【優芽】オーシャンビューよりもサンセットよりもたこ焼き食べたかった
「海がきれいだね」
と、つい先日つきあい始めた彼氏、拓海さんが言った。
目の前に広がるオーシャンビューっていうらしいけど、風がぴゅーぴゅー吹いてんだよ、
おーしゃんぴゅーだ!
でも海はまあまあきれい。
「そうですね」
話を合わせたけど、それよりお腹すいたって思ってた。
「もう少ししたら綺麗なサンセットが見えるんだよ」
サンセット待ち?
って思うと、さらにお腹がすいてくる。
拓海さんは婚活市場でいうところの、ハイスペイケメンエリートらしい。
わたしはイケメン好きだ。
脳内にはオリジナルのイケメン図鑑を持っている。
拓海さんの顔も整ってるから、その図鑑にいれてある。
でも話が全然面白くなかった。
拓海さんは、わたしが働いてるカフェの常連さん。
「あなたの笑顔をずっと近くでみていたい」
って告白されたのでつきあってみた。
すべてが演出みたいで、気持ち悪いくらい完璧なエスコート。
なんか、いい子にしてなきゃダメみたい。
わたしの知らない言葉つかうし、
「え、なんですって?」
いちいち聞かないとわからないし、たこ焼きとかでもいいのに、そんなのは拓海さんセレクトには絶対入ってない。
はっきり言って
「合わない」
と思った。
つきあってから拓海さんは、店の定休日以外、毎日ランチタイムにくるようになった。
そしてだんだん
「ちょっと笑顔ふりまきすぎじゃないか」
とか、ほかの常連さんと話してるだけで、話し過ぎだよとかいちいち言うようになっていった。
自分のいきつけの美容室を勝手に予約し、
「おまかせで」
って担当のひとに言ってるし、それまで一度も染めたことのない髪をミルクティー色にされたり、レイヤーをいれたらいいよって。
「いいね、すごくきれいだ」
その仕上がりに満足したのか、自分のセンスに酔ってんのか?
と思うようなセリフ言ってたけど、でもまあ、鏡の中のわたしは確かにあか抜けたような、きれいな姿になっていた。
美容室おすすめの高級シャンプーや、高級ヘアアイロンを買ってくれたけど、はっきり言って、うまく巻けないし余計にぐしゃぐしゃになった。
でもシャンプーはいいにおいで気に入った。
自分じゃ2度と買えない値段だった。
アイロンは面倒なので、ひとつにまとめてポニーテールにしてるけど、毛先にレイヤーが入ってるからか、わりとふわふわに見えて悪くなかった。
そんなある日、高校のときお世話になってた祖父母の家。
バスルームをリフォームしたいから、話を聞きにきてくれっておばあちゃんに頼まれた。
店が休みの水曜日、わたしは話を聞きに行くんだけど、地元で懇意にしてる工務店のあととり、小学校のときの同級生が来てた。
ハイスペと言えば、この人もハイスペなんじゃないかな?
作業着、わりとかっこいい。
イケメン図鑑にいれておこっと心の中でつぶやいた。
その同級生にバスルームの壁がタイルなのでって説明を受けてるとき
「あ、これ…」
一部分、タイルが欠けてるところがあるんだよね。
高校1年の夏休み、お兄ちゃんとその親友の遥希先輩が泊りにきたとき、バスルームでふざけて壊したんだ。
懐かしいなって思った。
うちの親、再婚だからお兄ちゃんはいきなりできた。
ひとつ年上のお兄ちゃんは、わたしを遥希先輩、あ、呼び慣れてるから、はるくんって言うんだけど、そのはるくんに紹介してくれた。
「俺の妹、手出すなよ」
って。
思春期真っただ中の多感な時期。
良く3人でちょっと悪いことしてたっけ。
ふざけて缶チューハイ飲んで、はるくんにチューってした。
「缶チューハイでチューだって!!」
めちゃふざけて笑ったっけ。
お兄ちゃんに手を出すなよって止められてたはるくんに、わたしのほうから手を出した。
あのとき、はるくん、ほかの女の子に告白されて、なんか悔しかったんだ。
わたしのはるくんなのに、ほかの子のものになる前にって、手をつけた。
ていうより、唇くっつけただけなんだけどさ
あのあと結局はるくんは女の子とつきあわなかった。
その場面をお兄ちゃんも見てたから、
「優芽がいいなら、遥希つきあえば?」
って言ってくれて、確かに両想い成立していたのに、その後はるくんとは離れ離れになってしまった。
「はるくん元気かな」
会いたいなって思った。
はるくんはわたしのイケメン図鑑第一号だった。
はるくんがいまも一番上に保存されてて、はるくんを上回る好きはまだいない。
歌がめちゃうまくって、キセキとか粉雪とかでも上手に歌ってくれてた。
カッコよかったなぁ…
拓海さんは正統派イケメン。
100人いれば100人イケメンですねってきっと言う。
はるくんは、ふとした表情とか、横顔とか、瞬間的雰囲気イケメンなんだ。
笑ったときにちらって見える歯とか、マイク持ってた指先とか、髪型もかっこよかったし、あとはね
「嘘がつけない目」
隠し事できないっていうか、隠せてないところ。
すっごく良かった。
いまどうなってるんだろ、昔と変わってるかな?
考えてたら本気で会いたくなった。
お兄ちゃんに言えば会えるかもしれない。
わたしは早速うちに帰ると、兄に連絡をとってみた。
読んでくださりありがとうございます
次の更新は夜22時を目標にしてます。
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