【遥希】優芽との再会、まだ誰も恋人同士じゃないのになんか危うい距離感
「わあ遥希先輩だ!」
あの頃と変わらない笑顔で、中3の頃の後輩、優芽が居酒屋に入ってきた。
かつての親友だった優芽の兄を通しての再会が叶ったのが、時間を少しさかのぼる連休まえだった。
久しぶりに3人で飲もうと、そこには書いてあった
「え、いつぶりだっけ」
大人になった優芽を目の前に、不思議な気持ちで聞いてしまう
「高1の夏休み以来だから10、11年とかぶり?」
優芽は中学卒業と同時にいなくなった。
あの頃の俺には、もう会えない距離に感じてたっけ。
「そっか、もうそんなにたつんだ」
「遥希先輩、老けたね!」
そんなストレートに言わなくても、と思ったが確かに10年は長い。
親友の妹ということもあり、夏休みにはなぜか俺も誘われて、優芽のいる祖父母の家に泊まりがけで行ったことがあった。
そんな夏休みの終わり、優芽とキスした。
あれはたぶん、初恋だった。
夏休みの思い出止まりで、つきあえなかった後悔もあった。
再会はあの頃からのやり直しのチャンスだと俺は思っていたんだ…
久しぶりに会った優芽と、あの頃にはなかったLINEの交換ができた
「遥希先輩、じゃなくて、はるくん!」
優芽からそう呼ばれてドキッとする。
「はるくん、遊んで」
あの頃のように懐いてくる優芽。
そろそろ連休だし、距離を詰めるのにいいじゃんって思って、
「週末、仕事仲間と飲み会やるから来るか?」
と、本当はまだそんな予定もないのに言ってしまった。
「うん、行く!」
優芽のテンションはあの頃の再現?
無邪気そうに見えるけど、装ってんのかな?
まあでも、昔の友人に会うと途端に昔に戻るっていうし、あれと同じ感覚なんだろうと思った。
それから俺は凪に連絡をし、飲み会のセッティングを頼んだ
2人きりで飲んでもよかったが、理性を抑えきれる自信がなかった。
あの頃のノリって言ったって、優芽はちゃんと大人の女性になっていた。
体つきだって、あの頃とは違う。
無造作にまとめてた髪の毛だって、十分すぎるくらいの色っぽさがあった。
居酒屋の前で優芽と写真を撮ったとき、肩が触れそうなくらい近かった。
「もっとこっち寄って」
優芽が無邪気に寄せてくる。
…近い。
写真撮るだけでこんなに緊張するとか、あの頃の俺、想像もしてなかった。
そう、優芽の髪はきれいで、あの頃何度も触ってみたかった。
触れないまま終わった後悔。
また触れるかもしれないという期待。
合コンなんか行ってる場合じゃなかったんだ。
凪はしょうがねーなって言いつつ、イタリアンバルを予約してくれた。
結菜ちゃん、イタリアンが好きらしい
凪と結菜ちゃんはいまのところうまくいってるようだ。
告白はまだしてない、つきあってないってことだけど、
そのわりにふたりの距離が近いんだな
いまでこそ、ようやく結菜ちゃんに落ち着いたように見えるものの、あいつはやばい。
過去には俺がつきあってた子を取られたことがあったんだ
「だって凪くんの目がきれいなんだもん」
は?だよ
カラコン入れてるだけだろ
凪いわく、俺が5秒見つめたら、ほとんどの女の子は恋に落ちるんだ、なんて。
優芽にまで手を出されないとも限らないし、
「優芽と話すの禁止な」
って一応は凪に言ってあるけど、
「えー遥希、つきあってないんだろ?」
まだ、俺の女扱いすんの早くね?
って薄く笑いながら言われた。
優芽を凪に近づけたくないなら、なんで一緒に遊んでる?
なぜ仲良くしてる? って思われるだろうけどな、
「いろんな諸事情」
というのが、あって。
凪が俺から離れるのは、それも何かとヤバいのだ。
大人の女性になった優芽の中に俺は、中2の面影を探していた。
俺が優芽の中に中2の優芽を見てるように、優芽も俺の中に、中3の俺を見てるんじゃないか?
とすると、中3の俺がライバルなんだよ!
勝てるのかな?
それに優芽はハイスペイケメンエリートな男とつきあってて、最近別れたばかりだという。
土曜日の午後、凪がうちに来てたんだけどさ、そのときに聞いたんだ
「ハイスペってなんだ?」
「年収1000万以上とかじゃね?」
「イケメンエリートって…」
「遥希にないものじゃね?」
凪の言うことは、たぶん当たってる
そんなのに敵うわけねーしって落ち込んでたら
「ハイスペイケメンエリートとダメになったからこその遥希じゃん?」
つまり、ハイスペイケメンエリートにないものを遥希なら持ってんだろって話
それは喜んでいいところなんだろうか?
「遥希ごちゃごちゃめんどくさ…」
凪が吐き捨てるみたいに言って
「そんなハイスペとつきあってたくらいの女なら、グズグズしてたらあっさりほかの男に取られるんじゃねーの?」
たとえば俺とか?
いいのかよって凪はいうけど、
「いいわけ、ないし」
「だったらさっさと告れば?」
まだ誰も、「恋人」とは言えない距離。
なのに、なんかもう危うい。
どうなるんだ?
大丈夫なのか?
凪がなにもしませんようにと、普段信じてないくせに神様に祈っていた




