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7.海の漢





照りつける太陽、風に乗って頬をくすぐる磯の香り。どこまでも続く水平線。――そう、ここは海。

カモメがエサを求めて上空を飛んでいるその真下で、海岸沿いに打ち付ける波を見下ろしたリアは片手に書類を握りしめていた。


「暑いな」

「隊長!」

「ユージン、漁師はなんて?」


海の近くにある漁師たちの家を訪ねていたユージンはリアに駆け寄ると首を降った。


「昨日の夕方に沖に出てから戻って来てないそうです」

「随分と時間がかかっているようだな。大捕物でもやっているのか?」


リアとユージンの二人は定例会議になかなか参加できない南の部隊長のため、最近の議事録をまとめた資料を渡しに王国の南側にある海岸まで来ていた。説明係としてリアが、その付き添いとしてユージンがこうして足を運んだが、肝心の南の部隊長は出港したまま帰ってきてなかった。


「しょうがない。どこかでお茶でもしながら待つか」

「はい。それなら、あちらに隊長好みのジェラートを出しているカフェがありますので、そちらに向かいましょう」


海からの照り返しが強く、塩を含んだベタベタとした風に密かに疲弊していたリアだったが、ユージンの言葉に気分が上がる。


「ジェラートか!こんな暑い日にピッタリだな!早く行こう!」

「はい」


自然と繋がれる手に引っ張られながら、ユージンは楽しそうに歩く彼女の手を握り返した。





「んー!美味しい!」


外が見渡しやすいようにテラス席に座った二人は早速、お店おすすめのフルーツを使ったジェラートに舌鼓を打っていた。


「それにしても、わざわざ隊長自ら南の部隊長に会いに行くほど、その書類には重要なことが書かれているんですか?」

「うーん、そこまで言うほどのことではないが、個人的に気になることがあってな。直接、南のに確認した方が早いと思って来たんだ」

まあ、あいつは海に出たまま戻ってきてないが。

「気になることですか?」

「ああ、『石』についてちょっとな」

「!それは……」


リアから出た言葉にユージンが小さく息を飲んだ。


「どうも陸と海では魔物の特徴に違いがあるみたいなんだ。わたしはこの差は人為的な何かが働いた結果から来るものだと思っている。一連の魔物の異常発生とその原因と思われる高魔力結晶。やはり、何かしらか『石』が関係しているんじゃないかと疑っているんだ」


リアの憶測を聞き、ユージンは申し訳なさそうに目線を下に向けた。


「すいません。隊長の貴重なお時間を頂戴してまで……」

「何を言っている?約束しただろ?必ず見つけ出してみせるさ。『紫』もあの時の犯人もな」

だから、そんな顔するな。

「……ありがとうございます」


リアに元気付けられたユージンは彼女の笑顔を眩しそうに見つめていた。





「あいつはいつ戻ってくるんだ?」


遅めの昼食もこのカフェでいただいた二人は本日二回目のジェラートタイムに入っていた。


「夕方までに戻らなければ近隣の漁師が捜索しに行くそうです。最近は沖合いでの魔物の発生が漁の妨げになっているらしく、海の魔物を退治してくれる南司令部は彼らにとってなくてはならない存在だとか」

「あいつは人当たりが良いからな。特に南のように拠点を持って任務を遂行する際には、そこに住む者と良好な関係を築くことは何よりも重要だ。南の連中はそういうのが得意な奴らばかりだし、住民が協力的なのは不思議なことじゃない」

「確かにそうですね。あ、隊長、こちらのブドウのジェラートもいかがですか?味がしっかりしていて美味しいですよ」


どうぞ、と差し出されたスプーンには早く食べてといわんばかりに溶けかけたジェラートが太陽の光を反射していた。

甘いものに目がないリアは目の前にいるユージンの思惑など微塵も考えずに、それに吸い寄せられていく。


「いいのか?じゃあ、遠慮なく……」

「よう!待たせたみたいで悪かったな!リア嬢!」


あと少しのところでリアの口にジェラートが入るというタイミングで、がたいのいい男の大きな声が割り込んできた。

リアが好みそうなデザートがある店をわざわざ調べあげ、あわよくばと計画してたあーん及び間接キスを邪魔されたユージンは舌打ちをすると柵を迂回して店内に入ってきたその男を座ったまま見上げる。


「ん?なんか邪魔しちまったか?」

「……いえ」

「ワイズ!随分と遅かったではないか!今回は何を釣り上げたんだ?」


リアの疑問に南の部隊長であるクリフォード・ワイズはニッと白い歯を見せて笑う。


「おお、それが聞いてくれよ。こんなに大きなイカが俺の船を海に引きずり込もうとしてきてな!なんとか奴の右目を潰して命からがら戻ってきたっていうわけよ。ガハハハ!」

「それ、笑い事か?」

「いや、あん時は先に一仕事やってたから装備が十分じゃなくてな。これからまた奴を仕留めに行くところだ。あんなのが他の漁船を捕まえてみろ。たちまち海の底へご招待されてしまうぜ」

「ほう、それはちょうどいい。海の魔物をこの目で見てみたいと思っていたんだ。わたしたちもそのイカ退治に参加する。いいな?」

「まあ、俺は別にいいぜ。でも、船から落ちないようにしろよ。特にリア嬢は小さいんだから心配だ」

「わたしを子供扱いするな!」


リアの頭を撫でていたクリフォードの手を叩き落とし抗議をする。


「悪い悪い。つい、撫でやすい高さにあるもんでな。お詫びと言っちゃあなんだが、ここの支払いは俺が持つ。出港までには時間があるから、悪いがもう少しここで待っていてくれ」

「むう。それなら仕方ないな。マスター!ジェラートの追加頼む!あ、あと、ケーキセットも!」


もう気にしていないのか、先程とは一転して楽しそうにデザートを待つリアを見て、やはり子供っぽいなと思うクリフォードであった。


「ウィスタリアは何か頼まないのか?遠慮しなくていいぜ」

「そうですね。では、遠慮なく。マスター、この店で一番高いのください」

「やっぱり、お前、怒ってるよな」

「いえ、別に」





一人の男がいた。

青年と呼ぶには顔立ちが幼く、少年と呼ぶにはその瞳は達観していた。

彼の視線は空の青と海の青がぶつかる境界線に向けられていた。その横顔はどこか安堵したようでも、物悲しそうでもあった。


「これだけは変わらないな」


あともう一歩進むと海に落ちるギリギリの場所に立つ彼は一人、港にたたずんでいた。

そんな彼を見つけたのはリアたちをカフェに残し、一人戻ってきたクリフォード。今にも海に落ちそうな若者を見て海を取り仕切る隊長らしく注意を促す。


「おい、少年!あんまり海に近づくのはおすすめしないぜ。最近は魔物が浅瀬まで来ることもある。万が一もあるからな。海に引きずり込まれたら生きては帰れねぇぞ」

「……そう、生きては帰れないんだね。ご忠告感謝するよ」

「おう」


素直に返事をした少年。海の方を見つめているため、後ろ姿しか確認できないが初めて見る少年だった。近所の住民と交流があるクリフォードは彼がここに住む者ではないことがわかっていた。


観光か何かで海に来ているのか?


近くの砂浜ならまだしも、漁船が多い港にわざわざ来る観光客など珍しい。一瞬、迷子か?と考えた彼だったが、後ろから自分を呼ぶ声が聞こえ、振り向く。


「隊長ー!準備終わりました!」

「おう!今行く!直に日が暮れる。少年も遊んでないで帰れ……って、あれ?」

「どうしたんすか?」

「いや、さっきまでここに少年がいたんだが……」


辺りを見渡しても誰もいない。


「そんな人どこにもいませんよ」

「おっかしいなぁ」

「それよりも!今回はリア嬢も参加するんすよね!リア嬢に会うの皆楽しみにしているんです!早く呼んできましょうよ!あんまり待たせると彼女怒っちまいますよ」

「おう、それもそうだな」


早めに巨大イカを仕留めなければ漁師たちが漁に出られない。それに部下の言うように、ここでもたついてても長時間待ち続けているリアに申し訳ない。

突然姿を消した少年のことが気がかりだったが、自分の任務を優先させるためクリフォードは頭を切り替えた。





ユーロジア王国の五つの司令部において、主に領土を守護するのはサイラス率いる北司令部とリア率いる東司令部である。エリオット率いる西司令部は王宮の守護を、中央司令部は他の司令部を取りまとめる役割をおっている。

そして、南司令部では主に海上での魔物退治や外敵の侵入を防ぐという、海上防衛の役割を担っている。そのため、南司令部は巨大な船を所有していた。


沖合いの海に浮かぶのはユーロジア王国が誇る巨大船。

この船は王国の技術の結晶である。

船の動力は『石』に限りなく近い代物らしく、魔力の高効率・高循環を可能にしている。魔力の充填さえ行えば、数百人は乗れるこの大きな船を動かすことが出来るというのだから、魔研が誇る作品の一つであるのは納得できる。

他にもさまざまな最新技術や魔術魔法が使われているが、詳しい話を聞こうとすると魔研の奴らの話が止まらなくなるため、リアはその詳細を知らない。

前にうっかり新しい武器についての魔術原理を聞いたら朝まで帰してもらえなかったのだ。それからは口頭ではなく文書で説明をもらうことにしていた。


そんなリアは今、屈強な男たちに囲まれていた。


「ほら、リア嬢の好きな焼き菓子だぜ」

「うむ、いただこう」

「お嬢はこっちのも好きだったよな?」

「そうだな、いただこう」

「リア嬢、のどが渇いたら言えよ。あっちに果実水用意してるからよ」

「ああ、後でいただこう」


リアの手に抱えきれないほどの甘いものが集まってくる。


「お前ら、いくらなんでもやりすぎだ。リア嬢が夕飯を食べれなくなるだろうが」

「えぇー、いいじゃないですかぁ」

「隊長だってリア嬢にアイス奢ってあげたんでしょう?」

「隊長ばかりズルいですよ!俺達もリア嬢を愛でたいんです!」

「そうだそうだ!お嬢見てると実家に預けたタマ(猫)を思い出すんです!」

「ああ、俺も今年で五歳になる姪っ子とリア嬢の姿が被って涙が出てきちまう」


聞き分けのない部下にため息をつく。


「ったく、お前らは……悪いな、リア嬢も嫌なら断ってくれても良いんだぜ」

「んあ?別に嫌じゃないが、こう寄ってこられるとただでさえ日差しが暑いのに余計に熱を感じるのがな。でも、お菓子に罪はないからな。くれると言うのならもらうぞ」


完全に隊員たちの態度が動物や子供に対するときと同じになっているが、幸い、もらったお菓子を数えるのに忙しかったリアは彼らの発言を聞いていなかった。



甲斐甲斐しくリアの世話を焼く南の隊員たちにリア自身は悪感情など持っていない。

北司令部は東司令部と対立していることもあり、リアの姿を見ると隊員たちは回れ右をして逃げていく。西司令部はなにかとリアをエリオットのいる部隊長室に押し込もうとしてくるため苦手だった。中央司令部はもはや論外である。そんな他の司令部に比べると南司令部は皆、強面でがたいがいいがフレンドリーだ。そして、こうして物をくれる者が多い。


しかし、そんなことを思っているリアに対して、彼女の隣に立つユージンは違った。日頃からリアの傍で副官として彼女のお世話をしている彼は、自分以外の人間がリアに食べ物を与えることを良しとしていなかった。特に、好物のお菓子を与えたときのリアは花が咲いたように笑うのだ。その機会を他人に易々と奪われるなど、はらわたが煮えくり返る思いだったが、隣で喜んでいるリアを前になんとか無表情を貫いていた。


「お前ら!もうすぐ、アイツのテリトリーに入る。そろそろ気を引き締めろ!」


クリフォードの掛け声に隊員たちも気合いのはいった返事をする。

ここに来るまで何事もなく、穏やかな海を船は進んでいたが、例の巨大イカの近くまで来ていたらしい。隊員たちが慌ただしく動く。


「いよいよだな」


初めて見る海の魔物に興味がつきないリアは甲板の真ん中でその時を待っていた。





それは突然だった。


先ほどまで吹いていた風が止んで、海面が静まっていく。不思議と海の音が聞こえなくなったその時、そいつは現れた。


「うわっ!」


船が傾いていく。甲板にある物が一方向に転がっていった。


「隊長!」


リアも船体が揺れる衝撃で体が浮き、たたらを踏んだが、差し出されたユージンの手に捕まり、なんとか持ちこたえる。


「すまん、ユージン!」

「いえ。それよりも隊長、あれは……」


ユージンの視線の先をたどると一本の大きな触手が甲板の先に覆い被さっていた。


「なんだあれは……!?」

「ははは!来やがったぜ!」

「まさか、あれが例のイカなのか!?」

「おうとも!懲りずに俺達を引きずり込もうとしてやがる。お前ら!船を転覆させんじゃねぇぞ!このまま前進してあいつを海から引きずり出してやれ!」


隊員たちの野太い声が返ってくる。その間も、二本目三本目とイカの巨大な腕が船に絡み付いてくる。


「一体、海の中はどうなっているんだ?陸であんな巨大化している魔物はいないぞ!」

「ガハハハ!そうだろうな。でも、やることは陸でも海でも変わんねぇだろ?」

なあ、リア嬢?

「!ああ、そうだな。わたしとしたことが、初めて見るサイズに少し興奮してしまっていたみたいだ」


クリフォードのお陰で冷静さを取り戻した。



船が前進を始め、傾きが軽減される。しかし、依然として絡み付いた触手が強い力で船体を締め上げていた。船がミシミシと音を立てる。

このままでは船が壊される、と隊員たちが触手に攻撃を仕掛けるが、効果はイマイチのようだ。


「切りつけるだけじゃ意味がねぇ!切断するぐれぇの力でやらねぇと!」

「魔砲弾はどうだ?」

「馬鹿かテメェは!そんなもん船にくっついてるイカに向けたらこの船も巻き添え食らうだろうが!」


隊員の怒号ともとれる叫び声が飛び交う。

魔砲弾はこの船に装備されている対軍艦用の秘密兵器である。放出エネルギーが半端じゃないので、そう易々と使って良いものではない。

手詰まりになってしまった隊員たちの後ろから力強い声がかかる。


「お前たち!わたしの存在を忘れているな?」

「リア嬢!」

「ふふふ!安心しろ!こんなイカに遅れをとるわたしではない!行くぞ、ユージン!あいつらに東司令部の力、見せつけてやる!」

「はい!」


仁王立ちしていたリアは一本の触手に近寄ると、魔力を込めた手を振りかざす。すると途端に甲板を横切っていた触手が燃えて炭になった。


「フッ、完全に燃やしてしまえば動くこともないだろう?」

「うぉおおお!リア嬢すげぇ!」

「一瞬で炭にしちまった!」

「ふははは!そうだろう?そうだろう?」


褒められてご満悦なリアは残りの触手も炭にしようと足を動かしたが、横から触手が薙ぎ払うかのように彼女に向かって飛んできた。

しかし、リアは危なげなくそれを避けると、その勢いのまま触手は待ち構えていたユージンによって光の剣でバラバラにされてしまった。

彼の周りには切られても尚、うごめく触手が散乱していたが、それもやがて力尽き、動きを止める。


「マジかよ。俺たちの剣じゃあ切れなかったのに……」

「当たり前だ。ユージンの剣は高圧縮された光の束。強度もその長さもユージンの光魔法で調整できる代物だぞ。こんな軟体動物の足くらい刺身を切るくらい簡単に切断できるさ」

「そりゃすげぇ……ってお嬢!後ろ!」


隊員の声に後ろを振り向くと、二本も自らの足を失くした巨大イカが海から頭を出して甲板に乗り上げてきていた。クリフォードの言ったとおり右目を負傷している。残った左目がギョロギョロ動き、足を攻撃した犯人を探していた。イカに感情があるかは不明だが、その目からは怒りがにじみ出ているように感じた。


「本体のおでましだ!お前ら!東にだけいい格好させられるかよ!南司令部の意地を見せてやれ!」


船全体を包むかのような大声が上がる。隊長のかけ声で士気が上がった隊員たちが一斉にイカに飛びかかった。後ろからは魔法銃を抱えた隊員が、イカの頭を狙って発砲している。

隊員たちの猛攻に何本もの触手を動かし暴れるイカ。まさに船上は混戦状態だ。


「ふっ、流石だな。負けてられない!わたしたちも行くぞ!」


リアは片手に炎をまとい駆け出す。自らの触手を焼いた犯人に気がついたのか、彼女目掛けて空から触手が振り落とされる。


「ユージン!」

「はい!」


呼び掛けられたユージンは一瞬のうちにイメージを固まらせる。


硬く、大きく、頑丈な板を……!


彼が手を伸ばすとリアの目の前に光の板が形成された。リアはそれを踏み台にして触手を避けると、次々と形作る板に跳び移っていく。そして、イカの目前まで来ると、まとっていた炎を掌に集め、手を空に向けて大きく伸ばした。所謂、投球フォームである。


「ははは!前ががら空きじゃないか!焼きイカにしてやる!」


勝利を確信したリアが一層炎を大きくする。

――その時、ふと、イカと目があった。


ブシャ!


リアの視界が黒く染まる。ついでに言うと彼女の白い軍服も、その白い肌でさえ、全身がイカの噴射したイカスミで黒くなっていた。掌の炎も衝撃で消え、突然のことにリアはその体勢のまま呆然としていた。


「隊長!」

「あ、あ、あ」

「ウィスタリア!受け取れ!」


光の板に跳び乗って、固まっているリアを掴んだクリフォードは後ろへ彼女を投げる。待ち構えていたユージンが受けとめ、すぐさま光で二人を囲うように壁を作ると、リアの肩を揺さぶる。


「隊長、しっかりしてください!」

「ハッ!ユージンか?イカは!?」




「おら!この海で誰が一番強いか教えてやる!かかってこい!」


リアが茫然自失になっていた間にクリフォードがイカの目の前に出て戦っていた。

その手には大きなモリを持っており、渦を巻いた水柱が何本も彼の周りを囲んでいた。


「あの水は、あいつの魔法か!」


クリフォードは海を守る隊長に相応しく、水を使う魔法を得意としていた。フィールドが海なら水の生成を行わずに、直接海水を使用すればいいので、彼の魔法と相性がいいのだ。


大量の水柱をぶつけてイカの動きを止めるとユージンが作り出していた光の板から飛び降り、イカの左目を目掛けてモリを投げる。


「おらぁあああ!」


勢いよく投げられたそれはスピードにのって無防備な左目に突き刺さった。しばらく船全体が揺れるほど触手を無造作に振り回し暴れたイカだったが、徐々にその力が弱くなり、最後は甲板の上に全身を投げ出すように倒れ、動かなくなった。

静寂が広がる。


「……隊長、これって……」

「おう!俺たちの勝ちだ」

「うおっしゃああああ!」

「勝ったぞ!勝ったぞぉおお!」


喜びにわく隊員たちにクリフォードは声をかける。


「お前ら、嬉しいのはわかるが、先に負傷者の手当てをするぞ。海に落ちた奴も回収する。そのあとは……皆で宴会だ!」





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