらく来ないうちに建物や人が増えていてちょっとびっくりした。

「世の中どんだけ自殺志願者が多いかってはナシよね~」

「ノーコメントで」

 つまりあれは全部自殺志願者らしい。

 プログラムで身体を殺して隠世に移住。

 それぞれの表情を見る限り、心穏やかに過ごせているらしい。

 それはまあ、悪くないことなのだろう。

 結もこの二年間で成長したらしく、胸もちょっぴり出てきた。

 もみもみ出来るぐらいには。

 まだまだなるには追いつけないが。

 というかなるは結構巨乳なんだよな。

 着やせするタイプというか。

 俺も押し当てられて初めて分かったけど。

 やはりこの世界にも成長というものはあるらしく、意識体になったからといって不老不死というわけではないようだ。

 それは生物として自然なあり方なのでむしろほっとしている。

「ママ~。せっかく憧護くんが来てくれたんだからちょっとは気を遣ってよね」

 なるが割り込んでくる。

「気を遣うって?」

「結ちゃんとあたしと三人でらぶらぶさせてって言ってるの」

「言ってねー……」

 しかし気が付いたら両腕に結となるがしがみついている。

 ささやかな感触と素敵な感触。

 どっちも捨てがたい。

 いやいや本命は結だけどな!

「んー、どうせ治外法権なら私も乱入しちゃおうかな?」

「やめーっ!」

 恐ろしい事を言わないでください枝宮さん!

 なまじ大人の魅力に満ち溢れているだけにいざという時には抗いがたいデス!


 枝宮さんの誘惑を何とか振り切って、具体的には二人の強烈な視線が怖くてその場から逃げ出したのだが、そこでようやく落ち着くことが出来た。

「なんだか、のどかなところだよな」

 田舎風景みたいな感じだ。

 でも悪い気はしないし、ずっとここに居たい気もする。

「ここはね、時間がゆっくり流れるんだよ」

「でもそれが不思議と退屈じゃないんだよね。そのゆっくりさが愛おしいというか、何もないけど、大切なものはちゃんとそばにある、みたいな感覚かな」

 結となるが言う。

 確かにその通りなのかもしれない。

「これからずっとここで暮らすんだし、このましい気持ちになるのはいい事なんだろうな」

「もちろん」

「あたし達もいるしね」

 両腕に感じるのは二人のぬくもり。

 身体は死んでしまったけれど、確かにそこにある命。

 ここで、生きているんだ。

 俺も、結も、なるも。

 そしてそのほかの人たちも。

 新しい居場所で、確かに生きている。

 枝宮さんが本当は何を目指していたのか、本当にこの世界を創って意識体だけで生きていきたかったのかどうかはまだ分からない。

 だけど分からなくてもいいと思う。

 俺は今、満たされている。

 結も、そしてきっとなるも。

 違う理が流れる世界だけれど、それでも愛おしく感じるのだから。

「ずっと一緒にいようね、憧護くん」

 右腕に抱きついてくる結。

「もちろん」

 即答する俺。

「ずっと一緒にいようね、憧護くん」

 左腕に抱きついてくるなる。

「……まあ、結果として一緒にいるんだろうけど」

 あいまいに返事をする俺。

「ちょっと何よその反応ーっ! 結ちゃんと大違いじゃないの!」

「当たり前だろうが! 本命と強制浮気相手と一緒にするな!」

 なるが怒鳴って、俺も負けじと怒鳴る。

 ここで妥協したら負けだ。

 あくまでも本命は結なのだと主張しておかなければ。

「このーっ!」

「ぎゃあああああーーっ!?」

 押し倒された。

 結の目の前で。

「そんなに言うなら襲っちゃるーっ!」

「やめーっ! 結が見てるんだぞーっ!」

「……わたしも混ざっていい?」

 結がほのかに赤くなりながら言う。

「混ざるな! つーか止めろ!」

「さん●!」

「アホかーっ!」

 じたばたと暴れつつ、俺は必死になるの手から逃れるのだった。


 まあ、幸せなんだと思う。

 この場所で、みんな笑っているんだから。

 俺も、結も、そしてなるも、ここで生きていくんだ。

 これからずっと……


 とりあえず襲われることに関しては何らかの対策が必要だが。

 いつでも逃げ出せるように足を鍛えようかな……



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