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『カオスノイズ:東京拠点化計画~拠点を東京に移し、自分を殺せる勇者の育成に励むことにしました~』  作者: 猫寿司
第7章 それって恋のはじまりじゃんよ

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第一話:ドラゴンスレイヤーの名声と機神の都アナトリア

「ムフー……!」


 ヴァレリアは、首から下げた新たなメダルを指で弾き、鼻息荒く優越感に浸っていた。

 そこには、これまでぶら下げていた「勇者の証」に加え、新たに『ドラゴンスレイヤー』の称号が刻まれた輝かしいメダルが追加されていた。


 霊山の寺院が跡形もなく消え去った後、ユウサクは意識が混濁していたヴァレリアに、ある「事実」を伝えた。

「ヴァレリアさん、あんたが暴走する魔王の手先、巨大なドラゴンを単身で屠ったんですよ。見てください、あの寺院の壊れっぷりを! 凄まじい戦いだったなぁ……」


 もちろん、そのドラゴンこそがヴァレリア自身であったという事実は、巧みに伏せられたままである。ユウサクが言葉巧みにねじ曲げた「武勇伝」は瞬く間に広まり、ヴァレリアの名声はさらに一段、天高くへと押し上げられることとなった。


ヴァレリア「さすがは私ね。まさか無意識のうちにドラゴンを仕留めてしまうなんて、自分でも恐ろしいわ!」


 すっかりその気になっているヴァレリアを、ネネは冷めた目で見つめていたが、もはや突っ込む気力も残っていないようだった。


 一行が次に向かうのは、都市国家『アナトリア』。

 そこは古の魔法と最新の機械文明が融合した、この世界でも異彩を放つ文明都市である。


 国境を越え、アナトリアの領土に足を踏み入れた途端、一行は警備に当たっていた兵士たちに呼び止められた。しかし、ヴァレリアの首に下がる『ドラゴンスレイヤー』の称号メダルを目にした瞬間、兵士たちの態度は一変した。


「……失礼いたしました、伝説のドラゴンスレイヤー様! どうか我らの王にお会いください!」


 兵士たちの恭しい案内に導かれ、一行はそのままアナトリアの王への謁見を果たすべく、巨大な歯車が回転する鉄の城郭へと足を踏み入れた。


王の自慢と、中原の影


 謁見の間に足を踏み入れると、アナトリア王は立ち上がり、一行を歓迎した。だが、その顔には隠しきれない疲労の色が滲んでいた。


王「よくぞ参られた、伝説のドラゴンスレイヤー一行よ。我が国アナトリアへようこそ。見ての通り、我が国は人間と亜種、高度な機械が手を取り合う、他国の手本とも言うべき理想郷だ。差別などという野蛮な概念はここにはない!」


 王は自慢げに胸を張って自国をアピールしたが、すぐにその表情を曇らせ、悲痛な声を漏らした。


王「だが……今、我が国は深刻な脅威に晒されている。中原ちゅうげんより、恐るべき『魔王の軍勢』が攻めてきているのだ。いくつかの村が既に消えた。なんとか、この世界を守ってほしい。次回の討伐隊に、ぜひ貴殿らにも参加してもらいたいのだ!」


 王が提示した報酬のリストは、驚くほど豪華なものだった。金貨の山、名誉ある地位、そして魔法と機械の秘宝の数々。だが、王の提案はそれだけに留まらなかった。


衝撃の政略結婚


王「さらにだ。この魔王軍を退けた暁には……勇者一行の参謀、ユウサク殿。我が娘を、姫を貴殿の嫁に差し上げようではないか!」


 ユウサクが「は?」と口を開けた瞬間、王の傍らに控えていた「姫」がゆっくりと前に出た。


ユウサク「…………」


 そこにいたのは、トロール族の女王であった。

 二メートルを優に超える巨躯、岩のような肌、そして顔の下半分を占める巨大な牙。一言で言えば、「巨大な人型のイノシシ」である。彼女は独特の美的センスによる派手な装飾品をジャラジャラと鳴らし、ユウサクを品定めするように見下ろしている。


ネネ「……プッ、クククク! いいじゃないユウサク、ここらで手をうって結婚しちゃいなよ」


 ゲヒた笑みを浮かべるネネ。アナトリアの「差別なき理想」の裏で、ユウサクの人生最大の危機が幕を開けた。


地獄の晩餐会


 滞在する間、一行には城内の一室の使用が認められた。だが、その日の晩に催された歓迎の宴会は、ユウサクにとって筆舌に尽くしがたい地獄となった。


 トロール族の王一家による食事風景は、文明人であるユウサクには目眩をもよおすほどに下品だった。

 皿も使わず、巨大な獣の肉を素手で掴み、牙で無造作に食いちぎる。口の中に食物が大量に残っているにもかかわらず大声で喋り散らし、咀嚼された肉片がテーブル中に飛び散る。さらに、大音量のげっぷや放屁が当然の作法のように繰り返され、「ガハハハ!」という豪快な笑い声さえ、今のユウサクには吐き気を誘うノイズでしかなかった。


 さらに最悪なのは、隣に陣取ったトロール王女のアプローチだった。

 彼女は脂ぎった手で、あろうことかユウサクの股間を布越しに執拗にさすり上げたかと思えば、太い指でぐいと肉を掴み、つまみ上げる。


ユウサク「……ひっ……」


 逃げようにも、トロールの怪力に押さえ込まれて身動きが取れない。

 食欲を削ぐ悪臭、卑猥な身体接触、そして野蛮な笑い声。五感の全てを蹂躙される圧倒的な不快感。


 そこへ、トロール王女の肉厚な唇が迫り――「ぶっちゅーーーっ!!」と、濃厚かつ暴力的な口づけがユウサクを見舞った。


 ユウサクの口腔内は、即座に蹂躙された。姫の巨大な舌、大量の唾液、そして彼女がさっきまで貪り食っていた食事のカスと生臭い肉汁が、ユウサクの口の中へと強引に流れ込む。拒絶する間もなく、異物と不潔な体液の濁流に溺れ、ユウサクは「うっ、うっ……」と言葉にならない悲鳴を上げながら悶えた。


 やがて、満足したのかトロール王女は、ゴミでも捨てるかのようにユウサクを放り投げた。

 涙を流し、嘔吐をこらえながら床に崩れ落ちるユウサク。しかし、王女はもはや彼に目もくれず、再びテーブルの上の肉塊に夢中になり、骨を砕く音を立てて食事を再開していた。


ユウサク「……無理だ。絶対に無理だ……」


 石の床に這いつくばり、虚空を見つめ、絶望の声で呟くユウサク。

 ドラゴンスレイヤー一行の参謀は、魔王軍と戦う前に、その精神を完全に破壊されようとしていた。


(第十三章 第一話 終了)

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