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滝見台まで着くと日頃の運動不足が祟ってもう足がパンパンだった。険しい山道を歩く訳ではないが高低差の大きい階段にはなかなか体力を奪われた。恋に悩めるご令嬢のシルヴィアが来れた事で私はすっかり油断していた。
「情けないやつ」
「うるさいわね!」
私が息を切らせているものだから雄真が笑ってくる。
「いやあ、こっちの世界でも流石の眺めだね」
滝見台の中央に立ち小野が感嘆の声を発する。紅葉のピークを過ぎた頃ではあるが所々に色づいた木々は残っていて滝の魅力を際立たせてくれていた。
「本当、良い眺め」
「シルヴィア達も圧倒されてたな」
紅葉シーズンも落ち着いた平日だけあって観光客は少なく、今は運良く景色を独占出来て贅沢な気分を私達は堪能した。
「小野さん達は滝壺まで行ったんですか?」
「いや、一人体力のないのがいたからやめといたよ」
「俺らも体力のない千歳に付き合って今日はここまでだな」
いつまで人の体力の無さを揶揄うつもりなのか。雄真はシルヴィア達と来る前、夏にユエと二人でこの地を訪れている。神様としての力を弱らせたユエの回復を図るため、ユエの好む水の気を浴びに来たのだ。より近くで水の気を取り込ませてやろうと滝壺まで降りたらしいのだが、サンダルで子供の姿のユエを肩車していたとはいえその道のりは大変だったと雄真だってぼやいていたくせに。
「行きたいなら行ってきたら?私は甘酒でも飲んで待ってるから」
「あ、じゃあ僕も甘酒班でー。と言うことで雄真君、いってらっしゃーい」
「いやいや、それなら俺も甘酒で」
「あら、遠慮しなくていいのよ?」
「うるせー」
そんなやりとりを楽しんでいると少し人も増えてきた。私達は場所を譲って車まで引き返し次の目的地へと向かうことにした。
目的地近くの施設に車を停めて歩いてすぐ、到着したのは有名な覗き橋だ。道ゆく観光客は必ず下を覗き込みスマホを構えて去っていく。
「おお、やっぱりちゃんとハートの形だ」
「シルヴィアもユエもハートが何か分からないもんだから覗き込んでも川がどうしたって感じだったな」
「絵文字なんて異世界には無いでしょうから無理もないわね」
そこで雄真はスマホでハートマークを表示して、それがどういう意味なのかを説明してやったと言う。その意味を理解してやっと自然が生み出した奇跡にシルヴィア達も感動出来たらしい。
「本当、偶然出来上がった形がハートなんてロマンチックだよねー」
「長い時の流れの中ではハートに見えるのなんてほんの一瞬の事なのよね」
「たまたまそんな時代に生きてるって、やっぱ奇跡なんだよな」
このハート岩に限らず、木の枝ぶりが龍に見えるとか全国にも自然が作る不思議な物はよく話題になる。人によってはそれがどうしたと思うかもしれないがそう見える目があるのだから楽しめば良いと私は思う。そう見える瞬間に生きている事を特別な事だと思えるのは素敵な事だと思うのだ。




