89.俺、口では勝てませんでした…
フェニックスは地に落ちた。
大きさの割に軽かったようで、落下時の衝撃は少なかった。
それなりの被害――木が折れるとか、土煙が立つとか――は出たけどね。
さて、本物の不死鳥なら蘇るとこだけど、こいつはどうだ?
とりあえず、本体は燃えっぱなしだ。
ただ、灰になる気配はない。
デカすぎて全体を見るのは大変だから、探知も併用しよう。
ん!?
頭の位置にカラスの反応が四つ…。
はい、注目!
「クワーッ、なんや、エライ目に遭うたな」
「ほんまやし」
「まったく、どないなってまんねん」
「なぁ、普通、こんだけデカいもん落とせるかぁ?」
「無理やねー」
「いいや、現実はちゃんと受け入れなあきまへん」
「そやで」
…なんか、燃え盛る炎を気にも留めず、ザクロ色したカラスが四羽出てきたんですけど……。
しかも、普通に関西圏の言葉で会話してるし…。
文字だと伝わりにくいけど、オス二羽メス二羽な模様。
俺はSDGをカラスたちの目の前に着けた。
「おい、お前ら何者だ?」
「そんなん、見てわからへんか? カラスに決まってるやん」
「あんさん、ちょっと待ぃや。いきなりお前らは無いんちゃうか?」
「あんた、この辺じゃ見ぃひんスライムやね?」
「うち、スライムは好かん」
「アホ。そんなん、私かて好かんわ」
「そうやなぁ、初対面でお前言われたら、そらぁカチンくるでぇ」
「せやせや、にいちゃん、気ぃつけなあかんで」
「だいたいやね、何でうちらがあんたに答えなあかんの?」
「人にもの聞くときは、聞きかたっちゅうもんがあるわな」
「この子、田舎もんなんちゃうか?」
うぐっ、関西人の総ツッコミ。
一対四じゃ、分が悪すぎ!
俺、防戦一方です…。
「ほんなら、うちら先行くし。ナナ、あと頼むわ」
「うん、まかしとき」
あ、あ、あーあ…。
何も聞き出せないまま、カラス三羽は飛び去った。
残ったカラスは羽を一枚抜くと、炎の中に投げ入れる。
「わたしの可愛いお宝さん、アヒ・マヌを元気にしてあげて」
…なんでいきなり標準語……じゃなくて!
今のは死んだ者を復活(ついでに巨大化)させる呪文じゃないか!
「ほな、ごきげんよう」
残ってたカラスも飛び去った…。
フェニックスの炎が勢いを増す。
ああ、どうやらこいつも不死鳥のようだな。方法には納得できないけど…。
フェニックスは宙に浮いた。
本体はダランとしたままだ。
不思議な力が働いてる模様。
「!?」
炎が急速に収束。人工太陽の状態に変わった。
『我、復活!』
生まれ変わったフェニックスが翔んだ。
どうやら一羽で生きられる模様。
大きさは前と変わりない。
さすがに巨大化は無理だったようだ。
炎の色は、少しだけ黄色くなってる。
温度が若干上がったんだろうな。
おっ、能力の封印が全部解けてる。
ゴリ押しで倒せるとわかったから、一発で決めるぜ。