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その1 くもがくれ忍者



茶柱って、立つとうれしいよね。うん。


それに関してはまったく反対しないが、これはちょっと、どうかと思う。


店を開ける前に、仕入れた急須を使ってお茶を淹れたのだが、

湯のみの中が見えなくなるぐらいびっっしりと茶柱が立っている。


茶を飲もうとするたびに口の中もまわりも茶っ葉だらけでは、飲みずらくてしょうがない。


「あははははははははっ!!ひー!くるひー・・・あははははっ!!」


みゆきは茶っ葉のひげを生やしたおれを見て大爆笑してるし・・・。


「おい、これいくらで仕入れてきたんだよ?」


「あははははははは!」


もう茶っ葉は拭いたのにまだ笑ってる。


「おーい、みゆきー?聞こえてるかー?」


「あははははははは!ひー、ひー、」


・・・完璧にツボにはまったらしい。


人の顔がそんなにおかしいか?失礼なヤツ。



みゆきが昨日仕入れてきたこの『必ず茶柱がたつ急須』、効果が抜群らしいことは実証できた。


まあ、茶柱のありがたみもくそもなくなる一品だけど。


あとはいくらで売るかだが、みゆきがこの調子では決められない。


「おぉーいぃ。みゆきさーん?生きてるー?」


「あはははははははは。」


・・・もういいさ。諦めよう。


シャッターをがらがら上げて、今日も店を開けるとしようか。

     

     *


みゆきがやっとのことでツボから抜け出してからしばらくたった午前11時。


「ねぇ、シロー。昨日仕入れた忍者の人形、どこにあるか知らない?」


客がこないので品物の整理をしていたみゆきが訊いてきた。


「忍者の人形?ああ、あの15センチくらいのやつ?」


まさに小学生が家庭科の授業で作りました、って感じの布製の忍者の人形。


「さっきの急須が入ってたダンボールにあるんじゃないのか?」


急須と一緒に仕入れたんだから。


「んー、ないんだけど・・・。」


まあ、うちの店ではよくある話だ。


「まあ、そのうち出てくんだろ。ほっとけって。」


あんなボロより店番のほうが大事だ。


「ええぇ?だってあれ3万円で仕入れたんだよ?もったいなくない?」


・・・え?さんまんえん?福沢諭吉3人分?


「・・・さがすぞ」


「え?なに?」


「今すぐに探すぞ!!諭吉×3の損失ははあまりにも多きすぎるっ!!!」


当店の裏モットーは『激安買取高価販売』!!そんなことは許されんっ


店番なんかしてる場合か!


「あ、うん。そうだね。」


捜索開始!!



<あっというまに1時間>



「シローあったー?」


「ない、ない、ないいいっ」


もうすべての棚は見てまわったし、ダンボールや箱も全部ひっくり返した。


のに、なんで出てこなぃぃぃ!?


「シロー、お昼ご飯食べようよー。」


「見つかるまで無し!」


「うええええ!?」



<さらに1時間>



「みゆき、あったか?」


「ないよもうー。」


「ちょっと、その壷をどかしてみるぞ。後ろに落ちてるかも。」


「わかった。」


大きなつぼなので、その後ろは死角になっている。


せーのっ・・・・


「うぎゅいーーーーーー!!!!」


「な、なに、いまの?」


「あ!?しまったっ!!『ひたすら叫び続けるがま口』を押さえつけてたんだった!!」


あまりにもうるさいので口が開かないように壷の下敷きにしといたのにっ。


「うぎゅいーーーーーーーーーーーーー!!!!」


「戻せー!!」



<もひとつおまけに20分後>



「この箱の中はさがしたー?」


「ん?どれ?」


って、あのみゆきが開けようとしている宝石箱は!!


「あ、開けるなー!!」


「え?・・・ぶぇっ!?」


・・・時すでに遅し。


みゆきは『小麦粉を撒き散らす宝石箱』を開けてしまった。


「・・・ほうきもってこい。」


真っ白な顔でみゆきはほうきを取りに行った・・・



<さらに10分>



「あと、探してないのは・・・。ないか。」


・・・もう全部探したぞ?


このくそ狭い店内でこれ以上探す場所はない。


猫がくわえて持って行っちゃったとか?


だとしたら見つかりっこないな・・・。


「あーあぁ・・・。諭吉が水の泡か・・・」


なんておれが落胆してると、2階からみゆきの声がした。


「シロー!!あったよー!!」


なにいっ!?


「本当か!?今行く!!」


だだだだだだだだだと階段をかけあがる。


途中足の指をぶつけたが、3万円のためならなんのそのだあ!


「どこだ!?」


「ここー。」


みゆきはキッチンにいる。


「・・・キッチン?」


「ほら。」


みゆきが差し出したのは炊飯器。


・・・たしかにあった。米にまみれた忍者の人形が炊飯器の中に入っている。


「・・・なんで炊飯器の中に・・・?


ていうかみゆき、めし食おうとしただろ!?」


「そんなことないよお。」


目が泳いでる目が泳いでる。


だいたいそれ以外に炊飯器を開ける理由があるか?


「この人形、お腹が減ってたんだね。だから炊飯器の中に。」


話そらすなよ・・・。


「これ、『餓死する忍者の人形』なんだよ。」


「・・・はい?」


「ご飯がないと餓死しちゃう珍しい忍者の人形なの。これ。」


「・・・人形が餓死するとどうなるんだ?」


ていうか、忍者なら我慢しろよ。


「どうなるんだろうね?腐るとか?」


それは、やだなぁ・・・。


「さ、燃すか。」


ライターの用意はできている。


「え?」


しゅぼっ!


「だ、だめだよシロー、3万円が・・・!」


「うるせぇ!さんざんな目に遭わされたあげくに『餓死する忍者の人形』だぁ!?


こんなもん燃やしてやるー!!」


「やめてーーー!」










終わりです。


とっても評価が欲しいです。

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