26.俺、世界の理(ことわり)にちょっと呆れる
うーん、違いと言ってもなぁ。
過程やビジュアルが影響するとは、さすがに思えない。というか、思いたくない。
もしそうなら、この世界の理は少しお遊びが過ぎるんじゃね、と言いたい。
だってさ、俺と同じ魔法を使ってる人、99.9999パーセントいないと思うんだ。つまり、俺を狙い撃ちしてるわけ。そんなの、こまっちゃうナ。
となると、使用者視点だと単体を狙ったか全体を狙ったか、発案者視点だと単体用か複数用かだな。
……。
…まさか、全体攻撃魔法…いや、複数攻撃魔法は無効…なのか?
それも、完全無効じゃなくて、本来期待される効果――たぶん、理を決めた者が想定した効果――を無効にする…?
そんな手の込んだ特性、俺の知識にはなかったぞ!?
でも、そうとしか考えられない!
そう考えれば、辻褄も合う!
消滅弾は単体用だから、普通に通じた。
勢いあまって後続を巻き込んだけど、あくまでも偶然。狙ったわけじゃないから、そのまま通った。
マーブ・エクスティンクションは複数用だから、消滅の効果は無効化された。
ただし、俺の魔法には質量を持たせた核がある。遠距離でも威力を落とさないための工夫の一つだ。
おそらくだけど、理を決めた者は、そーゆー構造の魔法を想定してなかったんだろうな。
消滅の効果がなくなっても、核が持ってる運動エネルギーは残ったまま。それが当たって、カラスは落下した。
プラズマ球は、魔力弾より遅い。だから、受ける衝撃も軽い。結果、立ち上がるのも早い。
マーブ・アタックは、そもそも傷を負わせてなかった。傷跡はなくて当然だ…。
よし!
それだけわかれば何とでもできる!
俺は単体攻撃用の大魔法をイメージする。
古の大賢者が残したとか、複数人でやっと使えるからとか、そんなことが理由の大魔法じゃない。
文字通り、そのまんまの大魔法だ。
バチバチバチ…。
オゾン臭が立ち込める。
物騒な音が広範囲に響く。
ふっふっふ。いいかね、これはあくまでも単体を狙う魔法なんだ。ただ、相手が予想を超えて素早くて、万が一、いや、億千万が一にも逃げられると困るから、効果範囲をほんのちょびっとだけ広げたんだ。当然、威力は単体用だよ。わかるね?
「消滅弾、エクスクラメーションサイズ!」
消防署の方から来ました的な思いを込め、俺は大魔法を放った。
大魔法は「お前絶対逃がさないから!」の思いに反応し、大大大大大大大大魔法ぐらいになってカラスの群れに着弾。狙い通り、先頭のカラスを消し飛ばした。
なお、近くにいて巻き込まれて消滅した不幸なカラスが相当数出た模様…。
いやー、偶然って、本当に恐ろしいですねー(棒)
いやいや、何でこれが通用するかなー? やった本人が言うのもアレだけどさ。
…この世界の理、マジでお遊びてんこ盛りじゃん…。




