87.俺、羨望に嫉妬する
しかし、まずいな。
今の電気玉じゃ、フェニックスを倒せない。
最低でも今の倍の威力がほしいところだ。
『フム。電気ヲ集メタカ。撃タセルワケニハイカンナ』
フェニックスが炎を吐いてきた。
単純なブレスじゃない。
無数の火炎弾が、スプレーのように広がってくるタイプだ。
で、その火炎弾は、ほぼ俺と同サイズ。
ただの炎なら問題ないけど、七大罪能力が効いてるとヤバいかもしれない。
集めてる電気を無駄にしないためにも、ここは迎撃の一手だ。
「水竜の咆哮!」
俺の水魔法、以前に海竜と海流の誤変換でエライ目に遭ったので、呪文をアレンジしてみました。
水竜というより水龍に見える水が、フェニックスの炎を飲み込んで消し去る。
ついでに本体にも当たったけど、相手がデカすぎて効果はありませんでした…。
しかも、フェニックスはさほど高温じゃない模様。
水は蒸発しただけだった。
超高温で水素と酸素に分解してくれれば、爆発させてワンチャンあったんだけどな…。
『クックック。コレデ水モ通用シナクナッタゾ』
ああ、言われなくてもわかってるよ。
プラズマはダメ、水もダメ。
マジで電気玉に賭けるしかないかもな。
『サア、今度ハドウスル?』
フェニックスは、またもや炎を吐いてきた。
「砂嵐!」
俺は砂嵐で炎を迎撃。
攻撃は本体にも届いたけど、大したダメージは与えてない感じだ。
やっぱ、あいつデカすぎるんだよ…。
『クックック。サア、次ダ』
またまた炎を吐いたフェニックス。
仕方ない。効果は度外視で風を使おう。
「風龍乱舞!」
これは水竜の咆哮の風版。横を向いた四本の竜巻が暴れまわる魔法だ。
フェニックスへのダメージは期待してない。
風龍乱舞の効果範囲は広い。炎は全て吹き飛んだ。
ん?
一瞬だけど、フェニックスが忌々しそうに竜巻を見たぞ…。
この反応は初めてだ。
疑問に思って確かめると…、おやっ、風の力はまだ使えそうだぞ…?
じゃあ、ダメ元で、もう一発。
「風龍乱舞!」
あ、マジで使えたよ。
しかも、まだ使えるよ。
理由は不明だけど、不発にできない攻撃もある模様。
『クッ、気付カレタカ? ダガ、ソコマデダ』
「!!!?」
ゲゲゲッ!
電気玉が消された!!
シット! 今までの努力が水の泡だよ…!
しかも、電気技が使えなくなってるし…。
『クックック。バカメ。アレダケ長イ時間ガアレバ、封印ニハ十分ダ』
封印…だと…?
能力を封印するなんて、どこぞの世界の嫉妬かよ?
あ、マジでフェニックスの能力って嫉妬なんじゃね?
「なるほど。それが嫉妬の力ってわけか」
『惜シイナ。我ノ力ハ羨望ダ』
えっ?
七大罪に羨望なんてあったっけ…?