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翌日の早朝、私達は一駅分を歩いて始発駅へと向かった。始発とは言え平日なだけあってそれなりの通勤客の数だ。始発電車がホームに滑り込んで来るも鈴木達は姿を現さない。始発電車は定刻までの少しの時間はドアを開いて停車を続けるからまだ余裕はあるが嫌な予感が頭をよぎる。
「やっぱり来ないかなあ」
やってしまったという感じで頭を掻きながら小野が言う。
「俺電話してみます」
「小野さん、始発じゃなきゃ絶対ダメなんですか?」
「いや、そんな事はないけど。同僚を早く帰してやりたいし」
間も無く電車の発車時刻だがスマホを耳に当てた雄真の口が開く事もない。これはやはり別れ難くなって逃げたのかもしれないと思った時、エレベーターの方から親子連れが駆け寄って来た。
「すみません!遅くなりました!」
「晴翔がなかなか起きてくれなくて」
「まだ眠いー!!」
ぐずる晴翔君を川村が「はいはい」と体を揺すって宥める。本当に普通の親子にしか見えない。雄真も彼らの姿を確認してスマホをしまった。
「とにかく乗りましょう。もう出ますから」
「私達も乗って良いんでしょうか?」
「大丈夫ですよ、多分すぐ眠くなると思いますが。晴翔君に伝える事があれば今のうちに済ませておいた方が良い。もし意識が保たれても決して知ってる駅以外で下車しない事」
小野が手早く注意事項を伝えると戸惑いながらも鈴木達は晴翔君に話しかけながら電車に乗り込んだ。私達も後に続くと丁度よく通路を挟んで対面で三人づつ座れるスペースが空いていたためそこに座る。それと同時にホームと車内に発車を告げるアナウンスが響いた。
電車のドアが閉まるとゆっくりと電車は走り出す。次の駅まではカップラーメンが出来上がる程度の時間で本来は着く。そんな距離で寝入る事はなかなか無いのだが不思議と身動きをする人はどんどん減っていく。目の前の鈴木と川村も気づけば目を閉じ首を垂れていてその間で晴翔君が不思議そうにキョロキョロとしている。
「皆んな、寝てる?」
「ああ、見事に」
「君達ならもしかしてと思ったけど流石だね。意識を保てちゃうなんて」
車内の照明が少し落ちると窓の向こうには知らない外の風景が流れ出す。朝のこの時間にしては夕闇の風景のようだ。
「これ地下鉄だよな?」
「地上に出る区間もあるけどもっと先のはずよ」
「もう異世界に入ったんだよ。ようこそ、異世界へ、なんてね。どう?いつも迎える側だけど、自分が転移者になる気分は」
気分と言われても、異世界を感じるのは窓の向こうだけで車内は見慣れた空間だ。
「あまり実感はないっすね」
「外は変でも居るのは見慣れたいつもの車内だものね」
もう次の駅をとっくに過ぎていても良い頃だが電車が止まる気配はない。窓の向こうを流れゆく景色は長閑な田園風景であったり、見た事もない近未来的な高層ビル群だったりと目まぐるしく変わっていく。それも自然と繋がり続ける風景というよりは突然違う場所に突入するように異なった風景が現れ続ける。まるで昔の映画でフイルムの繋ぎを間違えてチグハグな場面が映し出されるような不自然さ。
パッと窓の外が暗くなる。窓がモニターのように思えていたから映像が消えた時のような感覚を覚える。しかしすぐにトンネルに入ったのだと脳が認識すると電車が速度を落として停車した。




